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震災後の福島に生まれた未来の学校。ふたば未来学園とカタリバの新たな挑戦。

2011年の東日本大震災から9年。

福島県沿岸部では、地震・津波による大規模な被害に加え、原発事故により多くの人がふるさとを失いました。この9年で、帰還が可能となっているエリアも徐々に広がっている一方で、旧避難区域の居住率は3割未満(2019年3月時点)と少なく、若者が少ないなど、復興に向けてまだまだ課題は残ります。

そんな双葉郡の一番南に位置する広野町には、2015年4月に開校した福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校が設立されました。

福島県広野町にある福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校

本音の対話が
協働関係を強くした

「互いに手探り。最初は距離感のあるところからのスタートでした。先生からは、『カタリバが来たからといって何が変わるのか?』、『連携と言いつつすぐにいなくなるのではないか?』など、ストレートな声をもらうこともありました」と語るのは、NPOカタリバ職員でふたば未来学園高校支援の責任者である長谷川勇紀。


ふたば未来学園高校支援 責任者 長谷川 勇紀 新潟県出身。教育学部卒業後、企業内人材育成に取り組む民間企業を経て、2014年にNPOカタリバへ転職。高校生向けキャリア学習プログラム「カタリ場」の事業責任者を経て、2016年に「コラボ・スクール双葉みらいラボ」立ち上げ責任者として福島県広野町へ。学校が推し進める未来創造型教育を推進している。


ふたば未来学園は、被災地に開校する高校としてのみならず、高校教育改革の最先端校としての期待とともに華々しく開校しました。建学の精神は「変革者たれ」。

この地域を取り巻く厳しい現実を前に、既存の社会システムの形にとらわれず新しい価値観を見出していこうと、「未来創造探究」という独自の探究学習をカリキュラムの柱に置くなど、特色のある教育活動を行っている学校です。

しかし入学してくる生徒たちは各々が厳しい避難体験を持っており、「復興を支えたい」と志を持って入学する生徒もいる一方で、心には深い傷を負っていて思うように勉強や部活に向き合えずに苦しむ生徒たちも見受けられました。そのような状況の中で先生たちは、生徒たちの心を支えることで精一杯という状況でありながら、探究学習という新しい取り組みを開発することも求められている状態。

不安から来る「よその者」に対する厳しい視線。それはある意味、必然でもあった。そこで長谷川は先生たちと1対1で対話する機会を設け、課題感などをヒアリングしながら、連携の形を検討するとともに、関係構築に取り組んだ。そんな長谷川の姿を見ながら、ふたば未来学園側も、前述の企画研究開発部の組織内に長谷川の役割を位置づけ、協働しやすい体制を整えていきました。

長谷川:「特に意識的に行ったのは、先生の願いや想いを聞くことでした。風当たりが強いなかでも、先生たちの生徒への想いの強さを感じていたんです。だから、まずは聞くことに徹して、先生の想いや願いに近づけるようサポートすることを意識しました。カタリバスタッフは立場上、生徒と接する機会が多く様々な声を聞きます。生徒を主語にしながら先生と話をしていくなかで、先生たちの方から『こういうことがやりたい』『こんなことを相談したい』という本音が聞けるようになりました」

2017年9月に開所した「コラボ・スクール双葉みらいラボ」は、ふたば未来学園に通う生徒であれば誰でも通うことのできる放課後の居場所。常時数名の大学生スタッフが生徒たちを出迎え、教科や探究学習のサポート、進路や日常における悩みの相談などに応じています。

当初は一方的に情報提供するだけだった状態から、徐々に担任など先生側からも意識的に見守ってほしい生徒などの情報が共有されるようになり、学校とカタリバが一枚岩で生徒を見守り成長を支援していく体制が築かれるように。2019年4月には中学校も開校し、双葉みらいラボは、高校生に加え中学生も訪れる場所となっています。

こういった連携の結果、先生たちからも「生徒のつまずきにいち早く気づき、伸び悩んでいるところを解消させてくれる声掛けやアドバイスに、とても助かっている」「生徒に対する関わり方が重層的になる」などの声をもらう機会も増えていきました。

教員とカタリバスタッフ
チームで磨き上げていく探究学習

探究学習の時間は、先生とカタリバスタッフがチームを組んで取り組んでいます。

新学習指導要領の一つの柱でもある「総合的な探究の時間」を先んじて取り入れたことで多くの注目を集めた一方で、カタリバにとっても、学校に入り先生たちと一緒に探究学習を一緒に作っていくのは、初めての試みである。


放課後などを使って探究学習に取り組もうとする生徒のサポートをカタリバスタッフが行い、先生は、その専門性や自分自身が持っている地域や企業とのネットワークを活かして生徒を学校外に送り出すなど、まさに「チーム」で取り組んできました。

探究学習5年目を迎えた今年度、ふたば未来学園高校には100を超える生徒たちの「探究プロジェクト」が生まれています。

逆境をプラスに変えていく
協働の先に描く未来

学校とNPOのような外部リソースとのコラボレーション。10代が意欲と創造性を育める社会を実現するための一つの形が、ここで確かに生み出されています。

被災地という震災前と比較すれば失ったものがある環境にありながらも、目指す到達点はマイナスからゼロではない。マイナスからプラスへ。「創造的復興教育」という新しい教育の形を作っていこうとする、ふたば未来学園とカタリバの挑戦はこれからも続きます。

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