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居場所づくりをしたい人が、居場所を求めている件

「若い子たちが明るく輝ける場所をつくりたいです」
「生きづらさを感じる子ども達が、伸び伸びと活動できる居場所づくりを支援したいです」
という理由で、学生寮スタッフに転職しようとする方は少なくありません。

この言葉が本当であるならば、その考えは本当に素晴らしいと思います。


しかし、話をよくよく聞いてみると、「是が非でも、一刻も早く行動したい!」というほどの強い動機が感じられないケースが少なくありません。

信念をもって居場所づくりの活動をしていきたいのであれば、プライベートの中で、関連する取り組みの情報を集めたり、具体的な方策を考えてみたり、場合によっては実際にテスト的に動いてみたりということが可能なはずです。

ところが、どうもそのような具体的なアクションもなく、言葉が上滑りしている印象で、フワッとした気持ちで応募しているというケースがあるのです。


居場所づくりとは何なのか

そもそも「居場所づくり」とは何なのでしょうか。

人によって捉え方は様々かもしれませんが、「その人個人に与えられた役割と、その人の能力が発揮できる場がマッチングする機会をつくること」と定義できそうです。


しかし、人材募集がメインとなるサイトでこういうことを言ってしまって申し訳無いのですが、若いうちから役割と能力が完全にマッチングすることは、残念ながらそう多くありません。

その原因は、職業のマッチングが適切に行われていないから……ではありません。


一番の問題は、その人自身の知っている世界が狭すぎることです。


知っている世界が狭すぎるので、自分の能力や適性の見極めが十分できません。

みなさんも自分を振り返ってみて気付くことがあると思います。

過去を振り返って「自分のやりたいこと」と思ったものも、あとで振り返ったときに真の意味でやりたいことではなかった……ということです。

狭い範囲の選択肢の中で形成されたものであって、大人の自分からみて本当にやりたいことではなかったと気付くことも多いでしょう。


過去の一時点で自分のやりたいことと思ったものと、周囲からの評価に落差があったかもしれません。

そのようなとき、本人が周囲の反応の真意を十分理解することができず、「誰も理解してくれていない」という思いを一方的に募らせがちです。

ミスマッチの原点は、自分の知っている世界の狭さです。

そのミスマッチに気付かないまま時を過ごすと、他者からの能力評価と自分自身が考える適性との間で乖離が進み、自分を取り巻く環境への不満を蓄積していくことになります。


確かに世の中には存在するのは良い職場ばかりではありません。恵まれない家庭環境に育つこともあります。適正な評価を受けられないことも往々にして起こります。

しかし、子どものときからずっと居場所がない、常に息苦しさがある、誰も理解してくれない……というのは、本当に周りの問題なのでしょうか。

少なくとも、周囲が評価してくれなくても、自分なりにこういう行動をし、努力をしたという自分なりの達成感は得られるのではないでしょうか。

自分なりの絶対評価ができるのであれば、心の中を周囲への不満で埋め尽くすことはないはずです。


実際に目にした事例

「人の居場所づくりを支援したい」と訴えて転職をしている方が、身近でもいました。


Aさんは、他者に貢献したいという思いを持っており、行動に移そうとしていました。

金銭の絡まない活動ではありましたが、Aさんの仕事ぶりが粗雑であったため、同僚から度々注意されることが起こりました。

その際の注意の仕方はとても柔らかで、指摘する内容も至極当然のものでした。アドバイスレベルの穏当と言えるものです。

ちなみにアドバイスした方も、指導役として非常に能力の高い方です。

しかしある日、Aさんは急に現れなくなりました。

その後、先輩や同僚からの温かい助けの声を振り切り、Aさんは完全に自分の世界に閉じこもってしまったのです。


時が経ち、Aさんとも連絡が取れ、「人の居場所づくりを支援したい」と訴えて転職活動をしていることを知ります。Aさんは今後こうしていきたいと熱く語ってはいるのですが、これまでの経緯に関する周囲に対するお詫びや反省の言葉はありませんでした。

そしてAさんは、全く違う方向性の法人を渡り歩き、短期間での転職を繰り返すようになっていきました。


立場の違いを利用したマウンティング

学生寮スタッフとしてトラブルになったケースを見ていると、過去の職場で「やり遂げたこと」がほとんど見られない点で共通しているように感じます。

会社や顧客等から評価はされなくても、「自分としては、ここまではやりきったぞ!」と言える経験はあると思います。ところが、そうした「やり遂げたこと」の経験の乏しさが見られるのです。


立場・役割において絶対的な格差がある場合、上の立場の人は、下の立場の人から評価してもらいやすいという期待が生じます。

例えば、大人と子ども、先生と生徒、講師と受講生、メンターとメンティ、学生寮スタッフと寮生、健常者と障害者……といった格差のあるケースです。

さらに都会と地方という格差も実際にあります。

地方の学生寮スタッフ職というものが存在します。

都会から来た大人が、地方の子どもたちに慕われるような立場です。

現地の役場の人も、都会から来た人には頭が上がらないといった節があります。

こうした格差の構造がある中で、都会で育った大人の自分が、地方の子ども達や現地の行政・教育関係者に対してマウンティングできるのではないか……という期待が生まれるポジションです。

このような環境は、自分がこれまで周りから評価されてなかったと思う人間にとって、自己承認欲求を満たすのに格好の場となります。

いわば、人の居場所づくりではなく、自分の居場所づくりです。


自分の居場所を探す人への解法

これまで職業人としてやり遂げたことの乏しい方が、立場上明らかに格差がある環境へと移ろうとしている様子を見ていると、何か別の個人的な欲求を持っているのではないかと疑わざるを得ないことがあります。


実は、学生向けの教育の仕事、地方での産業創生の仕事、コーチングなども含めたキャリア支援の仕事を選ぼうとする方には、この手のマウンティング欲を抱え持つ人が少なからず存在します。


そういった方が、生き方を変えるための最大の解決法は、世界を知ることです。素直にインプットをすることです。

事実と正面から向き合うのは苦しいことです。

しかし、素直にインプットを続ける中で、自分の能力と周囲からのフィードバックとのミスマッチの連鎖を一つ一つ解消していけるはずです。

事実と向き合わず、自己評価のミスマッチを抱えたまま、立場を利用したマウンティングを追い求めるなんてことは絶対にあってはならないのです。


【参考】LEGIKAでの取り組み

LEGIKAは、マウンティング欲の兆候を見逃しません。

自社採用の面接で通さないのはもちろんですが、提携する住まいの運営において、面接支援をすることがあります。当然こうした方をお断りしています。

地方自治体の方には、面接対象者に対して、過去の経歴と実績内容を、具体的なレベルで徹底的に追及するようにお願いしています。

こうしたマウンティング欲のある方には、口頭でアピールする内容と齟齬のあるような過去が往々にして見つかることがあります。

その企業で実績を上げたなら、なぜ半年で辞めているのか、それほどまでに評価されたのにポジションがただのスタッフなのはなぜなのか、この企業での出来事に触れないのはなぜなのか……といった兆候です。

そして、自分の成し遂げたことを自分の口で分かりやすく説明できないような方を通さないようにしています。


コミュニティのプロは、仕事のプロ

LEGIKAでは、マンガ家向けシェアハウスの「トキワ荘プロジェクト」と、シェア型学生寮「チェルシーハウス」、クリエイティブな思考を伸ばす「Graphium House」といった直営の住まいを運営しています。

さらに地方において、自治体や学校法人が運営する学生寮運営のサポートを行っています。

▲チェルシーハウス国分寺でのワークショップの様子


寮コミュニティの運営担当者は、「寮母さん」「管理人さん」的なイメージで捉えられがちなところがありました。

しかし、警備・給食・施設管理などの業務のアウトソース化や自動化が進む中で、寮コミュニティ担当者のコア業務は大きく変化しました。

寮コミュニティの担当者は、居住者のコミュニティを束ね、集団の価値を増すことが求められており、会社組織のチームリーダー的ポジションが求められてきています。

ルールでガチガチに統制するのではなく、居住者に対して自由な形で学びを促し、トラブルを居住者同士で自主的に解決していくことが必要です。

チームリーダーとして、様々なパラメータのバランスを取りながら、最適解を見出すのは職業人としてはある程度の経験が必要な業務です。その武器としてコミュニケーション能力が要求されます。

学生たちに個人的に評価されたい……というようなマウンティング欲を差し挟む余地は一切ないのです。


コミュニティ・マネジメント業務は、仕事の面でおいてもプロフェッショナルであることが求められるのです。


LEGIKAの今後

LEGIKAでは、コミュニティ・マネジメントのプロフェッショナルを結集させてビジネスを拡大させています。

同時に、学生寮スタッフ職への安易な思いに基づく転職や、過剰な期待については警告し続けていきたいと考えています。

それでもなお、コミュニティ・マネジメントの仕事をチャレンジしていきたいという方を、我々の仲間として迎え入れていきたいと考えています。

▲2021年6月にオープンした多摩トキワソウ団地では、ビジネス手法を駆使して、マンガ家育成のチャレンジを行っています


コミュニティ・マネジャー募集

LEGIKAでは、住まいのコミュニティを担当するコミュニティ・マネジャーを不定期で募集しています。2023年1月20日現在は募集をしておりませんが、業務委託スタッフも含めて多様な働き方のスタッフを募集することがあります。ご興味のある方はLEGIKAのアカウントをフォローしてお待ちください。

学生インターン募集

学生インターンを募集中です。(2023年1月26日時点)

貴重な機会になります。興味のある方は、ぜひお申し込みください。

NPO法人LEGIKAでは一緒に働く仲間を募集しています
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