企画書、見せます。 マーベル採用ブランディング。
広告関係の仕事をしていると、良いCMやキャッチコピーに触れた時、人一倍感動したあとに、こんなことを思います。
「どうやってこの企画を通したんだろう」
「どんな思考を経て作られたんだろう」
広告とはいわば商業芸術。クライアントの抱える課題が伝えたい想いがあり、その解決のために企画・デザインを考え、プレゼンやコンペで採択されて初めて、実現されるもの。でも私たちが触れるのは、最終的なアウトプットだけ。作り手としては企画・制作過程が、気になるところではないでしょうか。つまりは「色んな企画の提案書が見たい!」ということです。たぶん、同じことを思っているクリエイターは、めちゃくちゃいると思います。
そこで今回は、モノリスジャパンが過去に提案した企画書を一部公開しながら、提案が実際の広告となるまでを紹介したいと思います。私たちが何を考え、どのようにお客様と向き合っているのか、少しはわかっていただけるかと思います。
ちなみに、今回ご紹介する案件は制作の2トップであるCDとADが手を動かした案件で、平社員の私が紹介する以上、多少の忖度を感じるかもしれませんが、そこは社会人の皆さんならご理解いただけるかと思いますので、許してください。
“「プレゼン」は知のプレゼントである。”
与件の整理
クライアント:株式会社 マーベル様
マーベルは、創業から80年以上の歴史を持つ老舗工具メーカーであり、国内トップクラスのシェアを誇る製品も展開されています。業界内での認知度も十分にある企業です。今回のご依頼はそのような企業の「採用プロモーション」でした。お題・課題としては、「より多くの学生に、工具づくり、営業の楽しさ・やりがいを伝えることでナビサイトのエントリー数を増やしたい」というものでした。
BtoBという業態もさることながら、大学生が日常の中であまり触れることがない「工具」という商品。母集団形成が難しい業界で、どのように大学生に興味を持ってもらうか。やりがいをイメージさせるかが、今回の提案の命題でした。
“立場を変えて発想する”
提案コンセプト
課題に対する解決策として弊社が着目したのは、「工具」そのものではなく、「工具によって作られるもの」という視点でした。
ヒアリングでは、マーベル様の工具は、鉄塔の組み立てや電柱の設置、マンション建設など、暮らしを支えるものを生み出すツールであることを伺いました。つまり、学生とマーベルの接点は、工具ではなく、その先にあるもの、ということです。
中学生の頃、僕にはコバヤシくんという大層つまらない友だちがいました。そんな彼から「エッフェル塔をつくったのは誰でしょう?」というクイズを出されました。世界史が苦手な僕が「ルイ7世」と答えると、コバヤシくんは満面の笑みで「答えは大工さんでした~~」と仰っていました。そのときは不快感しかありませんでしたが、これは案外、屁理屈ではないと思います。
マーベルの工具は、『暮らしを支える住居やインフラを生み出している』。その社会的な意義は、学生にとってもわかりやすく、かつダイナミックなインパクトを与えるものです。この考え方をもとに、「この仕事にも、マーベル。」というコンセプトを置き、キャッチフレーズやデザインの表現を検討していきました。
キャッチフレーズ
マーベルの工具は、それこそ片手で扱える小さなものもあります。しかしそれが、社会的に大きな役割を持つ建造物を生み出している。ひいては、この社会全体を支える、スケールの大きな仕事である。そんなことを表現したフレーズを中心に据え、採用ツールをご提案しました。
メインビジュアル
メインビジュアル、あえて工具を見せないものを含めて複数パターンでご提案。このうち、中央のキャッチフレーズをロゴ化したビジュアルが採択されました。
ユーザーVoiceリーフレット
採用プロモーションでは、よく「若手社員の声」のようなコンテンツが見受けられます。入社してからのイメージを膨らませたり、仕事のやりがいを伝えたりするアプローチ方法です。しかしこのリーフレットでは、「Small tool, Big job」を伝えるために、工具のユーザーの声を集めることにしました。
“説得してはいけない。納得していただく”
採用ポスター
ご依頼にはありませんでしたが、リーフレット制作の際に撮影した現場でのユーザーの方々のリアルな写真を活用してシリーズポスターを自主提案し、こちらも採択いただきました。
工具でもなく、マーベルでもなく、あくまで「その先」を見せることにこだわったポスター。工具のユーザーの言葉を用いたコピーと、工事現場の写真を組み合わせたビジュアルで、「Big job」を強く印象付けています。
これらのほかに動画プロモーションなども展開した採用活動は順調に進み、結果も上々だったとお伺いしました。
特設ブランディングサイト
その後、今回のプロモーションを通して築いた世界観は、採用としてだけでなく、企業としての在り方だというご判断のもと、「Small tool, Big job.」を用いたLPサイトの制作をご依頼いただきました。
こちらがファーストビュー。メインビジュアルはカルーセルになっていて、展開したシリーズポスターのビジュアルが出てきます。
新卒採用のプロモーションは、改めてその企業の魅力を問い直す契機になります。クライアントと代理店が、提案書を通じて意見を交換するなかで、クライアント自身がストロングポイントに初めて気が付くケースも多々あります。それらをアウトプットすることは、学生の志望動機だけでなく、そこで働く社員の皆様のやりがいや誇りにもつながると思います。
“ちゃんと熱意を伝えられるか”
やっぱり提案書っておもしろいですね。
採用ブランディングから、企業ブランディングへ。この流れは、決して珍しいことではないかもしれません。ただ、見た目だけを整えたデザインやありふれた企画を提案しただけでは、この流れは生まれないと思います。この記事を書くために改めて提案書を読み直しましたが、弊社のCDとADの熱意が垣間見えて、良い機会になりました。
モノリスジャパンは、毎日何らかの案件が飛び交う職場です。僕もプランナーとして毎日何らかの提案書をつくっています。同じように働きたい人がいればぜひ、会社ページなり募集ページなりに飛んでくださいな。いろいろな職種で募集していますが、個人的には京都のデザイナーの応募を強くお待ちしています。
※やけに格好いい見出しについては、CDの愛読書「一つ上のプレゼン」から引用させていただきました。