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会社が個人を縛り付ける時代は終わった。これからは、個人が仕事を求めて、チャンネルのように会社を切り替えていく。

創業メンバーが他社へ。それは決して、悲劇じゃない。

創業メンバーとして、2年間にわたってNEWPEACEのエンジニアリングを支えていた、フウタという人間がDMMへ行った。本人曰く、グループ全体の次世代基盤となる統一プラットフォーム「DMM.core」を創るプロジェクトで、データセンターレベルのインフラストラクチャーから全社員が毎日利用するような業務効率化アプリケーションまで開発するらしい。最初は「もっとインフラレベルからのエンジニアリングを極めたいので、週2日ほど行かせてもらえないか?」という相談だった。ただ、元々テック系の編集者くらいの感じだった彼は、仕事するうちに、エンジニアとして大きく成長し、それでは飽き足らず次なるジャンプの機会を求めていた。だから、中途半端な関わりだとチャンスを逃してしまう可能性が高いから、週5フルコミットで全力でやってこい、そう背中を押した。(NEWPEACEはリモートや休日にこれまで通り仕事を続けることになった)

この話をすると、「え、なんで行かせたの?」「もったいなくない?」「思い切ったね、、」と経営者の友人は僕に言った。確かに、もったいない。なにせ最初からいるメンバーだし、彼しか担当できないことも多い。企業文化の語り部だ。スキルに基づいた役割は代替きくが、文化は人に宿るから替えがきかない。それでもそれは所詮、会社側の論理でしかない。アイツの立場になって考えれば、若いうちに好奇心に従って未知なる環境にダイブしたほうがいいのだ。もし説得して引き止めても、僕らの仕事にデータセンターからの開発機会を用意できない限り、何か引っかかり続けるだろう。そして微妙な感じで辞めていくことになるのは目に見えている。そうなってしまっては、柔らかな関係性という選択肢もなくなってしまう。

これはフウタに限った話ではないし、NEWPEACEに特別な問題でもない。どこの会社も人も同じような悩みを抱えているはずだ。だが、経営者やマネージャーはここで考えを改めなければならない。会社はもう個人を縛り付けるような人生のインフラではないのだ。むしろインターネットなどによってあらゆる機会が民主化する中では、個人のほうが力を持つ。会社は、なにか仕事をする上での機会を提供する1つの選択肢でしかない。個人はその人生の中で、仕事を求めて、チャンネルのように会社を切り替えていくようになるだろう。仮に同時に2-3社で何かしら仕事をして、20歳から70歳まで働くとすれば3年ごとに仕事を変えるとしたら、トータル「50社」近い会社を経験することになる。これは例えだが、決してありえない数字ではない。全経験を1社に捧げることによって人生プランを設計した時代から見れば、信じられないかもしれないが、これが新しい当たり前なのだ。


個人も、会社も、その概念から変わっていく。

ついでに言うと、そもそも個人という考え方も古い。作家の平野啓一郎さんが提案しているように、人間は決して唯一無二の「(分割不可能な)個人 individual」ではない。複数の「(分割可能な)dividual=分人」である。つまり人間は「分けられる」し、対人関係や場所などに応じていろいろな自分になれる。戦後のムラ社会とは違って、現代は驚くほどに変化も機会も多い。ネットによっていろんなコミュニティにいるのも当たり前。だから本当の自分なんて無く、色々な自分が同時に共存し、状況に合わせて変化していくのが自然だ。個人から分人へ。会社はその事実を認識することから始めなければならない。そして経営者はきっと、各メンバーのそれぞれの分人とどう会社が付き合っていくのが両者が幸せになれる関係性なのか、を判断しなければならなくなる。それはきっとポストや給与を与えるよりも重要なことだと思う。

そして会社の考え方も更新されなければならない。会社はcompanyというが、companyの語源は、「ともに(com)パン(panis)を食べる仲間(y)」。つまり、食事など何か一緒に行動する仲間や集団。昔は仕事しないと生活できなかったのだろうが、今の時代はちょっとくらい働かなくても食べるものには困らない。さらに今後ベーシックインカムなど導入され、仕事しなくても生きてはいける社会になるだろう。そうすると別の目的が必要になる。だから会社はcompanyとしてあり続けるために、集うメンバーに対してなにか別の「機会」を用意しないといけない。プロジェクトなのか役割なのか。NEWPEACEの場合は「VISIONING」という独自の仕事領域がそれに当たるだろう。これからの会社は、生きがいにつながる社会的目的を感じられる「機会」をどれだけ用意できるかが、競争力であり、ブランドになる。逆に言うと、飯を食うための仕事しか用意できない会社は死ぬしかないのだ。

個人と会社との関係性が変わりはじめている。クリエイターというビジネスモデルを超えたバリューを手にした存在から始まっているが、数年のうちに社会全体へと広がっていくだろう。もちろん、法律も追いついてないし、価値観もまだ古いイメージのままだから、いろんな形で歪みが出るだろう。しかし確実に、アーキテクチャから変形してしまっている。好むと好まざると関わらず。ぼくらは過去の成功体験を忘れて、一人の人間としてゼロベースで思考し続けるしかない。


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