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元銀行員のスタッフが語る地方企業の理想とリアル

〈プロフィール〉

金子孝二(かねここうじ)



1990年生まれ。大分県大分市出身。高校まで大分で過ごし、大阪大学文学部へ進学。学生生活の4年間を大阪で過ごす。在学中は高校時代から続けていた吹奏楽に熱中。「自分がどうすることが聴く人や仲間たちにいい影響を与えられるかということをとことん考えることが出来る機会だった」とのこと。グループ内での立ち位置はサブリーダーのようなまとめ役。就職活動中の他己分析では「黒幕」と評されたことも。新卒では株式会社大分銀行に就職。在籍した5年間のうちに個人・法人の債権管理を中心に、営業部門としては主に個人の資産運用やローン提案を経験した。今年(2019年)1月に株式会社樹の家こころ舎に入社し、営業部門に配属。以来営業→営業マネージャー→営業マネージャー兼広報・総務担当としてポジションを変えながら活躍している。

大分市以南の地域を中心に注文住宅を建築する株式会社樹の家こころ舎。本拠地である臼杵市から今年7月には大分光吉店をオープンし拡大を続けている。10名ちょっとの小さな組織である樹の家こころ舎ではあるが社員のほとんどは中途採用であり、そのバックグラウンドもまさに十人十色。広報、営業、設計、インテリアコーディネート、施工と異なる職能を掛け合わせる組織だからこそ一人ひとりの相互理解が必要だ。

小さな組織だからこその苦悩もよろこびもある。そのどちらも含めて「仕事」であるし、その人間関係は建前を超えて一人ひとりの人生に良い影響を与えるものであって欲しい。異なる背景を持ちながら樹の家こころ舎に集まったメンバーの一人ひとりにスポットを当てていく本連載。第一弾は地元の地方銀行出身で今年の1月に入社した採用担当の金子にスポットを当てたい。地方銀行という地元では大きな組織出身であった彼がどうして社員11人の会社に転職をしたのか。これから何をしていきたいのか。日々の業務、小さな組織ならではの働きがいと働きにくさについて語ってもらった。

「大分に帰ったときに、もう大分はないんじゃないかと思った」

ーー大学では大阪に進学したそうですが、学生時代はどのように過ごしたのですか。

2回生になるまでは、講義はできる限り出ずにテストやレポートだけで単位が取れるものばかり受けていました。といってもその他の時間で何をしていたわけではなく、所属していた吹奏楽サークルの部室でずっと楽器をたたいてたように思います。2回生の夏にサークルの先輩とインドに行ったのですが、それが転機でした。ガイドブックに書かれているとおりにぼったくりにあい、挙句赤痢にかかってしまったんです。「こんな非道いめにばかり会わせる国で死ぬのか。死にきれない」と強く思ったことを覚えています。それ以来、「いつか死ぬんだから、失敗してもいいからやるべきことをやろう」と思うようになりました。


ーー強烈な体験ですね。そうした思いがある中で、どうして地元の大分で就職しようと思ったんでしょうか。

半年に一度程度帰省をしていたのですが、帰る度に大分がさびしくなっているように感じたんです。元々いつかは大分に戻れたらいいなとはなんとなく感じていましたが、時が来るのを待っていたら自分が思っている大分はなくなってしまうんじゃないかと思うようになりました。そうしたなかでも東京や大阪の企業も含め就職活動をしていましたが、いろいろな縁があって大分銀行に入社することになりました。


ーー銀行での仕事がしたかったというより、大分に戻りたかったという気持ちの方が強かったんですね。

正直にいうと、内定が出るのが早かったというところもあります(笑)またいろいろな人と話したり、プロとして仕事をしたいという思いもありましたので、結果的にはよかったのかもしれません。


ーー銀行員時代はどんな仕事をされてたんですか。

一番長くしていたのは、個人・法人問わず債権管理と呼ばれる仕事です。過去に貸し出された貸金が滞りなく返済されているか。されていない場合はどのように返済をしていってもらうのかをお客様と考えるというものです。正直気楽な仕事ではありませんが、キャリアのはじめにこうした経験を積めたことでその後自分が新しいご融資の提案をするときにどういった点に気をつけるべきなのかを身をもって知る貴重な体験でした。この頃の経験が「しっかりとその人にあった住宅ローンを住宅業者は提案するべきだ」との思いにつながっています


「もっと正直に仕事をしたかった」

ーー銀行はその地方では安定していますし人気の企業だと思います。その職を離れたのはどうしてですか。

理由はいくつかありますが、一番大きな理由は「お客様と自分と会社のメリットの方向があう仕事をしたかった」というものがあります。当時から自分は「住宅ローンをその人にあった額で提案することで、その人の自由に使えるお金が増え、それを適切に運用することで将来資金を準備することができれば、まずその人にとって充実した人生になるだろうし、将来的に消費も増えて地域も嬉しいし、銀行もトータルコーディネートできるしみんなハッピーじゃん」という思いがありました。そうしたなかで当時付き合いのあった当社と連携して住宅ローンの勉強会を開いてみたり、本部と連携して老後資金の準備についてのセミナーを開催したりしていました。ただ、担当ベースでこういったことをするのは非常に時間がかかるんですね。やりたいことがあるのに、本質的な部分で時間がとれないというのは自分の性格的に向かないと感じる部分がありました。

ーーやりがいをかんじながらも、大きな組織ならではの動きにくさを感じていたということですね。そういったなかで樹の家こころ舎に入社するわけですが、どうして入社を決めたのでしょうか。

まずは代表をはじめ社員の人柄を知っていたというのが大きいです。本当は上記のような課題意識をもっていたので、独立系のFPや東京のフィンテック企業への転職を検討していました。ただ元から地方にありながら新卒採用も進めるなど柔軟な考えをする会社だなとの認識だったので、代表の話を聞きにいきました。

「『一緒に会社をつくりませんか』の言葉にしびれました。」

ーーそのとき代表とはどんな話を。

代表は元から付き合いもあったこともあったのか色々なことをざっくばらんに話してくれました。実は一度話だけ聞いて断ろうというつもりでいましたが、人事評価制度を見せてくれたときに「これも自分がつくったんです。ただこれでいいのかわからないんですよね。一緒に会社をつくっていきませんか」と言われたんです。そういわれた時にすごくワクワクしてやれるだけやってみようと思いました。


ーー実際に入社していかがでした。

騙されたと思いました(笑)


ーーギャップもあったと。

ギャップというのは自分の想定の甘さですが、前職が整った企業だっただけに仕組み化されていない部分が目に付きました。ただそれも含めてこのフェーズで入社をすることの醍醐味だといまでは思っています


ーー具体的にはどういった点にギャップを感じましたか。

各種申請のフローが曖昧であったり、仕事の中身が属人化している点。会議がすごく長かったことにも驚きましたが、現在ではだいぶ改善が進んできました。この一年で様々なことが整っていっていて小さいからこその変化の速さは体感していて心地がいいです。


ーー「騙された」といいながら楽しそうに仕事の話をしているのが印象的です。入社以来どういった仕事をされてきたんですか。

採用時には管理部門を将来的に担って欲しいというふうに言われていましたが、最初は営業としてキャリアをスタートすることになりました。最初の3ヶ月弱は同期入社の宇都宮とともに東京への研修と大分でのイベント参加でてんてこ舞いだったのを覚えています。自分自身すごく身になりましたが、今後の教育プランとしてはもう少しOJT(実際の業務の場での研修)を増やして外部研修をより実践ベースで取り入れられるようにしていきたいですね。その後、自分の組織のなかでのポジションを考える中でマネージャーへとポジションを換えていくことになりました。


ーー営業マネージャーになったのは5月のことだと聞いていますが、どういったお仕事をされているんですか。

営業担当とお客様と会社の方向を一致させることです。営業担当とお客様の情報についてディスカッションを行い、お客様にとっていま何が家づくりの課題になっているのか。その課題を一緒に解決するためにはどのようなことをお聞きし、どんなお話をしたらいいのかを考えます。会社として実現したいのは「注文住宅を通じた自分らしい暮らしの提案」なので、お客様の価値観と当社の価値観があっているのか、その擦り合わせををするのが営業だという考えを基準にディスカッションを行っています。


ーーお話を聞くと営業担当の方と上司と部下という関係ではないんですね。

そうですね。あくまでも役割が違うだけです。一人ひとりの持っている情報や考え方は違うので客観的な視点をいれないと独りよがりなサービスになってしまうし担当によって品質が変わってしまう危険があると思っているんです。そのためにお客様に提供する情報の質を管理するのがマネージャーの役割だと考えています。


ーー現在では広報や総務的な仕事も兼務しているとのことですが。

小さな組織なので一人ひとりの役割が大きいです。自分自身も経験や知識があるわけではありませんが、やっていくしかありません。また広報の仕事については「お客様ー社員ー会社」の方向性を一致させるという点では営業の仕事の延長線上にあるものだと感じています。ただ手伝ってくれる人がいたら是非手伝って欲しいです!


ーーオープンポジションで募集ということですもんね(笑)。

そうです。ありがたいことに仕事は余るほどあるので、あらゆるポジションを募集しています。


ーー職場の雰囲気はいかがでしょうか。

代表の人柄なのか、みんなすごくいい人ばかりです。普通入社して一年経たない自分にこんなにいろいろと仕事をさせてくれないと思います。


ーー中途入社でもなじみやすい環境だと。

自分はそう思います。ただ、先ほど「騙された」と冗談で言ったように、いまは組織化を進めている過渡期です。整った環境を期待して、自分の仕事だけを全うしようとする人にとっては働きにくい職場だと思います。


ーーこれから組織をつくっていく状況を楽しめる人であったほうがいいと。

そう思います。


「モチベーションを隠さずにいられる環境がこんなに過ごしやすいとは思わなかった」

ーーいま、自分に求められていることはなんだと思いますか。

「お客様ー営業ー会社」の方向性を一致させるのはもちろん。他部門との連携もより密にとれるようにしていきたいと思います。全体のハブとなる役割を求められているのではと感じています。社内外の価値観の擦り合わせが自分の仕事だと認識しています。


ーーこれから取組みたいことを教えてください。

やりたいことはたくさんありますが、代表がこれまで地元臼杵で行ってきたことを大分全体に投げかけていくこと。それを現場ベースで表現していくことが自分の仕事だと思っています。もっとお客様の役に立つ営業チームでありたいと思いますし、企業でありたいと思っています。また経営的には今後一人当たり生産性をターゲットに据えて計画を練っていく方針なので、その推進の役割も担っていきたいですね。当社の経営理念は「心地よさの追求」これは「自分らしくある」ということなのですが、お客様はこころ舎と一緒に家づくりをすることで自分らしく暮らせる空間(家)を手に入れることができ、スタッフもそれぞれの得意分野を活かし、正直にお客様に接し自分らしく仕事をすることができるように努力をしています。正直全部が全部うまくいくわけではなく、うまくいかないことの方が多いですが、環境を整えていきたいと思っています。なんにせよ、チームのモチベーションが高いのは嬉しいです。自分は元々色々なことをしたいひとなので、こうしてモチベーションを偽らずに過ごせるのは心地よいですね。

株式会社樹の家こころ舎では一緒に働く仲間を募集しています
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