“医師向けコミュニティサイト「MedPeer」は、唯一無二のコンテンツになれる――”
執行役員としてメドピアの成長を牽引する天坊は、インタビューの中でこう語りました。上場前からメドピアに参画し、サービスを軌道に乗せた彼の言葉には、夢物語ではない本気が伺えます。
特に製薬企業向け事業開発に携わる天坊に、製薬業界を取り巻く環境の変化や、MedPeerが果たす役割、MedPeerが描く大きな未来図について語っていただきました。
大きな変化のうねり真っ只中にいる製薬業界
天坊吉彦(てんぼうよしひこ)
執行役員
1999年に慶應義塾大学経済学部卒業後、プライスウォーターハウスコンサルタント(現日本IBM)に入社。以来15年間にわたり経営戦略コンサルティングに従事。業務戦略コンサルティングチームのリーダーとして、製造業や流通業を中心に、営業改革やグローバルオペレーション構築、IT戦略策定など多数のプロジェクトをリード。2014年2月に当社に入社し、製薬企業向けマーケティング支援部門のセールス担当、「MedPeer」の運営責任者、事業開発部門の部長を経て、2018年5月に執行役員に就任。
ーーはじめに、天坊さんが管掌されている事業について教えていただけますか?
天坊:メドピアには大きく分けて、医師向けコミュニティサイト「MedPeer」のプラットフォームを基盤に医師や医療現場を支援する「ドクタープラットフォーム事業」と、健康増進・予防などのコンシューマー向けのヘルスケア支援を行う「ヘルスケアソリューション事業」の2つの事業があります。
私が管掌するのは前者であり、中でも製薬企業をはじめとした、クライアントの医師に対するマーケティング支援に携わっています。
ーー天坊さんから見て、ヘルスケア、とくにドクタープラットフォーム事業を取り巻く環境はどう変わってきていると感じますか。
天坊:ヘルスケア業界は数少ない成長産業という期待感もあり、大手からベンチャーまで新規参入を狙った動きが活発化しています。それぞれの技術力を強みにヘルスケアを変革しようと、本当に多種多様なプレイヤーが出てきていると感じます。その中でも医師や製薬企業がヘルスケア業界のキープレイヤーであることは間違いなく、当社がその繋ぎ役にならなくてはと思います。
製薬業界ではMRによる訪問営業を中心とした従来からのプロモーションに変革が求められています。多くのクライアントでMRの生産性向上や役割そのものの再定義を図る動きが活発化しています。また、情報の受け手である医師側も働き方改革で時間の使い方を見直そうとしており、デジタルサービスの活用が企業・医師双方にとってのキーワードとなっています。
規制産業という側面もあり、一般的にはできることが制限されるイメージが強くありますが、新型コロナウイルス感染症の拡大が社会問題化する中、遠隔医療の進展が期待されるなど、2020年は大きな変化の年になるかもしれませんね。
ーーマーケティングの視点から、「製薬企業のマーケティング活動」はどのように変化していくのでしょうか。
天坊:「MedPeer」サイトを運営していてつくづく感じましたが、医師の世界は専門分化・細分化が進んでいます。例えば、医師は30万人以上といわれますが、そのうちの皮膚科医は9千人程度です。そして、一口に皮膚疾患といっても、アトピー性皮膚炎のような慢性疾患から、皮膚がん、さらには一般には名前も知られていない稀少疾患まで様々な疾患があります。医学研究が進むにつれて、皮膚科医といえども、そのすべてをカバーすることが難しくなり、専門分化が必然の流れになっています。
それに加え、従来の医薬品市場は糖尿病や高血圧症など、患者数が多い疾患に関する薬が中心で、幅広いターゲットに対するマーケティングが求められていました。一方で、研究開発が進み様々な治療薬がうまれた結果、これまでのようないわゆるマスマーケティングとは異なる、医師それぞれの専門分野や思考に合わせたきめ細かなアプローチが求められるようになっていくと思います。
“患者を救う”-そのミッションのもとで医師と製薬企業の橋渡しとなる
ーー医師と製薬企業をつなげる場としても『MedPeer』は存在するのですね。
天坊:そうであると信じています。日々、医師と接している製薬企業にとっても、一人一人が高度に専門家である医師へのマーケティングは容易ではありません。
いくら製薬企業が一生懸命に薬のアピールをしても、処方するかどうかの意思決定は、医師同士の情報交換に大きく左右されます。製薬企業のMRが医局内に入り込めていた時代と違い、今は医師との面会制限も強まってきています。製薬企業にとっては医師がどこでどのような情報を得ているのか、不透明性が格段に増してきている中で、それぞれの医師の状況を把握し、必要な情報と、その提供手段をもカスタマイズしていくことが求められているのです。
だからこそMedPeerは、医師だけでなく、製薬企業にとっても一番近い存在として、医師の行動や、本音を共有する存在でありたいと考えています。
天坊:そして、製薬企業と医師の距離を縮めることそのものが、弊社の掲げる“Supporting doctors, Helping patients”につながると信じています。患者のために開発した薬が、きちんと医師に届くことではじめて、患者を救うことができるからです。
医薬品は人々が健やかな暮らしを送るために必要不可欠なものですからね。
ーー患者を救うこと。それが、今の仕事のやりがいにもつながっているのですね。
天坊:はい。医師の方々にお会いする度に、「この先生を支援すれば、患者さんを救えるんだ」としみじみと感じます。そして医師という職でなくとも、メドピアの事業に関わることで、間接的に誰かの命を救うことができる。いわば「命を預かる仕事」とも言えますから、責任は大きいですが、その分大きなやりがいを感じています。
「MedPeer」が医療業界で最も必要なサービスとなるために
ーーヘルスケア事業を展開する企業は増えてきていますが、その中でもメドピアはどのような存在になっていきたいですか?
天坊:MedPeerの強みは、「医師の3人に1人」が所属するコミュニティサイトであり、安心して健全で建設的な意見交換をしていただけることにあります。この強みを活かして、メドピアは、医師の本音、考え方を誰よりも分かっている存在であり続けたいと思っています。
先ほど「医師の世界が細分化している」と話したように、医師に届けるべき情報量が膨大となっている中、医師それぞれの専門分野や思考に合わせた情報提供を一つの企業が全て行うことは難しくなっています。また、細分化されたごく一部の専門性が高い情報には非常に高い価値はあるものの、それだけではビジネスとして大きく育てることは難しい。
医師のことを誰よりも分かっているMedPeerを活用し、製薬企業が届けたい情報を適切なタイミングで必要とする医師に届けるとともに、医師の本音や考え方を製薬企業にフィードバックすることで、医師にとっても、製薬企業にとっても付加価値の高い事業に成長していけると思っています。
ーーさらにMedPeerのサービスを向上させるための課題はありますか?
天坊:メンバー一人ひとりが、今以上に医療への理解を深める必要があると思っています。独自のコミュニティを盛り上げていくためにも、事業サイドの者からエンジニアまで、医師の方と同じ目線で医療業界について語れるようになりたいですね。
幸いにも、メドピアには代表の石見をはじめ多くの医師が関与して下さっていて、社内でも気軽に話しかけられる存在です。MedPeerのサイトには医師の本音が溢れていますし、リサーチをすれば何千もの回答が1日で集まります。医療に興味を持ってさえいれば、どんどん理解が深まっていく環境にあります。
ーーたくさんの期待を背負い、いよいよここからが正念場ですね。
天坊:自分で言うのは厚かましいかもしれませんが、周囲の期待をひしひしと感じています。クライアントからはいつも「メドピアらしいサービス、メドピアならではのサービスにしてほしい」と声をかけていただいています。その期待に応えるべく、メドピアの強みを伸ばし、医師にとって「MedPeerを見ないと診療できない」ようなサービスを創りたいと考えています。
医療情報の高度化・細分化と、プラットフォームとしての規模、その両立ができているメディアはまだないと思っていますが、「MedPeer」はその唯一無二のメディアになれると思っています。
多様なメンバーとともに、新たな価値を創出しチャンスを掴みたい
ーー天坊さん自身は、メドピアにどう貢献していきたいですか。
天坊:営業やプロジェクトを通じてクライアントの課題を理解し、ともに解決策を考えていきたいと思っています。
クライアントのことを知れば知るほど、当たり前ですが、既存のサービスで応えられない課題がたくさん出てきます。しかし僕は、それがビジネスチャンスだと思っているんです。どうMedPeerを変えたらよいか、どういうプレイヤーを巻き込んだらよいか——そういう発想から新たなサービス、事業を創っていけたらと考えています。
一方で、事業開発のアプローチは様々で、新しい技術分野に強い人、海外の動向に明るい人、M&Aなどの交渉を得意とする人、どんな職種でもそれぞれのやり方で貢献することが出来ると思います。実際、今活躍しているメンバーのバックグラウンドも様々ですからね。
ーー今あらためて感じる、メドピアの仕事の魅力は何だと思いますか。
天坊:私の場合、入社後1年間は広告営業を担当し、翌年は「MedPeer」の運営責任者を務めました。しかし、入社前は外資系の戦略コンサルタントという全くの異業種だったこともあり、責任者とはいえ、医療・ヘルスケア業界はもちろん、Webサービスの知見はゼロに等しい状態。案の定、何をしたらいいのか分からず戸惑うばかりの毎日でした。
いま振り返ると、メドピアで働くことの面白さを感じることができたのは、この1年間の経験が大きかったと思います。コンサルティングファームでは、会社のどこを切り取っても「コンサルタント」しかいませんが、ここにはエンジニアやデザイナー、Webプロデューサーなど、様々な経験、専門性、志向性をもった人がいます。
ともすると会話もかみ合わないくらいの違いがある仲間たちですが、これが一緒になることで新たな発想が生まれ、そしてWebサービスやアプリといったモノづくりができる。決して自分一人ではできないモノづくりを目の当たりにする度に、メドピアでの仕事の面白さと、これからの可能性を感じられています。
ーー最後になりますが、これから再び成長期を迎えるメドピア一緒に働く仲間に期待したいことはありますか。
天坊:色々ありますが、「なんでもやる気質」でしょうか。活躍しているメドピアのメンバーはそういう方が多いですね。サービス開発・事業開発の経験者ばかりがプロジェクトをリードするわけではありません。当然、得手不得手はあるし、すべての企画やプロジェクトマネジメントが完璧とはいきません。リーダー任せにせず、自分自身が役割を限定することなく、「事業・ビジョンの成功に向けて、足りないことはすべてやる」くらいの気持ちで臨まないとうまくいかないことも数多くあります。逆説的ですが、そういうスタンスで臨めば、結果として仕事も楽しめるし、自分も成長できるのではないかと思います。
メドピアは、まさにチャンスを掴んでいるタイミングだと思っています。もちろん簡単なことは何一つない。そればかりか、毎日起こる様々な変化が新たな困難をもたらしてきます。苦しい時こそ笑いながら鼓舞しあって、乗り越えていき、大きな事業成長を実現していきたいですね。