中国では、ここ数年で一気にモバイル決済が広まり、キャッシュレス社会になっています。牽引役となったのが、WeChat PayとAlipayで、両社の取引額は約320兆円(2016年)にも上ります。
今回は、8億人の利用者数を誇るWeChat Payに焦点を当てて、QRコード決済が普及した理由を見ていきたいと思います。
すべての始まりは、チャットツール
WeChat Payを提供するTencentの創業は、1998年。1999年にリリースしたメッセージサービス「QQ」を機に、飛躍的な成長を続けています。
QQは、SkypeやMicrosoftメッセンジャーと同じパソコン向けのチャットツールです。QQアカウントさえあればどこでも送受信できる利便性が支持され、10年間で10億アカウントを突破。まさに、爆発的な広がりをみせました。
スマートフォン時代に突入したのに合わせて、2011年には「WeChat」と投入。パソコンとスマホ両方でユーザーを獲得し、チャットツールとして圧倒的な地位を確立しました。
さらに、2013年には決済サービス「WeChat Pay」をスタート。はじめはゲーム、動画など自社で配信している有料コンテンツの支払いのために開発されたものでした。
その後、ユーザー同士が気軽に送金しあえる「ソーシャル決済サービス」や、QRコードで実店舗での買い物ができる「Quick Pay」「QRコード決済」など、新しい機能を続々とリリース。現在では、5つの決済メニューがあります。
こうした施策や技術面での改善が功を奏し、2018年1月現在でWeChatの月間アクセスは10億人を超えるまでになりました。また創業から20年で、株式時価総額はFacebookを抜いて世界第5位、アジアでは第1位となっています。
SDKで新サービスの開発も簡単に
WeChat Payが普及した理由のひとつが、外部企業から選ばれたことです。
実はWeChat では、SDK(ソフトウエア開発キット)を提供しています。これにより、決済機能をはじめ、公式アカウント、送金、EC、コンテンツを自社サービスに簡単に組み込むことができます。
さらに、WeChatで使えるミニプログラムのインターフェイスも提供。AIを活用した顔認証、翻訳、OCR、画像識別など最先端の機能も利用できます。
つまり外部企業にとっては、WeChatアカウントの紐付けを前提にビジネスモデルを設計したりサービスをつくることで、
・WeChatの莫大な顧客基盤を利用できる
・開発スピードを早め、サービスを短期間でリリースできる
・開発のコストを大幅に抑えることができる
…というメリットが生まれるのです。
QRコードを活用したサービスが続々と登場
ビジネスの展開に必要なサービスがすべて、WeChatというプラットフォームで提供されているということは、仕組みづくりにリソースを割く必要がないということです。
必然的に、中国企業はサービスの企画やマーケティングに注力でき、斬新なサービスが登場しやすい土壌ができあがるというわけです。
ここではQRコード決済により生まれた新しいサービスを3つ、ご紹介したいと思います。
(1)シェアサイクル
中国の都市部では、自転車のシェアサービスが急激に普及していて、その数は2500万台以上にもなると見られています。
シェアサイクルの利用は、とても簡単。自転車に貼られているQRコードをスマホで読み取れば、ロックが解除されます。あとは利用時間に応じて、レンタル料が自動で差し引かれます。
(2)無人コンビニ
2016年にスタートアップ企業「Bingo Box」が完全無人のコンビニ展開をはじめ、半年で300店舗出店しました。
WeChat PayかAlipayのQRコードをスキャンして入店、商品につけられたICタグを読み取って精算。支払いが完了するとドアが解錠されて外に出られる仕組みです。
WeChat PayもAlipayも実名登録が必須なため、入店時に本人確認することで万引きを防ぐことができます。
(3)自動販売機
中国ではこれまで、セキュリティ上の問題から、自動販売機が普及しませんでした。支払い方法がキャッシュレスになったことにより、防犯上の不安がなくなり、また開発コストが下がったため、街中では自動販売機が急増しています。
単に支払いを便利にするだけでなく、人々の生活を大きく変えるQRコード決済。きっと日本でも、これまでにない新しいサービスがどんどん生まれることでしょう。
日本の未来をつくる仕事っておもしろそう!
そんな風に思っていただけたら、ぜひ一度、ご連絡ください。あなたにお会いして、お話しできるのを楽しみにしています。