「最近、自分の内面が変わったと感じる人はいますか?」
この日の朝礼は、コウダプロのNo.2として組織を支える原口水月さんからメンバーへ投げかけられた、そんな問いから始まりました。
手を挙げたメンバーは一人ひとり、日常のなかで感じている内面の変化を語りました。内容はそれぞれ異なりますが、話を聞いていくと、そこに通じるものが見えてきました。
また、朝礼の後半では、幸田八州雄社長が、ある瞬間に踏み出した一歩が、その後の人生を大きく動かすこともあると語りました。
人の変化は、いつ、どのように始まるのでしょうか。今回は、メンバーが共有した内面の変化と幸田さんの講話から、「人が変わるとき」について考えます。
こんにちは、プレスラボ(@presslabo)の池田園子です。月1回「コウダプロ朝礼レポート」を担当させていただいています。
気づけば、前とは違う自分になっていた
朝礼の前半で、メンバーから語られた変化を一部抜粋して紹介します(表現は少し変えています)。
「イライラすることが減り、相手が気づくまで待てるようになった」
「自分でやった方が早いと思っていたけれど、人に任せられるようになった」
「人の言葉を必要以上に深読みせず、そのまま受け取れるようになった」
「うまくいかなかった結果に執着しなくなった」
「自分でコントロールできないことを考え続けなくなった」
「最短ルートだけを求めず、周囲の寄り道にも付き合えるようになった」
どれも、大きな決意によって、ある日突然別人になったという話ではなく、日々の中でふと「前の自分ならこうしていなかった」と気づくような変化です。
原口さんは、こうした変化を「ぬるっとやってくる」と表現しました。
「変わる」と聞くと、目標を決め、努力し、何かを達成するような、目に見える変化を思い浮かべるかもしれません。でも実際には、自分でも気づかないうちに、以前とは異なる考え方や行動が身についていることもあります。
たとえば、以前なら腹を立てていた場面で、一呼吸置けるようになる。「自分でやるべき」と抱え込むのが当たり前だった仕事を、人に相談できるようになる。
その瞬間には気づかなくても、後から振り返ったとき、過去の自分との違いが見えてきます。変化は、わかりやすい音を立てて訪れるとは限らないのです。皆さんの中にも、そんな変化はないでしょうか。

手放すことは、本来の自分に戻ること
メンバーから語られた変化には、もう一つの共通点がありました。知識や能力が新たに加わったというより、これまで身につけてきたものを手放すことで起きた変化だということです。
たとえば、うまくいかなかった結果を引きずること。人の言葉をそのまま受け取れず、考えすぎる癖。自分の正しさや最短ルートへのこだわり。自分の力ではどうにもできないことまで、なんとかしようとする気持ち。
こうしたものは、傷つかないため、失敗しないため、求められる役割を果たすために、さまざまな経験のなかで身につけてきたものでもあります。
かつて自分を守ってくれた考え方や反応が、今の自分にはしっくりこなくなることも。それに気づいて手放していくと、心や身体に余白が生まれます。
メンバーの話を聞いた原口さんは、この「手放し」について「いろいろなものがくっつく前の自分に帰っていくことなのかもしれない」と話しました。
変わることは、別の誰かになることではない。今の自分には必要なくなったものを外し、もともと持っていた素直さや好奇心、柔らかさを取り戻すことなのかもしれません。
ただ、こうした小さな変化は、自分でも気づきにくいものです。そこで朝礼では、振り返りと言語化の大切さにも話が広がりました。
以前の自分と比べ、どんな場面で、どのような反応をしたのかを振り返る。そして、そこで感じた変化を言葉にするために、読書などの良質なインプットを通して表現の幅を広げる。
まだうまく言葉にできなくても、「前と何かが違う」と感じることが、自分の変化を確かめる最初の一歩になります。
人生を動かす、わずかな重心の違い
一方で、人はいつも時間をかけて変わっていくとは限りません。とっさにどちらへ進むかという選択が、その後を分ける瞬間もあります。
朝礼の後半で幸田さんは、元プロボクサーの畑山隆則さんが高校卒業後、新聞配達をしながらボクサーを目指していた頃の、広く知られているエピソードを紹介しました。
ある雨の日、畑山さんが、かごに大量の新聞を積んだ自転車で配達していたときのこと。お宅に新聞を届けて道路に戻ると、自転車が転倒し、これから配るはずだった新聞が水たまりに落ちていたそうです。
大量の新聞が水浸しになった光景を前に、畑山さんは(これはやばい……)と逃げたい気持ちが湧き、身体の重心が後ろに動きかけたのだとか。想像するだけで、自分も後退りしそうなシーンだと感じました……。
しかし、畑山さんはその重心をぐっと前へ戻し、濡れた新聞を各家庭へ配ったといいます。営業所には多くのクレームが寄せられましたが、周囲の大人たちが対応し、新聞配達を続けることができました。
畑山さんは後に、あのとき後ろを向いて逃げていたら、今の自分はなかったと語っています。
幸田さんがこのエピソードに見出したのは、人生を変える選択が、必ずしも華々しい決断として現れるわけではないということです。
目の前の出来事から逃げたくなったとき、重心を後ろに置くのか、それとも前へ戻すのか。そのわずかな違いが、後から振り返ると、人生の大きな分岐点になっていることがあるのだと話しました。
もちろん、どのような状況でも無理に前へ進むべきだという話ではありません。自分にとって重要な局面を見極め、恐れや迷いだけを理由に選択肢を捨てないこと。その一歩から始まる変化もあるのです。
変化の先で、自分の強みを生かす
この日は、メンバーの成長や、それぞれが持つ強みについても話が広がりました。
物事を論理的に考え、戦略を組み立てることが得意な人。前に立つ人が力を発揮できるよう、仕組みや環境を整え、後方から支えることに喜びを感じる人。
同じ組織にいても、力の発揮の仕方は一人ひとり異なります。幸田さんは、各人を決まった型にはめるのではなく、それぞれが本来持つ思考の特性や強みを発揮できる環境をつくることが大切だと話しました。
組織では、前に立つ人が注目される傾向があります。しかし、その人の力を引き出す人や、物事が円滑に進むよう基盤をつくる人も欠かせません。
また、特性や強みについては、自分では意識していなかった特徴を周囲から伝えられ、初めて「自分はこれが得意なんだ」「この分野で貢献できるのか」などと発見するケースもあります。皆さんにも経験はありませんか?
朝礼では、自信のないことにも一歩を踏み出せるようになった人や、以前なら自分のなかにとどめていた思いを、言葉にして伝えられるようになった人の成長も語られました。
自分がどのように変わってきたのか。そして、どのような場面で自然に力を発揮できるのか。周囲との対話を通してそれらを知り、自分自身の持ち味を生かせるようになることも、成長の一つなのだと思います。

(編集後記)
皆さんのお話を聞きながら、私自身も最近、これまで担ってきた役割や習慣、自分のなかに染みついた反応を手放す過程にいるのだと気づきました。変わるとは、何かを加えることだけではなく、自分を軽くしながら、本来の自分に戻っていくことでもある。まだ変化の途中にいるからこそ、日々の小さな違いを見つめていきたいと思います。
Text/池田園子