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The Roots vol.2「F1グランプリ」後編

最近の仕事:大手自動車メーカーでの車両ワイヤーハーネス及び周辺部品の開発設計

プロの視点 1

「三遊間」をやる

設計をする人はひとつの分野に没頭するので、意外と関連するパートとの調整がむずかしい。そんな、人が手を付けたがらない仕事も積極的にやるようにしています。例えば、私が担当するボディなら、自分が担当しているパートと隣りのパートのつなぎ目の部分。「三遊間」(※)って呼んでいますけど、それをやる。両方の部品の成型性を考えなくてはならないし、ほかにも考慮しなければならないことが多いので大変は大変なんですけれど、やれば自分の知識・経験になりますからね。時には、隣のパートの部品が“成り立っていない”ことにも気づいたり。もちろん、そういう時には「成り立っていないんじゃない」って声を掛ければ感謝されますし、自分の視野も広がります。ボディの一部を手掛けていても、結局は「車」全体をみてなくてはいけないわけで、「三遊間」をやることの積み重ねで、知識と経験は倍以上のスピードで付いてきます。私の現在のキャリアは、「三遊間」を積極的に手掛けることで培ったものだとも言えるんです。

※注)「三遊間」…野球で三塁手と遊撃手との間を指す

プロの視点 2

常に進化させなければならない宿命

設計するにあたって、何の「車」をつくるにもベースの「車」があるんです。マイナー・チェンジは、ライトを替えるとか小規模なモデル・チェンジですが、フル・モデル・チェンジはそうではない。モデル・チェンジ前の「車」に対しボディなら、より軽く、より強くした方がいい。特に小型車は、同じ性能ならより安く、同じ値段ならより性能を良くすることが求められます。つまり、常に進化させなければならない宿命にあるのです。私たちは設計なので、デザインをすることはできません。でも、そのデザインで可能か否かのフィードバックはします。「成り立つのか」。「コストはどうか」。例えば、パーティングと言ってボディの境目のラインがあるのですが、設計上パーティングが不可能なものであったり…ということです。私生活でも、街で「車」をみると、ついパーティングに目が行きます。どう組み立てられているのかをみてしまう。たぶん、習慣なんでしょうね(笑)。

モチベーションの原点

「持ちつ持たれつ」。コミュニケーションが大事

自動車は、ひとりでつくれるものではない。だから、コミュニケーションが大事です。相手を助け、時には助けてもらう。ほかのパートの人に頼まれた仕事をすぐにやれば、こっちが頼んだ時もすぐにやってもらえる。「いつも、やってもらっているからね」って。人間ってそんなものではないですかね。だから、「○○さんの頼みなら、すぐにやるよ」って言ってもらえるためには自分が相当やらなければならない。そう思いますよ。技術者には、それぞれ専門分野、つまり得意分野があって、それを持ち寄ることで素晴らしい製品ができるわけです。これって、組織・会社にも言えます。人間には得手不得手があって、それをそれぞれが補完し合うことで組織として素晴らしいパフォーマンスができる。「持ちつ持たれつ」って昔からある言葉ですが、昔の人はそういうことに気がついていて、この言葉が伝えられて来たんじゃないですかね。古き日本の良い言葉ですよね。

目指す姿

生涯現役。そして「継承」は感謝と責任

まず、技術者として生涯現役でいたいと思っています。今まで同様に大手自動車メーカーでお仕事をさせていただければ、とても幸せです。一方で「ワットで製品をつくりたい」という気持ちも大いにあります。「自社製品をつくる」という夢は、いつか実現したいですね。そのためにも、若手技術者の育成が必要。いま研修制度もどんどん整備していますけれど、そういった教育面にも積極的に参加していきたいです。それに、「継承」って今まで自分が色々な仕事をさせていただいた感謝と責任ではないかと思います。現場でも、同じ部署の若い人によく相談もされて教えています。自分の経験や知識が「継承」されることで若い人が育っていく。次の世代、またその次の世代と受け継がれることで、社会も、会社も、よくなっていく。ひとりの技術者であると同時に、ひとりの人間として、そういう責任を果たしていかなければいけないと思うんです。もう自分も、そういう年代になったということだと思います。

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