1
/
5

ロントラ株式会社動画を起点に、社会課題を解決したいーー「動画のスタートアップ企業」ロントラの野望

ロントラ株式会社は、ドキュメンタリーを中心として多くのテレビ番組を制作してきました。並行してVR映像など、新たな分野を開拓しています。代表の西村佳之は、広告・出版業界からテレビ業界へ転身した異色の経歴の持ち主。今回は西村が自身のキャリアをもとに、独自の方針で会社を築いた軌跡をご紹介します。


広告業界からADへーー“映像で伝える側”を選んだ25歳の転職

私がテレビ業界に入ったのは、学生時代にアルバイトをしていたテレビカメラマンのアシスタント経験がきっかけでした。アシスタントとして野球中継や政治家への取材、事件現場などさまざまな仕事に同行しましたが、中でも特に印象に残っている現場があります。

それは1995年の1月に起きた、阪神・淡路大震災です。

震災後、被災地を訪れたときに目に入ったのは、倒壊した建物や地割れした道路……本当に起きたことなのか信じがたい衝撃を受けました。

世の中で起きていることを直視し、それを視聴者に伝えるという役割をマスメディアは担っているーー伝える側の人間が持つべき心構えを、まだ学生だった私が感じ取った瞬間だったと思います。

しかし大学卒業後はテレビ業界に進まず、学生時代に所属していた広告研究会での縁で広告・出版社に入社。

この会社は社員一人ひとりが大変優秀で、仕事のスピードが早く刺激を受けました。また目標設定が明確で、目標を達成することの大切さを社会人のスタート時に体感できたことは、自分の礎になっていると感じます。ここで営業、編集、広告、企画と幅広く担当させてもらいました。

働いて3年が経ち、将来のことをあらためて考える機会がありました。そのときに出てきた選択肢は、ずっと気になっていた「映像業界への道に進むこと」でした。ジャーナリストのような、学生時代に経験した“社会の現実を伝える側”にもう一度立ちたいと思ったんです。

そこで私は、テレビの制作会社への転職を決意します。安定した企業の会社員から、ADへの転身。「テレビ制作会社は過酷だからやめた方がいい」と周りから反対されましたが、当時の年齢は25歳。ゼロからはじめてもギリギリ間に合う年齢だと思っていました。

周りのスタッフと比べてスタートが遅れたけれど、なるべく早く追いつこうーー転職した私は、そんな気概で仕事に臨みました。

裁量を持ち、自由に番組をつくるために起業を選ぶ

番組づくりはとにかく手間がかかります。ADの仕事は、覚悟していた通り大変なものでした。撮影の許可取りやロケハン、テロップ原稿作成などディレクターの補佐業務に追われる毎日。長時間労働は当たり前、週に3回ほどしか家に帰れない日々が続きました。

そんな状況でスタッフは誰しも、「どうせ帰れないから」と時間を潰すように仕事をしていたと思います。業界ならではのこういう慣習に違和感を持った私は、効率的な働き方を考えるようになりました。

せっかく長時間会社にいるなら、たくさん仕事をしよう。そうしたら結果的に早くAD期間を終え、ディレクターの仕事ができると思いました。早めに仕事を終わらせ、次に取り掛かる。それを繰り返していたら、大事な仕事を任されることが多くなっていったんです。

通常ディレクターになるには3〜5年かかると言われていましたが、運よく入社から2年でチャンスをもらえました。いきなりゴールデンの特番の編集を任されたんです。

初めてディレクターとして編集している時間は、まさしく寝食を忘れるくらい楽しいものでした。以降ディレクターとして仕事をさせてもらうようになりましたが、あのときの楽しい感情は今も鮮明に残っています。

その後も経験を積み、フリーランスへ転身。ディレクターと構成作家の仕事を請け負うようになりました。

当時は旅番組から報道番組、CMまでなんでも担当していました。仕事をすればするほど収入につながるフリーランスはやりがいがあり、売れっ子気分も味わうことができました。

ただ、フリーランスの仕事は基本的に受け身のスタイルです。自分がどんな番組をつくりたいかではなく、クライアントがどんなものをつくりたいのかを聞き取り、仕事に反映させることが優先されます。

働くうちに、自ら企画して発信する側になることが自分の中の課題となっていきました。

2011年、私は起業を決意しました。信頼できる自分のチームをつくり、制作するものにブランド力をつけたいと考えたのが大きな理由です。そうすることが、いずれ自社発の企画を立ち上げていくことの土台になります。

まずは自宅の一室でのスタートでしたが、フリーランス時代のクライアントたちが仕事を次々に発注してくださり、半年後には恵比寿に事務所を構えることができました。

そこで求人募集を出し、スタッフを増やすことにします。しかし長年フリーランスとして働いてきた私は、組織を束ねて働くことの大変さに当時は気づいていませんでした。

プロ意識を持たせるため、社員たちには早くから成功体験を積ませた

早速2名のスタッフを採用しましたが、その後はスタッフが入社してもなかなか定着せず、中には1週間で辞めてしまう社員もいました。しかし当時の私は、「その程度の気持ちなら、この先もやっていけないだろうから辞めればいい」くらいに思っていたんです。

そんな中でも次々と仕事が舞い込み、当時の人数では抱えきれないほどの受注量になっていきました。そのとき「やり方を見直さなければいけない」と、やっと自分の間違いに気づきます。法人登記したところで、本物の会社にはなっていません。会社にとって最も大切な「人が定着する組織」にする必要がありました。

組織には社員のモチベーションを引き上げるシステムが必要だと思い、若手でも早いうちからいろんな経験をしてもらうようにしました。

テレビ業界はディレクターになるまでの壁が高く、成功体験が積みにくいと感じていたからです。日々のAD業務に忙殺されて、自分は何がしたくて入社したのかだんだんわからなくなる。そんな人も少なくありません。

そこで新人にもインタビューをひとりでさせてみるなど、本来ディレクターがする仕事の一部を早くから任せてみました。すると少しずつ、新人でもいいカットやコメントを撮ってくるように。任せれば任せるほど、どんどん実力をつけていく様を目撃できたのです。

早い段階で成功体験を積むことで、「次はこうしよう」と、仕事に対して高い意識を持てるようになります。みんなの頑張りによって、会社で抱えられる仕事の領域も徐々に増えていきました。

社会課題の解決策を提示できるコンサルタントになりたい

2018年で社員は30名近くなり、会社としての制作実績を積み上げてきたロントラは、数年前から「Move people」という企業理念を掲げています。

「move」という英語には「感動させる」という意味があります。企業理念に掲げたのは、人々の心を動かす動画を創ろうという目標です。

クリエイターは自己満足で終わってはいけないと思います。誰に何を伝える動画なのか?を考え抜くこと。「人々とコミュニケーションを図るために動画を制作している」という立ち位置を明確にしたうえで、心に届く動画づくりを極めたい。そこで初めて、私たちの存在意義が生まれると思っています。

そして今後重視したいのが、「社会課題と向き合うこと」「発信力のある会社になること」、この2つです。

近年力を入れているのが、動画をコミュニケーションツールとした地方創生事業です。地方の人口減少は日本が抱える課題のひとつ。ロントラには地方出身の社員がたくさんおり、みんな自分のふるさとのことが好きです。ならば、それぞれが自分のふるさとを活性化するために、何ができるかを考えようと。それがこの事業の発端です。

社会課題を他人事ではなく自分事として考えることで、人の心に触れる動画制作につながればいいなと思っています。

発信力という点では、近年注目されているVR分野にも参入しています。まずは、「360°MOVIES」 という、VR動画サービスをスタート。通常の映像とは違い、VRの場合はその場にいるかのような「没入体験」ができます。この特徴を使って地方創生事業で活用していますが、360°MOVIESを効果的に使いながら、今後はTV番組制作で培った企画力を活かした新たなサービスの提供も考えています。

今後は動画を起点に、企業と消費者を結ぶコミュニケーションや社会課題を解決するためのソリューションを提示できる動画コンサルタントとして、事業を展開したいと考えています。

蓄積したノウハウをもとに、ロントラは動画のスタートアップ企業として、これからも最適解を提供し続けていきます。

ロントラ株式会社では一緒に働く仲間を募集しています
同じタグの記事
今週のランキング