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開放感が、豊かな想像を生み出す。〈PARTY〉のオフィス案内。

[この記事は2021年10月20日にPARTY公式noteにて公開された内容です。]


東京・代官山にメインオフィスを構えるPARTYは、2020年9月にオフィスをリニューアル。

メンバーが増え、さらにはPARTYから誕生したスタートアップ企業のThe Chain MuseumStadium Experimentなどのサイドカンパニーが勢いを増してきたこともあり、自分たちらしいワークスペースの形を追い求めてきました。

移転に伴い、デザイン設計・構築を担当したのはPARTY Design Engineerの日下部さん
普段はインスタレーション作品を多く手がける日下部さんは作品を作っていく中で、空間設計も合わせて考えていく必要があるため建築図面はよく読んでいたそうですが、建築デザインをするのは初の試みでした。
そんななか、普段の作品づくりでの知見やデザイナーとしての視点を生かしながら新オフィス構築プロジェクトが進行していきました。

今回は日下部さんにお話を伺いながら、オフィスをご紹介していきます。

仕切りのないスケルトンな空間から、豊かな想像が浮かんでくる

日下部さんがPARTY代表の伊藤さんと密にコミュニケーションをとりながら、テーマやコンセプトを詰めていく中で、当初のデザインは少しコンサバティブなものでした。

「メインエントランスを入ったところとか、普通に壁を立てる予定だったんです。けれど原状回復のため一旦室内をスケルトンにした後に、やっぱり何もないスペースってめちゃめちゃいいなと思って。何もないから、もう豊かな想像しか浮かばないんですよ。それで、なんかこの感じをこのまま使えたらいいよねと。」


壁を作ってしまうとなんだか、もったいない。しかし、会議室などをつくるため区画整備を行う必要がある。そこで出てきたのが、「屋外で実際に使用されるグリーンハウスを、そのまま室内に設置してしまう」というアイデアでした。

「ちょうどその頃、コロナの流行により屋外席を一つ一つ小さなグリーンハウスに入れてしまうというレストランが海外で出てきて。アウトドアブースと言うか。一緒に来ているお客さん同士で囲われているほうが他のお客さんとの隔離状態を保つことが出来るし、安全状況をコントロールしやすかったんですね。でもグリーンハウスなんで屋外特有の開放感は保たれていると。そういう事例が海外にちょこちょこあって、すごく良いなと思って。」


唯一壁があるのはお手洗いと、機密書類を扱う書庫室のみ。
それ以外は壁は一つもなく、棚や植物を置くことで区画を整理し、プライベートスペースとコミュニケーションスペースをバランスよく配置しています。

<PARTYの代官山オフィス・TOKOにて会議室として使用されている象徴的なグリーンハウス。>

<空間コンセプトは開放感。施工前のまだ何もなかった時に感じた開放感をそのままオフィスへ持ってきたかったため、メインエントランスから執務室へ抜けて、向こうの壁まで全てを見晴らすことが出来る設計にした。>

<棚を利用して仕切りをすることで、プライベート感がありながらも開放感を保った作業スペースが出来上がった。>


空間の中の機能を担保するために必要なものは、隠さなくていい

日下部さんが今回のデザインで掲げていた個人的なテーマは「raw」。

「壁も配管も、空間の中の見えているものは基本的に何も隠さないようにしたんです。ある機能を担保するのに必要なものなのであれば、隠さなくていいじゃん、と僕はいつも思っていて。
ただ、単に全部むき出しにしたら荒々しくなりすぎてしまうので、むき出しでもかっこいい素材を選んで、隠さないんだったらかっこいい見え方にしてあげよう、ということは意識してデザインをしました。」

<扉を開けると、天井から壁まで至る所に張り巡らされるメタル製の配管。>

<元々貼られていた壁紙を剥がした後に残った接着剤の白い跡は、あえてそのままに残している。>


ある気づきによって、実現することが出来たアイデア

今回の施工で日下部さんのお気に入りの一つは、ライトとエアコンのスイッチ盤。
こちらも「raw」のテーマに沿って出来るだけ隠したくないが、特にエアコンのリモコンは空間の雰囲気と合わず、そのままだと見栄えがあまりよくありませんでした。

「普通かっこいいオフィスって、エアコンのスイッチは隠れているんですよ。壁が一枚あってそこに小さな蓋があって、開けるとスイッチが出てくる。でもここのオフィスって隠す壁も何もないし、そのまま見せてしまったらちょっと合わないな、となって。そしたら、年式とかメーカーとかは全部違うんだけど、よく見たらみんな同じサイズじゃない?と思って。調べてみたら、業務用のエアコンのリモコンって全部同じ、120ミリ角になっていたんです。全部同じサイズだったらもしかしたら、見た目が全然違うものでも綺麗に並べてあげたら洗練されて見えるかもなと思いました。」
「さらにアートっぽく仕上げたいと思い、配線が全て見えるスケルトンデザインにして、かっこよく収められるスイッチボックスを作ろうと思って。なるべく隠さないというコンセプトのもとで、ボックスも僕が設計しました。」


細部にこだわらないとかっこいいものは作れない

今回は、施工をする上で資料ブックにはない資材を使って構築することも多く、施工会社の方と日下部さんの二人三脚で探しまわることも多かったそう。

「探してもなかったので、作ろうとなって。例えばキッチンに上がるたった数段の階段のフチについている鉄のパーツとか、他にもそのためだけにオリジナルで作ったりしたものがいくつもあって。すごく細かいけれど、でもそういうところでこだわらないと、全体の仕上がりがかっこよくなってくれないんですよ。

ものづくりって基本そうで、こういうシンプルなのがいいよねって言う、一番シンプルだったらこういうのがあるでしょう、って思うようなものが世の中に意外とあんまりないんです。だから僕みたいなフィジカルなものをつくる人っていうのは、そもそもどういうパーツは既製品で買えて、どういうお店がどういうものを扱ってて、何は自分で作らなきゃいけないのかっていうのを分かっていないとデザインが出来ないんです。僕は今回、建築に関するプロジェクトは初めてだったので、その点は苦労はしましたし、学びも多かったです。

だからすごく大変だったけれど、自分自身で空間を作るのは楽しかったし、結果的に僕も、伊藤さんも、オフィスに通うメンバーも全員が満足できる仕上がりにすることが出来たのでよかったと思っていますよ。」

<オフィス内に飾られている数々のアート作品。>


<オフィスを彩るように生い茂る植物は、SOLSO FARMさんのもの。社内で、植物たちを元気に育てる有志たちの集まり「Toko_Green_Club」も発足した。>


<キッチンスペース。ファウンダーの中村洋基がオーナーを務めるコーヒーショップ「TINTO COFFEE」のコーヒーが自由に飲める。>

<図面左側半分のスペースはTOKO-FARM。FARMのようにクリエイティブのタネが育つ場所。メインエントランスや会議室、キッチンスペースなどがあり、コミュニケーションが生まれやすいように設計されている。
右側はTOKO-MUTE。主に集中して作業できる執務室スペース。>



日下部 理 Satoru Kusakabe
Artist, Design Engineer

1985年東京都生まれ。2011年に英国のCentral Saint MartinsのBA Product Designを卒業後、2012年からロンドンのアートスタジオRandom Internationalにてデザイナーとして勤務。2016年からはシニアデザイナー。壁掛けの小規模なものから全高20Mのパブリックアートまで数々の作品を手掛ける。2017年末にRIを退社し日本に帰国。2018年の4月からPARTYに入社。インスタレーション・スペシャリストとしてフィジカル回りの造作のディレクションなどを担当しつつ、自身の創作活動を始める。

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