1
/
5

8年で5つのスタートアップを経験したエンジニアがもうスタートアップをやらない理由

このノートは昨年、お世話になった方のために近況報告としてまとめました。

株式の取り扱いなど含めて整理できてなかったので、各方面にご挨拶できておらず申し訳ございませんでした。詳しい理由については個別に連絡させて頂きます。

Thank you Startup, And Good By.

2016年2月に1年間取り組んでいた、スタートアップを辞めました。

そして、このスタートアップを最後に自分がスタートアップをすることはもうないと思います。

代わりに、スタートアップとは呼べない地味な事業を始めます。発達障害の人にプログラミングを教えるという地味で大変で面倒な事業です。IPOもEXITも目指しません。

http://camp-fire.jp/projects/view/5...

この決意に至るまでの道筋を整理する上で、 今までの人生の中で関わったスタートアップとそこで学んだことを整理し、 そして何故、新しい取り組みを始めたのかをノートにまとめました。

これからスタートアップに参加する人、始める人、続けている人、そして辞めようとしている人の参考になればと思い、公開します。

スタートアップは様々な定義がありますが、ここでいうのは優れたハッカーであり起業家であるポール・グラハム氏が定義している「スタートアップとは早く成長することを意図して作られた会社」を前提にします。

始めに

私は13歳からプログラミングに触れ、15歳からエンジニアとして働き始めました。

中学生の頃は忍者ツールズやFC2でサイトを作ってJavascriptでエフェクトをつけて遊んだりCGIで掲示板を作ったりしていました。

中学を卒業した後には大検を取得し、高校に行かずに国内、海外をバックパッカーで回っていました。

引っ越し、製造業、大工、ホテルのウェイターなどのバイトを複数しながら空いた時間でECサイト管理システムや、価格.comのクローラー、FXの自動売買システムなどを作ってお金を稼ぎ、それで海外に行っていました。

しかしある程度、経験を積んだところでエンジニアという仕事がとても楽しいと感じ、これで食べて行けるスキルを身に付けたいと思い、たまたま見かけた当時流行っていたウェブサービスで「PHP&MySQLができるエンジニア募集」というバナーに応募したのが、Q&Aなうの安宅さんとの出会いでした。17歳の時です(ちなみに連絡したその当日に新宿のルミネで会って話して、ジョインしました)

The First Startup : Q&Aなう→EXIT

これは新しいデザイン。WEB2.0が流行ってました

三人目のメンバーとしてフロントエンド、バックエンドの開発サポートを行っていました。

Q&AなうはTwitterと連携したリアルタイムQ&Aサービスを日本で最も早く取り組んだサービスです。通常のQ&Aでは質問してから返答まで1日以上かかるのが普通ですが、Q&Aなうでは平均回答時間1分程度という今までの常識ではありえない速度で回答がつくというサービスでした。

Q&Aなうではサービスが数千人から数万人に広がり、 そしてユーザーがユーザーをつなげて広がってゆき、 「コミュニティ」が生まれる流れを体験することができました。

最終的にQ&AなうはOKWave社に買収され、 そのタイミングで自分は抜ける形になりました。

ここで学んだことは、

・プロダクトは決して完璧でなくても良いこと
・熱狂的なファンを作れることが大事
・コミュニケーション能力は非常に大事
・代表がこだわりや情熱を持っていることはとても大事

ということでした。

The Second : TokyoOtakuMode→シリーズB後離脱

TokyoOtakuModeには安宅さんに誘ってもらいジョインしました。

2年ぐらい前

TokyoOtakuModeの初期メンバーがサイゼリヤで集まっていた時代に、エンジニア担当がいなかったので、手伝って欲しいということで参加しました。

(ちなみにFacebookの”TokyoOtakuMode”のユーザーネームを取得したのは自分です。今となっては良い思い出。

TokyoOtakuModeでは数千万というユーザーの規模、そしてそれをどのようにハンドリングして行くか、さらに組織が数名から数百名に広がるまでの運用を体験することができました。

ここで学んだことは、

・スタートアップに年齢は関係ない
・やはり経験が豊富な人たちのほうが信頼感、安心感がある
・英語ができなくても、海外99%のサービスはできる(できない理由は無い
・実績があれば海外でも評価される
・多くの人が共感してくれることをやっていれば仲間が自然と集まってくる
・NodeJSは面白い(NodeJS好きな人は是非Otakumodeに

ということでした。

The Third :マツコ→MVP検証後解散

オハコ社のメンバ

TokyoOtakuModeに2年間、大学に2年間行った後に自分でも何かサービスを作ってみたい。スタートアップをやってみたいと思うようになり。同年代のメンバーに声をかけて「マツコ」というECサイト向けのチャットサポートアプリを作ることにしました。なうで流行語大賞を受賞した「うめけん」、デザイン、プレゼンと企画設計、そして炎上が得意な「みねい」、UI/UXの天才「けいまくん」、そしてイケてるデザインカンパニーの社長「きくっち」というメンバーで歌舞伎町のライオンズマンションでラブホテルが良く見えるマンションで半年間開発に取り組んでいました。

自分起案のアイディアだったのですが、 いろいろなメンバーに声をかけているうちに、 それぞれ役割分担したほうがいいだろうということになり、 代表が「うめけん」、副社長「みねい」技術責任「かわさき」というようなメンバー構成で、毎週毎日、歌舞伎町の9畳しかない部屋の薄暗い闇の中で3段ベットを後ろにスクラムを回していました。

最初に回している頃は同じ方向を向いていて、議論も楽しかったのですがプロダクトをどのようにリリースするか、何を機能として入れるか、どこに入れるかなどのタイミングで意見がまとまらず、また役割もコロコロと変わって意見がまとまらず、険悪なムードになったりもしました。 結果、体制を5回変えて、プロダクトを5回作り直すことになり、 半年間ユーザーをつけることができず、そして最終的にMVPをリリースした後にキャッシュアウトし、解散することになりました

ここで学んだことは

・誰がハンドリングするか?という責任と権利は明確にするべき
・キャシュイズイング
・住環境は大事
・しかし環境を整えれば上手くいく訳ではない。
・メンバーを過信しすぎない(勝手な期待は抱かない
・誰が何をできるか?は進めていかないとわからない
・歌舞伎町は昼は静かで、夜はうるさい
・プロダクトをローンチしてからスタートしたほうが良い
・追い詰めすぎると腹を壊す。
・ビジネスに関係がないことをすると、本業に結構影響が出る
・方法論にこだわっても、意味がない
・売上第一 ということでした。

The Fourth:ミチシルベ→シード資金調達後解散

きみとぼくらのミチシルベ

ミチシルベは嶺井くんに誘われ、金田くんのビジネスを手伝う形でコミットしました。

ハンドリングをすることには疲れていたので、自分のやりたいことをやるというより、 エンジニアとして彼の夢を叶えることを手助けする形でコミットしていました。

最初はサブプロダクトを開発していたのですが、メインプロダクトを開発していた人がいなくなってしまい、急遽自分が担当で開発を進めることになりCTOとして開発兼マネージメントをすることになりました。

ミチシルベのことの顛末は、 彼自身が書いた記事に詳しいので是非こちらをご覧ください。

http://tobira.socialstudy.biz/busin...

ミチシルベはかなり理想的なメンバーかつ条件が整っていた、スタートアップだと感じています。一人一人の能力は非常に高く、明確なゴールそして、プロセスもあり、程よく大人も参加して、ユーモアに溢れる環境でした。さらにシードにもかかわらず5000万もの投資も入り全てが整っていた状況でした。

プロダクトも非常に上手くワークしローンチ3ヶ月で数千人の登録ユーザー、数十万のアクセス数、高いMAU、数十万の売上を出していました。

初期の状態では少なからずスタートアップとしては順調だったとは思うのですが、 やはり急激に成長をすることを前提に組織を急激に広めてしまったため、マネージメントが急激に難しくなり、自らの自重で崩壊する形になってしましました。

これは金田くんだけではなく、 自分を含めた他のメンバーの力不足、そして覚悟が足りなったのだと反省しています。

なまじ一人一人が十分に食べて行けるスキルを持ってしまっていたため、 このスタートアップを「やり遂げなければならない」という点まで自身を追い込めなかったという覚悟が足りなかったのだと思っています。

ここで学んだことは

・困難があった時に諦めないことは大事
・困難がなくても諦めないことが大事
・すなわち、やるからには最後までやる
・拡大するのは足場が整ってから
・良いメンバーであれば、良い結果は生まれる
・やはり経験があったほうがいざというときの安心感は強い
・スタートアップをする理由は明確にしていないと「言い訳」をできてしまう

ということです。

The Fifth:アマテラス→シード資金調達迄

ミチシルベから離脱した後、もともと片手間で進めていた発達障害の支援を本格的にしたいと思っていたのですが、松田光秀(松田は発達障害の診断を持ってはいません)と偶然出会い、彼のスタートアップをフォローすることにしました

彼は明確なビジョン、そして困難があっても絶対に諦めない胆力を持っていたので、COOという立ち位置で開発以外の全てをサポートしていました。それを実現するHowを考え、それをひたすらDoして行っていました。

しかし、1年経った段階でビジネス的な方向性の違い、そして自分自身がHowを考えることによって彼の方向性そのものを変えてしまうことに気づき、離脱することにしました。

また、一つお互いにお互いを尊敬ができなくなってしまったということがあります。 個人的な問題になるためオープンにはしませんが、やはりそれぞれの目的と信念が違う場合にはうまくいかないのだと感じました。

・他人の夢を他人は踏み込めない
・お互いに尊敬できなければ、ダメである
・自分の夢は自分しか叶えられない

もうスタートアップをやらない理由

これらのことから学んだことは、多くありますが、 少なからず成功するスタートアップは「代表となる人が強い理念を持って、取り組み続け、責任を果たし、それをクレバーにできている」と感じています。

同時にスタートアップをやるからには「成功するか、失敗するまで、全力でやり続けなければいけない、成長し続けなければいけない」という強い決意が必要だと考えています。

それは終わりなき、マラソンを走り出すようなものです。

また、投資を入れてしまうとただ成長するだけではなく、 資本家のことを常に意識しなければならなくなります。

すると自身が最初に持っていたプロダクトやサービスによるイノベーションや純粋な気持ちではなく、目先の資本を追ってしまうことが多々あります。

これらに意識を向けて、取り組み続けることに自分は、 もう強いモチベーションを保てなくなってしまいました。

やはりスタートアップはとても疲れるし、大変なのです。 その次に、強いモチベーションと決意がなければ成功しません。 私は、資本を目的にしたビジネスに、そのモチベーションを持つことができません。

それでもスタートアップが最も楽しい点は、 自分で仕組みを「創って行ける」ことだと思います。

他の多くのビジネスは既存の仕組みに乗っかっているだけで、 その仕組みに上手く乗れる人が勝つのが一般的です。

スタートアップではその仕組みを1から創り、 そして既存の仕組み、社会を変えてゆきます。

そこはエンジニアリングと全く一緒だと、考えています。 今あるシステムを変えて行くのはとても難しいです。

運用中のサービスを止めることはできません。 既存のユーザーへのフォローも必要です。 しかしより良い体験、より良いサービスを作れば、 新しいユーザーは自然と良いもの、新しいものに乗り替わって行きます。

それを本当の意味で1から学び、そして形にできるのはスタートアップな取り組みだけだと私は考えています。

今、やろうとしていること

スタートアップのような急激な成長を求め、 資本を増やすような取り組みをすることはやめました。

自分は今、一番やりたいことは50年以上かけて取り組まないと「発達障害の人が活躍できる社会を創ること」であり、これを使命であり役割であると信じています。

これは突然、思いついたものではなくスタートアップに関わりながら大学、医療法人、そしてスタートアップの片手間に立ち上げ、取り組んできたことです。

あくまでもライフワークとして考えていたので、これを本気で取り組むのしばらく先だと考えていました。

それこそ、スタートアップにがむしゃらに取り組めるのは若いうちだけなので、 そのチャンスがあるうちに取り組まないといけないと強く思っていました。

しかし、ほんとうにやりたいことは何か、そして何に全力で取り組めるかを考えた時に、 今この「発達障害の人が活躍できる社会を創ること」以外には思いつきません。

しかし、この問題は非常に根深く難しい問題です。

差別的な意識、社会的な認識、仕組み、制度全てが改善しなければ、 この「発達障害の人が活躍できる社会を創ること」はできません。

私はスタートアップをやってきたことによって、 私がこの問題を解決できると、自分自身に確信を持って取り組むことができます。

私は社会を「変える」ことは不可能だと思い、 新しい社会を「創る」ことでこの問題に対処してゆきます。

新しいぶどう酒は新しい皮袋に。 新しいアプリケーションは古いOSには入りません。

今まで1年2年3年と急激な成長のために取り組み続けていましたが、 これからは腰を据えて10年20年30年という長期的な目標に、 自分自身が責任を持って取り組んで行きたいと考えています。

ということで、新しい取り組みとして施設を作ります

新しい取り組みをクラウドファウンディングという形で始めることにしました、 今まであんまり表に出ることは苦手だったのですが、これからはガンガン出ていきたいと思っております。もし、新しい取り組みについてはリンク先に詳しく書いていますので、もしよかったらご支援ください!

発達障害者支援、雇用に興味のある企業の担当者の方を探しております!

施設のイメージ

http://camp-fire.jp/projects/view/5...

近況報告:2016/5/27

クラウドファウンディング、 皆様のご支援のおかげで無事、達成することができました!

近況報告:2016/8/22

生徒の本格的な募集が始まりました!

gifted.academy

Gftd Works株式会社では一緒に働く仲間を募集しています
1 いいね!
1 いいね!
同じタグの記事
今週のランキング