知識ではなく、”マーケティング思考力”を鍛える實川塾
デジタルマーケティング事業部で新卒から7年目のコンサルタントである實川(じつかわ)が開催している社内研修があります。その名も”實川塾”。隔週で必ず課題図書が設定され、その輪読とマーケティング施策立案のワークショップを行うという内容。その第一回に潜入取材しました。この記事では、その様子をお送りします。
主催者である實川によるオリエンテーション實川から本塾の意図が説明されます。知識ではなく、マーケティング思考力を鍛える。
實川塾の目的:マーケティング思考力を鍛える
勉強会というと一方的に講義を受ける印象が強いですが、メンバー一人ひとりが考え、みんなでディスカッションすることに重きをおいています。間違っていてもいいので、自ら考え、発言することが大事。
ディスカッションルール
マーケターに必要なコンピテンシーとは。「テクニックや知識ではなく、本質的なところを大事にしよう。領域が変わっても戦えるマーケターになるための能力を鍛えよう」。
マーケターのコンピテンシー
ビジネスモデルからマーケティング施策を考えるワークショップ
一通り説明が終わり、ワークショップに入ります。お題は「とある企業の事業成長のための施策立案」。普段のコンサルティングではWebサイトの集客を増やす、CVRを上げるといったところを中心に考えますが、今回の課題ではビジネスモデル理解から入り、Webに限らず事業を伸ばす施策を考えます。
ワークショップ課題
IR情報からビジネスモデルを理解するチーム
課題図書に書かれているフレームワークに当てはめて考えるチーム
ディスカッション後の講評発表後には、實川から講評がおこなわれました。
――このワークショップの意図を教えてください。
實川:お客様であるWeb担当者やマーケターは、様々な選択肢の中から優先度を決めて施策を打っています。一つ一つの施策に十分なリソースを割けるのは稀で、こちらの提案内容を100%実行することはできません。この際コンサルタントは、専門領域で提案してハイ終わりではなく、提案した上で何を実行するかの意思決定のサポートをできてはじめて価値があると思っています。そのためには、提案領域以外にどんな選択肢があるのか? を理解し、担当者目線で対等に話す必要があります。その思考訓練として、60分という短時間でビジネスモデルから逆算して施策を考えるという反復をやってもらっています。
課題図書の輪読会
ワークのあとは事前に読んできた課題図書について、それぞれの学びや気付きを発表し合いました。
課題図書を読みながら学びを発表
今回のワークショップでどう活かせたのかを照らし合わせてみる
實川塾の課題図書に指定されたのはこちらの本たち。マーケティングノウハウだけでなく、基本的な考え方に関する本が目立ちます。
實川塾の課題図書――どういう基準で課題図書を選んでいますか?
實川:具体的な打ち手と、基本的な思考法に大きく分かれます。初回の宿題にしたのは『世界一やさしい問題解決の授業』『具体と抽象』『アイデアのつくり方』『エッセンシャル・デジタルマーケティング』です。『エッセンシャル・デジタルマーケティング』以外はノウハウ本ではありません。ページ数が少ないながらも考え方のエッセンスが詰まった良著で、私自身の考えの柱にもなっています。いくらノウハウを知っていても応用できなければ様々なお客様を相手にすることができません。一つの案件でのやり方を抽象化し、別案件に落とし込む思考の柔軟性が必要です。読んですぐ身につくようなものではありませんが、仕事の中での基本姿勢として反復してほしいと思います。
塾の開催意図「思考力を鍛えることがコンサルタントとしての成長に繋がる」
最後に、本塾を開催した意図や想いを主催者の實川に聞いてみました。
實川:ちなみに”實川塾”というのは僕がつけたわけじゃなく、名乗るのは割と恥ずかしいんです(笑)。今回で第二期目なのですが、他の名前だったのを第一期のメンバーが勝手に”實川塾”と呼び始めて、まあ分かりやすいからいいかなと……。
もともとこの研修をやろうと思ったのは、顧客対応力の高いコンサルタントを育てたかったからです。デジタルマーケティング事業部のコンサルタントは新卒出身の社員も多く、地頭はいいのでマーケの個別施策はすぐに高いクオリティが出せます。しかし、お客様と一対一で対等に話すことができるまでに長い時間がかかる、という課題がありました。
これまでは現場で経験を積んでなんとか覚えさせるというやり方が中心だったのですが、それでは事業に要求される成長スピードが支えられないと考えました。
なぜ顧客対応力を高めるために知識の幅と思考力が必要なのか? というと、ビジネスの現場では常に幅広い予測不能なことが起きるからです。
コンサルタントとして信頼されるためには、担当者やその上長の立場になって考えられるということが重要だと考えています。SEOなど特定領域の施策が考えられるだけではビジネスパートナーとしての信頼は弱く、ただの御用聞きになってしまいます。顧客と対等に話せるコンサルタントになるには様々な施策手段の引き出しと、それを適切なタイミングで引き出すための思考力が必要不可欠なのです。
基礎力を鍛えるためには仕事の中で得られるものだけではダメで、自らインプットとアウトプットを繰り返し、「学習するクセ」と「考えるクセ」をつけなければいけないと思います。
基礎的な思考力と習慣を鍛えることで、どんな予測不能な事態にも臨機応変に対応できる、信頼されるビジネスパートナーに成長していってほしいですね。