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もし台湾IT大臣オードリー・タン氏がGoToキャンペーンの指揮を執ったら?

どうもこんばんみ!KeepAlive代表の成田です。今回はお仕事がらみではありますが、時事ネタということでGoToキャンペーンの在り方についてお話したいと思います。タイトルのオードリー・タン氏ですが、非常にクレバーで広い視野を持つDX人材として注目されていますね。タン氏の直近の偉業については他記事に任せるとして、現在賛否両論が巻き起こっているGoTo事業について彼女が指揮を執ったらどう変わっていたか?妄想してみたいと思います。


GoToに3つの「F」を成立させる

タン氏は「Fast(速い)」「Fair(公平)」「Fun(楽しい)」を提唱しています。ここでGoTo事業の「F」について考えてみましょう。現在のGoTo事業に「F」は成立するのでしょうか。答えはNOです。「F」の要素とその構造を紐解きながらタン氏に成りきってGoToを変革するシミュレーションをしてみます。それではいってみましょう。


「Fast(速い)」=キャンペーンのリアルタイム化

GoToで今般議論になっているのが新型コロナ感染とGoToの相関について、あるいはGoTo到着地のクラスタ発生状況と対象地域施設のキャンペーンON/OFFについて。どちらもリアルタイム性がなく数日遅れの結果論となっているため、一般消費者が判断できない状況となっています。

タン氏は薬局のマスクの在庫を30秒で更新できるようにし、リアルタイムで状況を確認できるようにしました。タン氏の施策とGoToの違いはリアルタイム処理なのか、バッチ処理なのかです。現在日本では新型コロナ感染のエビデンスとして遺伝子解析=バッチ処理を主としています。遺伝子解析は精度と処理時間のトレードオフなため「結果は正しいかもしれないけどもっと早く教えてくれ」という事態を招きます。事後報告なので事前判断ができないのです。

それに対し、タン氏のマスク施策は事前判断のためのリアルタイムキャンペーンを用いました。ここで大切なのは企画構想段階でCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)的アプローチからスタートしているのか、DWH(データ・ウェア・ハウス)的アプローチからスタートしているのかです。CRM的というのはキャンペーン参加者を顧客と捉え、主催者側のマーケティングシナリオに誘導していくという考え方、DWH的というのはキャンペーン参加者の動いた結果を分析して次の施策に繋げていくという考え方、タン氏の施策は前者でGoToは後者です。CRM的アプローチとDWH的アプローチでは施策のサイクル(期間)が大きく異なります。CRMが数秒~1日サイクルだとすると、DWHは数日~1週間となります。ここら辺の詳しいことは別途デジタルマーケ基盤の作り方について語るとして、要は企画構想段階から予防意識とそのスピード感が違うということです。

ではもしタン氏なら?おそらくCRM的アプローチを取ったはずで、リード(見込み顧客)を何で管理するか、またどのように顧客のトレーサビリティ(動向追跡性)を担保するかについて設計したでしょう。我が国には現行システムとして「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」が在ります。COCOAはGPSにより人同士の接触トレーサビリティを担保しています。簡単な話で、COCOAでGoTo参加者IDを発番することができればいいのです。GoTo予約時にCOCOAから発行された参加者IDの入力を必須とすればこの2点は解消します。(※ここでは性善説的にCOCOA側の陽性登録は必ずされ、GPSは常にONとしているとします)。GoTo紐付きのCOCOAユーザの動向をGoogleMapsにリアルタイム反映すればよいのです。


「Fair(公平)」=プラットフォームの解放

現在、GoToキャンペーンはGoTo事務局(https://goto.jata-net.or.jp/)主催のもと、民間の予約サイトと提携で成立しているもので、事務局側に統制機能は存在せず民間側にコントロールを委ねてしまっています。つまりマーケティング的にいうとG2B2B2Cモデルで、プレイヤーとしては事務局、代理店、施設、一般消費者となります。この際、キャンペーンIDの発行もインセンティブの付与も、顧客IDの管理でさえも代理店に委ねており、事務局は販促原資しか管理していのでマーケティングに必要なデータパイプラインを事務局側でコントロールすることができないのです。代理店の資本力・メディア力に依存したマーケティングが行われているのと同義で、とても「Fair(公平)」とは言えません。施設、一般消費者は踊らされているとも言えます。

ではもしタン氏なら?事務局に公式アプリとマイページを作ります。キャンペーンの趣旨は経済活性化で、事務局としてのKGI/KPIがあるはずですから、事業貢献した代理店、施設、一般消費者それぞれにつき貢献度合いに応じたインセンティブが支払われるべきです。そのために必要なのは事務局サイドでプラットフォーム(基盤)を持つこと。そしてそれを開放して事業とし、それを統制して公平性を保つこと。「Fast(速い)」の項で前述した通り、COCOAから払い出された参加者IDを公式マイページで入力することになりますから、必然的に公式サイトの再来頻度が高まり、公式から検索するという導線が作られるというのが「Fair(公平)」の基本かと思います。さらに公式アプリで前述の「GoTo紐付きのCOCOAユーザの動向」がリアルタイムモニタリングできると良いでしょう。日本の場合はお金と時間と技術的知見が足りなかったのでしょうか。


「Fun(楽しい)」=OMO世界観の実現

現在、のGoToにおける「Fun(楽しい)」とは従来の「オフライン消費」となっています。つまり宿泊施設に泊まって観光して楽しい、ご飯を食べに行って美味しい、のみです。また地域共通クーポンという仕組みが不要不急なモノ消費を煽っており、全体としてエクスペリエンスを享受するというより、「得した感」がでているだけで非常に勿体ないスキームとなっています。キャンペーン参加者はGoToがなくなった後に再びその地に来訪するでしょうか?おそらくしないでしょう。マーケティング的にはコンバージョンはしたけどロイヤル化していないと言えます。

ではもしタン氏なら?オフライン消費とオフライン消費の間にデジタルを挟みます。タン氏はマスク施策の際、マスクの販売店の地図をアプリで公開し、チャットボットで誘導するというギミックを施しました。これをGoToに当てはめた際の単純な例は、宿泊施設の地図は公式アプリで誘導される、自治体からの案内をアプリプッシュで提案する、他の参加者がどこに行っているのかアプリで分かる、地域共通クーポンで買ったものをアプリで他の参加者にシェアできるなどです。マーケティング的にはこう言った施策のことを「Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合=通称OMO」と呼びます。キャンペーン終了後はアプリを引き続き公開したり、観光庁公式のポータルサイトとデータマージすることにより「掛け捨て」から「アセット」へ昇華できますし、再来キャンペーンによりロイヤル化も期待できるでしょう。


最新の基盤の作り方=2020年のテックとその未来

タン氏に例えてここまでお伝えしてきましたが、タン氏の3つの「F」を下支えしているものは紛れもなくテクノロジーです。タン氏の施策が絶妙なところは公共事業であるにも関わらずアプローチがCRM的であるところと、企画とテック活用のバランスが良いところだと思っています。ではそのテック活用について、2020年もぼちぼち師走ですが、今年起こったパラダイムシフトについてお話します。タン氏が採用したアーキテクチャについて詳細は分かりませんが、以下にお伝えすることは確実に「F」に資するテクノロジーです。なお、ここからはDX業界で企画、マーケに携わるプロフェッショナルな方々向けの内容です。みなさんの企画のゼロ地点面積を確保する助けになれば幸いです。



1.デジタルマーケティング基盤のリアルタイム化

マーケティングオートメーション(MA)はバッチ処理(1日1回などの定期配信)からリアルタイム処理(何かしたら即時に何か起きる)に移行しつつあります。これはMAツールとそれを下支えするクラウド技術の進化により、より大容量なデータを高速処理できるようになったためです。企画の方向性が従来の定時アプリプッシュやメール配信などから、イベントドリブンなUIの動的変化に変わります。SaaS製品のサインアップなどでSMS認証すると勝手に画面が切り替わる体験したことありますよね?あんな感じでユーザアクションやNFCタグの読み込みなどをフックにしてMAが即座にUIを変更する、レジに持っていく前の5分間有効なクーポンを配信するなど、施策がよりショートタームになっていくでしょう。


2.iOS14から導入されたAppClipsによる即時体験の向上

1.に関連しますが、NFCタグの読み込みによりインストール不要なアプリが立ち上がるAppClipsが導入されました。これによりキャンペーンがよりショートタームでインスタントなものになります。街中にNFCタグが貼られまくる、NFCタグを読み込んで2タップで何かが起きる。来年以降は一層OMOの世界観で溢れかえる予感がします。


3.5G通信網の普及によりPC/Wi-Fiが不要に

インフラとしては今年の目玉だったと思います。現在iPhone12がミリ波に対応しなかったことにより、一部のギークなユーザ以外には浸透していないかと思いますが、5Gを前提にした企画を作るのは今からでも遅すぎるくらいです。5Gによって何が変わるかというと一番大きなところはPCとWi-Fiが不要になるということ。PC/Wi-Fiでしかできなかった大容量データの閲覧や作業がスマートフォンで完結するようになります。PCはより一層作業特化となり、触れ合いが減るでしょう。従来PC/SP/アプリのような展開が当然でしたが、今後アプリに振り切った企画が増えると考えます。



さいごに

長くなりましたが、主にテクノロジー視点でGoToを論じてみました。今後もテックだけでなく企画やマーケに携わる方々に有用な記事を展開していきたいと考えていますのでご興味いただけたら是非フォローをお願いいたします。KeepAlive成田でした。

ではまた!

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