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イメージソースが考える、領域横断的デザイナーのキャリアパス

クリエイティブに強みをもつデザイナーは、どうキャリアを積むべきか。

扱う技術や領域、社会がめまぐるしく変化する中、その道筋は一筋縄では語れない。何をインプットしアウトプットすべきか、どこまで手を動かし学ぶべきか、変数や要因は膨大に存在する。

1998年の創業の株式会社イメージソースは、“クリエイティブを実験する場”を提供することで、その道の一つを示してきた。

2006年から参画し、現在はアートディレクターを務める藤牧篤氏は、Webとインスタレーションを横断した同社のクリエイティブを牽引。個人でも、ミュージックレーベルのアートディレクションやデザインを手がけるなど活動の幅を広げてきた。そんな同氏に、現代のクリエイターが向き合うべき変化と、スキルセットを伺った。

デザイナーのキャリアに影響する、外的要因

──藤牧さんは、イメージソース内外で、クリエイターとして活動の幅を広げられています。キャリアを積む中では、どのようなことを考えここまで歩まれてきたのでしょうか。

キャリアや成長には大きく3つの要因があると思っています。それが、会社的要因、個人的要因、外的要因です。

会社的要因は、所属する組織のビジョンや方針、得意領域などですね。個人的要因は、それぞれが目指したいキャリアや身につけたい技術といった意思の部分。考え方はそれぞれですが、不得意領域を無理してなんとかするよりも、得意とする領域を突き詰めるべきと考え、個々の持ち味を大事にしています。

外的要因は、社会の流れや変化。例えばFlashがなくなったり、デバイスがPCからスマホへ移ったり、フラットデザインがトレンドになるといった時代ごとの変化です。

──この3つの要素の中で、特に藤牧さんが重視されているものはありますか?

外的要因でしょうか。会社や個人は、環境を変えたり、自分で考えたりする中で見えてくるものがあると思っています。ですから、一定は自分の努力や行動で解決可能な要素でもある。しかし、「外的要因」は、自分ではコントロールができない分、常に意識して動きを見るようにはしています。会社や個人の存在意義も、最終的には社会に向けた貢献がどんどん重要になっていますし。




──例えば、最近注目されている動きや変化はありますか?

システマチックにデザインを捉えていくことでしょうか。

例えば、WebのUIは最適解が一定のパターンが見えてきていることもあって、均一化が進んでいます。ある企業と別の企業のサイトを比べてみると、ヘッダーやフッターはほぼ同じ。違うのはロゴと色のみなんてこともある。最近では、デザインをAIが自動でやるサービスも出てきており、いくつかの仮説を持ちながらその時必要なスキルやその集合体としてのチームを考えています。

──たしかに、デザインシステム等のトレンドもあって、汎用的に展開できるデザインが増えているのも影響していそうです。

SaaSをはじめウェブサービスに関わらせていただく機会も増えてるのですが、そこでのUI/UXがブランディングにも深く関わっていたりします。Uberのリブランディングが、興味深い事例のひとつでした。

ブランドは一つの考え方にもとづいてデザインされています。Uberの場合「U」という頭文字を元に、グラフィックやモーションなど、あらゆるビジュアルやフレーム、スキームを構築している。このブランドアイデンティティは全世界でオンラインでもオフラインでも対応できるよう、展開の仕方もシステマティックに計算されています。

ビジュアルのデザインはその中の一部であり、今まで見てきた事例の中でも、全体の仕組みが鮮やかにデザインされているような印象を受けました。プロダクトとも綿密に繋がり、機能するものになっています。

──シンプルなビジュアルの美しさだけでなく、その展開を含めた「仕組み」に価値がシフトしてきていると。

これまでデザイナーが手を動かして作業していたパートは、今後さらにツールでなどで効率化されていきます。そのとき、デザイナーは、表現力が必要とされる「コンテンツ」そのものや、それをどう有機的に機能させるかの「設計」へ注力しなければいけないと考えています。

ここ数年は、ブランディングフェーズやプロモーションフェーズだけでなく、プロダクトやサービスそのもののフェーズへ直接的に関わる機会がどんどん増えています。それによって、イメージソースのデザイナーが立ち回る領域も変化していくため、デザイナーのキャリアにも影響が出てくるかもしれません。

4つのデザイン領域と、性質の異なるプロジェクトに対応するスキル

──イメージソースでは、どのようなキャリアを提供されているのでしょうか。

その説明には、私たちがどうデザインというスキルを捉えているかをご説明させてください。イメージソースではデザインを、「プランニング」「UX」「アートディレクション」「コンテンツ」の四つに分けて理解しています。




──これは、イメージソースが担うデザイン領域の整理でもあるのでしょうか?

そうですね。強いところや弱いところはありますが、チームとしてはこの領域をカバーできることを目指しています。イメージソースで行うほとんどのプロジェクトで、この全領域を多かれ少なかれ駆使する必要があるからです。そして、これらをどう横断するかで、柔軟なキャリアを形成していけると考えています。

図の中心部にある番号に沿って行くと、以下の通りです。

1は、企画をしつつ自らも手を動かしてコンテンツのイメージまで作る人。形になるので、提案に説得力があります。テクニカルに長けているイメージです。

2は、企画設計〜アートディレクションをほぼ一人で担えるような人で、少人数でも大規模サービスの設計やクリエイティブディレクションを担うようなイメージです。

3は、アートディレクターを名乗りつつ、自身もアーティストとして作品を作っているような人。ビジュアルコミュニケーションを得意とするイメージです。

4は、自らのクリエイティブを武器に、世界観やコンテンツを作り上げる映像作家やグラフィックアーティストのような人。作家のようなイメージです。

5は、フルスタック型で、すべての要素を網羅する人。

──この型は、どのような背景から生まれたのでしょうか。

業界の著名人や活躍されてるチームを分析する中から共通項を見つけたり、デザインを取り巻く時代や環境の変化をうけて必要なキャリア像を考えたりする中で、整理したものです。ただ、この整理も外的要因の影響を受けるので、時代によって更新されていく。あくまで現時点での整理という認識です。




そこに、イメージソースが関わるプロジェクトの性質や参加するフェーズを重ね合わせると、プロダクトフェーズでは設計、ブランディングフェーズではアートディレクション、プロモーションフェーズではコンテンツ、といった中心となるスキルが必要になってくると考えています。




成長角度を上げるための“スループット”

──現在の業界の流れや活躍するデザイナーを踏まえた上での区分なんですね。ただ、スキル的には複数領域の横断が求められています。なぜスキルの横断が必要なのでしょうか?

イメージソースが企画や案件全体のデザインを担うようになってきたからです。昔はWebのデザインやインスタレーションの演出の全体もしくは一部を担うことが多かったのですが、当社を含めデザインに期待される役割は着実に広がっていると感じています。

例えば2018年におこなった、都市空間で楽しむデジタルサーフィン「BIT WAVE SURFIN’」では、自社発信ということもあり、アトラクションとして成立させるための体験設計、そこに必要な映像表現や時間軸で変化するコンテンツの演出、参加を促進させるためのビジュアルなどのプロモーションツール制作、現場でオペレーションで使うアパレルなどのツール制作など。企画からプロモーションまで、広い領域を一貫してデザインしました。

クライアントワークでも、プロダクトやサービスをデザインする案件やブランド全体をデザインする案件も増えてきています。広い視点を持つことにより、クライアントに貢献できる機会を増やしていけるでしょう。

もともとイメージソースは「体験全体のデザイン」をしたいという意思があり、平面から立体、見えるものから見えないものまで、体験にまつわるものはすべてに渡ってデザインしたいと考えています。設立からの歩みを統合的に捉えることで、そのような得意領域が浮かび上がってくるのかなと思いますね。




──ただ、一つひとつを深めるのでも大変なのに、横断的にスキルを身につけるのは容易ではないと思います。どのように習得していかれているのでしょうか。

当然一人で全てをカバーしきれません。社内外含めチームで作ることを前提としています。個々の連携や得意領域の向上のために、インプットとアウトプットは当然行いますし、さらにその間に「スループット」という考え方を設けています。

領域横断的に動けるようになるには、インプットはもちろん、手に入れた情報を元に、手を動かし「実験する機会」が必要になる。小さなアウトプットを繰り返し、そこでスキルを醸成する。これを、スループットと呼んでおり、R&Dの文化や志向にも通じる考え方だと思っています。

R&Dの中でおこなうこともありますし、業務やプロジェクトの中で機会を作る場合もありますね。代表の小池も話していたように、イメージソースではこうした実験の機会を重視する意識が、会社全体に根付いています。

現代に求められる、軸足を持ちつつ柔軟に動く姿勢

──具体的には、どのように複数スキルを獲得するとよいのでしょうか。

例えば、1年目はグラフィックやUI、2年目はモーションや体験設計、3年目はプロダクトなどと、1年単位で注力領域を変化させながら、スキルを積むのはひとつの方法だと思います。同じことをずっとやり続けることを否定しない上で、キャリアパスや数年後の成長を見据えて、複数の領域に取り組むことも大切です。

変化の早い時代なので、必要とされる技術も変われば求められる習熟度も変わる。そういった変化に応じて、学びながら柔軟にキャリアの軸足を変えられることが、大切だと考えています。

──この考え方は、藤牧さん自身の経験からも、いえることなのでしょうか。

そうですね。時代の流れに寄り添う考え方は、経験則として強く感じている部分です。だからこそ、私は複数の軸足を意識してきました。

左右される要因が多い時代ですから、正直5年先、10年先にデザイナーがどのような環境に置かれているかは語りにくいと思っています。「こんな時代になるだろう」という見通しを立てた上で、柔軟に対応できる人材を目指すことが重要だと考えています。



UI/UXデザイナー
Webだけじゃない!多様な案件で自分の領域を広げたいデザイナー募集!
イメージソースは、社会が大きく変化するなかで常に最適なユーザー体験を追究するとともに、R&D機能も備え、デジタル領域での新たな表現を自ら開発し発信してきました。Webサイトやアプリ、デバイスの他、インスタレーションを強みとして、デザインと最新のテクノロジーを駆使した、最適なデジタルコミュニケーションを企画・制作しています。 <案件紹介> ■METoA GINZA 「IRO×IRO STADIUM」 東急プラザ銀座内METoA Ginzaの64面液晶マルチディスプレイを使用した4種の未体験スポーツコンテンツ「Special Contents 《IRO×IRO STADIUM》」を制作しました。 巨大なディスプレイにひろがるデジタルスタジアムで「アーチェリー」「卓球」「ブラインドサッカー」「バレー」をモチーフにした4種のスポーツが体験できます。 パラスポーツから着想を得たオリジナルの競技で、体験者の体の動きをセンシングし、視野に広がる没入感のあるインタラクションによって、これまでにないスポーツ体験を実現しました。 https://www.imgsrc.co.jp/work/iroirostadium/ ■Maison KOSÉ「NEW ME COLLECTION」 様々なポーズと表情で撮影された自分の動画に50種類のメイクが即時自動生成され、店内にある全長12mの大型ディスプレイに投影されます。 ユーザー自身のスマートフォンにも50種類のメイクを閲覧できるあなただけのパーソナルサイトが届き、オリジナルムービーと、50種類のメイクに紐づく400個近い商品サイトを参照することもでき、店舗のバーチャルメイク体験とECサイトをつなげる施策となっています。 https://www.imgsrc.co.jp/work/maisonkose-newmecollection/ ■CITIZENグローバル・キャンペーンサイト「Save the BEYOND/CONNECTING 8 OCEANS」 コンセプト設計、コンテンツ企画、デザインビジュアル制作、全8ヶ国語に及ぶサイト内情報設計からフロントエンド実装まで、クリエイティブワーク全般を担当。 https://www.imgsrc.co.jp/work/citizen-promastersavethebeyond/
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