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笑顔の未来へ。新卒採用担当が目指す、企業と学生の幸福なマッチングとは

インフォバーンで働く社員へのインタビュー企画。今回は事業部門の方ではなく、コーポレートコミュニケーション部門で新卒採用を担当されている松永隆志さんです。

もともと音楽ウェブメディアの編集者やインフォバーンのコンテンツディレクターとしてお仕事をされてきた松永さんは、自らHRの仕事に活躍の場を移しました。

会社にとって重要な「採用」において、その顔となる採用担当者は、会社にとっても、就活生や求職者にとっても、「人柄の良い人間」であってほしいもの。「人と人との関係性に興味がある」「人が喜ぶ顔を見るのが好き」と語る松永さんは、まさに適任の人物です。

「人見知りしないから向いていた」という新卒で働いた百貨店でのお話から、大学に通って学ばれているコーチングや心理学について、仕事で接する学生・就活生に対する熱い想いまで、同じコーポレートコミュニケーション部門に所属する木下がお話をうかがいました。

百貨店の「アンブレラマスター」から編集者に

――松永さんは新卒のときには百貨店で働いていたそうですが、珍しい経歴ですよね。

そうですね。僕は生まれも育ちも福岡で、大学も九州だったんです。それで働くにしても九州がいいな、地元にいたいなって思っていたんです。これは地方あるあるだと思うんですけど、東京に行きたい人と、地元から離れたくない人とに分かれて、僕は後者だったんですよ。

ちょうど僕が就活するときに博多阪急という百貨店ができるタイミングで、それを友達から聞いたので、「福岡で働けるのでは!?」と思って入りました。百貨店の仕事は面白かったですよ。僕は人見知りをしないタイプなので、けっこう向いていたと思いますね。

――人見知りしていると、確かに百貨店の仕事はしんどそうですね。

わかりやすい話でいくと、まずは接客ですよね。お客様に商品をご提案するときに、「初めて話す人だ……無理ぽ……」って感じだと難しい。接客って知らない人に声をかけ続ける作業なので。

それと、僕は2年目から主に婦人雑貨の催事企画運営をやってたんですけど、「一週間でこれだけの売上をあげてね」と予算が降りてきて、そこからあとはすべて任されるんです。まず予算を達成するための企画を立てる。そこからメーカーに商品を発注したり、図面を引いて什器屋さんに什器を発注したり、売り場の販売員さんたちに接客方法について依頼したりします。ほかにも、社内外のメンバー、たくさんの関係者の方とやりとりをしなくちゃいけなかったんです。そこでも人見知りをしないことが役に立ったなと思っています。

――なるほど。松永さんは、百貨店時代に何やら傘の資格を取られたとか?

「アンブレラマスター」をご存じですか?(笑)。最初に婦人服飾・雑貨というところに配属されて、「松永さんは、雨傘担当だよ」って言われたんです。僕はそれまでビニール傘で雨を凌いできた人生だったので、「このままじゃヤバイ…」と焦りまして。それで調べてみたら、日本洋傘振興協会という協会が資格を出していたので、これを取れば雨傘のことを少しは理解できるんじゃないかと思ったんです。それが「アンブレラマスター」ですね。

――会社から命じられたわけでもないのに、すごい向学心ですね。

そういえば福岡から新宿まで資格試験を受けに行ったときに、iPhoneをなくしたんですよね。死ぬほど焦ったんですけど、交番に届けてくれた人がいて、東京の人って優しいなと感動した覚えがあります。

雨傘のことで一つ思い出しました。当時はインバウンドがすごくて、中国からのお客さんが、春節とかになるとめちゃくちゃ来るんです。

中国のお客さんとは、たどたどしい英語で接客していたんですけど、あるとき傘を指しながら、「ニューワン?」と尋ねられたことがありました。要は、店頭に出ている商品ではなく、新品はあるかということですね。それでバックヤードに見に行ったらなかったので、申し訳ないなと思いながら戻ってきたんですけど、「オンリーワン」と言うところを、間違えて「オンリーユー」と言っちゃって……「新しい傘はない。あるのはあなただけだ!」と。すごく気持ち悪かったと思います(笑)。

――TOKIOの『LOVE YOU ONLY』みたいですね(笑)。わりと接客は向いていたとおっしゃいましたけど、そこから上京して音楽のウェブメディアで編集者になったんですよね。しかも、最初は無給で働かれていたそうですけど、そんな一大決心をされた情熱というのはどのようなものだったんでしょうか?

そもそも音楽が好きだったんですよ。学生時代に田中宗一郎さんが編集長の『SNOOZER』という雑誌に熱狂していて、学生時代に愛読していました。でも、就活をするときには、自分がメディア側になろうという発想は全然なかったんです。なれるとも思ってなかったし、当時の僕は仕事は仕事、生活は生活みたいな価値観が強くて、「好きなことを仕事に」という考えは持ってませんでした。

▲松永さん私物のバックナンバー。タナソーに熱狂した同世代人は多い。

だけど、社会人になって3、4年くらい経つと、自分の仕事はこれでいいのかなと考え始めて、「やっぱり音楽メディアで働いてみたい」という気持ちが大きくなっていったんです。わりと年齢的なあるあるだと思いますけど、当時の僕は25、26歳くらいで、このまま30代に進んでいいのかな、一回やっぱり挑戦してみたいなと思って、音楽メディアに転職しようと。

ただ、好きなWebメディアは東京にいくつかあったんですけど、どこもホームページを見たら経験者しか採用してないんですよ。残念ながら「アンブレラマスター」は求められてなかった(笑)。

だから、本当に無謀ですけど、「経験はありませんが、働きたいです」って履歴書を送ったんです。そうしたら、「インターンでお金は出せないけど、それでもよければ」と言ってくれるところがあって。それで、「いいや!」と思ってそこで働き始めました

――すごく思い切った決断で、本当に人生を変える選択ですね!? 少年漫画でいったら、第一章のラストに描かれるような旅立ちのシーンみたい(笑)。

僕の息子が同じ決断をしたら、「おいおい、ちょっと考え直してくれよ」って絶対に止めると思いますね。いや、でも自分がやっちゃったから止められないか……。

インターンのあと結局、正社員として働かせてもらえたんですけど、インターン時代は週2でそのメディアで働いて、週5でユニクロの工場で派遣のアルバイトって感じで、一日も休まない生活を送ってました。ギリギリで生きてましたね。

――実際にメディアで働いてみて、良かったこともやっぱりありましたか?

そうですね。音楽好きで海外アーティストが好きだったので、そういった人たちに取材できた経験は、僕の人生にとって大きな財産になっています。

それと、そこで経験ができたからこそ、今は違う世界で楽しく働けているというのもあると思います。経験できないままだと、いくつになっても「やってみたかったな」という後悔を引きずりそうですけど、それをなくせたことは僕の人生にとって大きかったんじゃないですかね。

現代の人事担当には「臨床の知」が求められる

――そこからリファラル採用の形で、インフォバーンに入社されたわけですね(※関連記事はこちら)。リファラル採用とはいえ中途入社だと、ほとんど誰も知らない状態からのスタートになりますが、松永さんはいろんな社員の方と仲良しですよね。どうやって距離を縮めたんだろうといつも思っています。

特に考えたこともなかったけど、人見知りをしないことが影響しているかもしれないですね。オフィスで人を見かけるとつい声をかけてしまうんです。

抽象的な表現になるんですけど、人間として「開いてること」はすごく大事だと思っています。逆が「閉じてる」状態で、人に対して攻撃的だったり、何か不機嫌でいたり、相手の意見を頭ごなしに否定したりとかしてしまう。これって、その根底には自分が傷つきたくないとか、自分の立場を守りたいとか、そういう防衛反応からきている気がしていて、それとは逆の状態であることが望ましいと思っているんですよ。

人に対して友好的であったり、上機嫌であったり、あいさつしたりとかささいなことでも、大袈裟に言えばそこには「傷つく覚悟」が求められると思います。相手の発言によって、自分の価値観が揺らいだり、傷ついたりする覚悟を持っていることが、「開いている」状態につながるんだと思うんですよ。それは心がけていることですね。

――入社してからしばらくコンテンツディレクター(コンテンツ編集職)として仕事をされて、そこからHRの仕事に異動されたのには、どのようなきっかけが?

自分から希望しました。当時の上司だった方に相談して異動させていただいたんです。それまで僕は、コンテンツを見たり、聞いたり、読んだりするのが好きなことが高じて、作り手に回っていたわけですけど、その中でコンテンツの種類として、僕は人間の会話とか、人間同士の関係性に興味があるんだなと気づいたんです。

だから、コンテンツをつくるよりも、人間の関係性をつくるとか、観察するとか、そっちのほうに興味が移っていって、だったらHRの仕事をしてみたいなと。

――インフォバーンで採用を担当されている松永さんと田汲洋さん(※田汲さんは中途採用担当/新卒採用担当時代の記事はこちら)は、お二人とも「いかにも人事」という雰囲気がないですよね。

それは二人とも、もともとコンテンツディレクターをしていた人間で、人事出身じゃないというのがデカいですよね。『ONE PIECE』でルフィじゃなくてブルックとフランキーがいる、『SLAM DUNK』で花道じゃなくて魚住と彦一がいる、『ワールドトリガー』でクガとオサムがいなくてレプリカと雷神丸がいる……といった感じでしょうか。主人公がいないのに飛び道具の二人がいるような感じ。

▲左が田汲洋さん。二人はインフォバーンが誇る飛び道具?

ただ一方で、現場で働いてきたからこそ、採用のマッチング度は高いと思っています。この方だったら入社したあとに活躍していただけそうだという解像度は高いと思いますね。採用することがゴールではなく、その方に活躍してほしくて採用するので、現場とも頻繁にやり取りします。その際にも共通言語があるので、意思疎通もスムーズだと思います。

あと、HRの仕事って「人と人との関係性の編集」でもあると考えていて、コンテンツの編集とはもちろん違いますけど、どこか似ているところもあると思いますね。

――採用や人事の仕事を経験して、HR人材に必要なものとして何があると感じますか?

まだまだ勉強中の身なので、そんなに偉そうなことは言えないです(笑)。でも、HRの仕事は難しいし、世間的にもどんどん難しくなり続けている仕事だと感じますね。

HRの仕事は、ちょっとアホな表現をするなら、「仲間を増やすこと」「仲間を大切にすること」の2つに集約されると考えているんですよ。

「仲間を増やす」というのは、採用のことですね。母集団を形成して、そこから何人を採用して、というものです。後者の「仲間を大切にする」というのは、組織開発であったり、人材開発であったり、キャリア支援だったりですね。今どきは社員のメンタルケアなども入ってくると思うんですけど、これまでのHRの仕事としては、どちらかというと前者に比重が置かれていたと思います。

それが今は、後者の「仲間を大切にする」という役割がかなり求められていますよね。「人的資本経営」という言葉が広まっているように、中長期的にメンバーの能力をどう引き出すかを考える必要があるんですが、これは言うは易しでかなり難しいんですよ。それはマネジメントが難しくなっているという問題と同じだと思います。

哲学者の中村雄一郎さんが書かれた『臨床の知とは何か』(岩波新書)という本があります。すごく雑に説明すると、この本では、コップがあったらそれが何グラムで、素材は何かという、自分とは切り離した客観性や論理性を「近代科学」と呼んでいる。それに対するのが「臨床の知」で、「あ、このコップ、かわいいな」とか、「このコップ、いい感じだな」という、情緒的な感性や身体をともなった行為が「臨床の知」の世界なんですね。

この「臨床の知」というのは、身につけるのがすごく大変なんですよ。採用については、母集団の数がこう、一次選考通過率がこう、内定辞退率がこうって、数字で表せるものが多いので、「近代科学」の側面も強い。もちろんそれも変わらず重要なんですけど、それにプラスして「臨床の知」を求められているのが、今のHRの仕事なんだろうと思います。

「人の役に立ちたい」という就活生の想いを受け止めて

――HR業務の中でも「新卒採用」には、ならではの特殊さもあると思いますが、その面白さはどんなところにありますか?

シンプルに学生と話すのは楽しいですね。「こんなに価値が違うんだ!」という驚きがあります。あるとき、サザンオールスターズの話になって、学生の方に「知ってますか?」と尋ねたら、誰も知らなかったことがありました。誰でも知っていると思っていたことが、世代が変わると意外と伝わらないんだとか、気づくことがたくさんあります。

明らかに、10年以上前に就活していた自分の世代と違うなと感じることとしては、かなりの頻度で「人の役に立ちたい」とか、「社会に対して貢献したい」と話してくれる学生に出会うんですよね。木下さん(※インタビュアー)は就活のときに、そんなこと言ってました?

――僕は30歳なので、半分わかるくらいの世代なんでしょうか。「果たして、これまでの資本主義の延長線上にある“成功”を目指したいのかな?」という疑問は抱きつつ、それでも仕事選びのうえで「社会貢献したい」という視点を軸に考える意識は薄かった気がしますね。「金じゃない、やりがいだ」ということの“ガチ感”を、今の若い世代には感じますよね。

たぶんその気持ちにウソは一切ないんですよね。本当に社会に対して良いことがしたい、人の役に立ちたいと思っているし、「資本主義は何か嫌だな」という感覚を抱えている方が多い印象を受けます。

ただ、ある意味で就活って、「資本主義というルール」の上での「通過儀礼としてのゲーム」みたいな側面があるじゃないですか。そこにどうしても参加せざるをえないことに、引き裂かれた想いを覚える方もいるんじゃないかなと思いますね。

――そうですよね。採用担当者としては、どうしても「落とす」という行為もしなきゃいけないので、そのつらさもありますよね。

それはめちゃくちゃありますね。僕がやっていることは選考というより、マッチングなんですよね。企業と学生とのマッチングなんです。だから企業と学生の立場は対等であるべきだと思っています。

とはいえ、対等な関係が理想であっても、実際には対等じゃないことは、採用担当として肝に銘じておかないといけないところだと思っています。学生の方が絶対に緊張しているはずですし、企業側の人間は無条件に圧を与えていることに自覚的であるべきで、それを忘れないよう心にタトゥーを入れて採用活動を行っています。

個人的には、これはキレイごとに聞こえそうだし、採用担当者としてのエゴだとは思うんですけど、採用プロセスのなかで、「インフォバーンを受けて良かったな」って思ってもらいたいんですよ。その結果がどうであれ。説明会で話を聞いたり、面接を受けたりして、仮にご縁はなかったとしても、参加して良かったなと思ってほしい。学生が就職活動を通して、何かしらの発見とか、気づきとか、ポジティブな感情が起きればいいなと思っています。
まあ、そうできているかどうかは、わからないですけどね。そればっかりは本人たちの気持ちなので……。

――松永さんは、就活生に向けた内定者座談会(※関連記事はこちら)や、お悩み相談会(※関連記事はこちら)を開かれたりと、学生の「人の役に立ちたい」じゃないですけど、「就活生のために何かしたい」という想いが強いなと感じます。もちろんインフォバーンの採用広報活動として、という側面もありますが、直接的な活動ではないですし、そうしたことをしようとされるのはなぜでしょうか?

一言でいうと、みんなに幸せになってほしいんですよね。

『僕らのヒーローアカデミア』という漫画のなかに、「麗日(うららか)お茶子」ちゃんって子がいるんですよ。『ヒロアカ』はヒーローになるための育成学校を舞台にした話なんですけど、みんなそれぞれにヒーローになりたいモチベーションがあるなかで、お茶子ちゃんは、「人の喜ぶ顔が好きだから」ヒーローになりたいんです。それを読んでいて、「この子、オレだな」と思いました(笑)。

別に僕は善人でもなんでもないんですけど、人が笑っているのを見るのが好きなんですよね。そのうえで就活事情を見ていると、学生がみんなつらそうなんですよ。「人の役に立ちたい」「社会に貢献したい」と思いながら、就活の現実の中で傷ついている子を見ると、何か笑ってほしいし、少しでも力になれたらと思うんです。まあエゴですね。

――なるほど。松永さんって人から相談されやすいタイプですよね。田汲さんもそうですが、何かすれ違うタイミングで相談しやすい、というくらいの空気感がある人が、人事・採用担当者として所属していることは、インフォバーンにとって本当に良いなと感じます。

相談されやすいというのは、HRの仕事として大事なことだとは思っていますね。僕は先日亡くなられた精神科医の中井久夫さんが好きなんですけど、「患者を治すのは精神科医じゃなくて、看護師さんたちだ」というようなことを言っているんです。要するに、治療は精神科医が診察する場で進むんじゃなくて、日々の会話。たとえば、自慢話を聞いてあげたり、「どこがつらいですか」と聞いたり、そういう日々のコミュニケーションの積み重ねが、患者さんを治していくと語っていたんですね。

僕はその考えにすごく惹かれましたし、これは精神疾患を抱える方に限った話ではないと思ったんです。日々暮らしていくなかで、ちょっと愚痴をこぼし合ったりとか、相談したりとか、しょうもないことを言い合う関係性があることが、キュアーじゃなくても、ケアやトリートメントになって、良いメンタルを育んでいくと思っているので。

だから、僕がもし相談しやすい人だと思われているんだったら、目指していることでもあるので嬉しいですね。

心理学を学びながら目指す、「対話」を通したコーチング

――少しプライベートの話も聞きたいんですが、仕事をしながら放送大学で心理学を学ばれているとか。コーチングの資格も持っていらっしゃるそうですが、そのきっかけは何だったんですか。

出発点は「コーチング」に興味を持ったことですね。先ほど話したように、自分が「人との関係性に興味がある」と気づいてから、勉強するようになりました。

まずスクールに通ってコーチングの資格を取ったんですけど、コーチングって「心の専門家」ではないんですよね。臨床心理の知識があるわけじゃないし、精神医療の知識があるわけでもない。そのなかで、ちゃんと先人が築き上げてきた心理学的なものを学びたくなってきたんです。

語弊があるかもしれませんが、コーチングは心理学や精神医学から転用可能な部分をすくいながら、ビジネスの領域に持ち込んだものなので、体系的な知識は実はないんですよ。だから、もっと体系的に学びたいと思ったのが一つです。

もう一つは、30代になってから、ビジネスパーソンとして20代で過ごした経験を貯金として切り崩しながら仕事をしているなと感じるようになったことですね。このまま40代、50代と歳をとると、すっからかんになっちゃいそうだという危機感がありました。

あと、インフォバーンに勉強家が多いから、僕もそういう気持ちを抱くようになったというのも大きいと思います。それまでの人生では、何か学問的、体系的な知識を学ぼうと思ったことはなかったですから。インフォバーンには、働きながら大学に通う人もいますし、そうでなくても何か勉強する人が多いんですよね。

――コーチングというと、マネージャーが部下に指導するとか、心理学の中でもポジティブ心理学的な流れとか、おそらくビジネス文脈で語られることが多いものですよね。松永さんは社内でもセルフコーチング会などをやられたりしていますが、少しそのイメージとは違う印象を受けます。

おっしゃっていただいたように、コーチングって、そもそもはビジネス的な要請の中から生まれたものだと思うんですよね。だから、モチベーションを上げるとか、行動を引き出して成長してもらうとか、それが本来の意味でのコーチングだとは思うんです。ただ、僕はそこだけに閉じては、面白くないなと思っていて。

僕は自分がするコーチングを「欲望形成支援」だと思っています。これは哲学者の國分浩一郎さんの言葉なんですけど、「病気の方に対して医者は何か処方するだけじゃなくて、一緒にその人が何を求めているのかを話し合うのが大事なんだ」といったことを語られていて、それこそが僕の目指しているコーチングなんです。

「成長させる」「モチベーションを上げる」といった表現が、僕はあんまり好きじゃなくて。それはどこか個人の主体性をバカにしているみたいじゃないですか。対話を通して、その人が何を望んでいて、どういう人生を歩むと幸せなのか、自分で自分を発見していくことを支援する。何か与えるんじゃなくて、対話を通して気づけるように、ちょっとだけお手伝いをする。そんなニュアンスなんですけど、それができたらいいなと思っています。

――では、最後に募集メッセージをおうかがいしたいんですけど、採用担当者が普通に「ぜひ来てください」だと面白味がないので、数年前から松永さんが強く関心を持たれているという「ネガティブ・ケイパビリティ」に絡めて、就活生へのメッセージをお願いしたいです。

就活がめちゃくちゃ好きで、楽しいから続けたいと思う方はほとんどいないでしょうし、おまけに内定先が決まるまで宙ぶらりんな状態なので、就活はかなりこの「ネガティブ・ケイパビリティ」が試される場面だと思うんですよね。

確かにそうですね。「ネガティブ・ケイパビリティ」のそもそもの概念を言うと、答えの出ないものに対して、安易に「こうである」って答えを提示するんじゃなくて、ずっと悩み続ける能力ですよね。確かにおっしゃるように、就活はそれをずっと試され続けている期間だと思うので、すごくつらいだろうと思います。

そのつらい状況に対して、必死に耐えていらっしゃると思うんですよ。一つ救いになるとすれば、それに「ネガティブ・ケイパビリティ」という名前を付けることで、「自分にはそういう能力があるんだ」と考えられるようになることですね。「私はネガティブ・ケイパビリティがあるから、これに耐えられているんだ」と。そういうふうに捉えられるといいんじゃないかと思います。

――なるほど。「ネガティブ・ケイパビリティを鍛える訓練期間なんだ」というくらいの気持ちでいるのは良さそうですね。

僕は就活において、「ありのまま自分を出してください」みたいなメッセージが世間に多すぎると思っていて、それは無理だと思うんですよね。「ありのまま」ってなんだそれって話ですし、それを言われても学生はどうしたらいいんだよ、という疑問があって。だから、「ありのまま」みたいな表現は無視してほしいですね。

採用担当者って結婚相談所の仲介人に近いのかなと思っていて、僕はインフォバーンの人間ですけど、インフォバーンからちょっとはみ出た第三者的な存在でもある必要があると思っています。インフォバーンがどんな会社で、そこに合う人はどんな人なのかを整理する。そのうえでインフォバーンを紹介して、学生に興味を持っていただく。

無理にアテンションを起こすわけじゃなくて、ちゃんと興味を持ってくれて、僕もその学生がインフォバーンに入ってくれたら幸せになれそうだなって思ったら、両者をマッチングするというイメージなんです。

だから、インフォバーンに縁があろうとなかろうと、少しでも関わってくれた方には、「みんな、マジで幸せになってね」というのが一番のメッセージになりますね。


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