デザイナー視点で考えるQuipperの環境 by Takeshi Ugajin
開発初期よりデザイナーとしてQuipperプロジェクトに携わり、早2年半が経過した。フィリピンでサービス開始した当初はなかなか苦戦したものの、徐々に多くの方の想いが実り始め、今や100万ユーザーを抱える一大教育サービスに成長し、小さなロンドンオフィスにいると実感が追いつかないまでの規模になった。たまに現地スタッフとのミーティングやユーザーテストで営業拠点に赴くと、熱気の違いに圧倒される。そして、いかに多くのスタッフに支えられているかを再認識する。サービスのさらなる発展にはこれからが正念場だが、ここに至るまでの開発を通して私なりに学んだことも多くあった。この場を借りて、Quipperでのデザイン業務における3つの価値を、自戒も込めて共有したい。
1つ目はグローバルサービス特有の課題やその対策を実務を通して体験できること。複数の国で運営するサービスでは、様々な点において各国の文化的な事情や背景にデザイン面も対応する必要がある。多言語対応等、レイアウトを調整することで切替が出来るものはともかく、コンテンツやプロモーションに使用する画像に関してはそれぞれの国ごとに最適化しなければならない。例えば、今最もサービスが好調なインドネシアはイスラム教の国のため、他国で使用していたブタの貯金箱のアイコンは真っ先に自主規制の対象となり、現地で一般的なニワトリの貯金箱に変更したりした。また、女性の画像がある場合は基本的にヒジャブを着ける必要があり、サービス共通の人物キャラクターを使用することの難しさを実感した。こうした国ごとへの対応から学んだのは、まず何が普遍的なデザインかを慣例に捉われることなく検討すること、そして固有のデザインが必要な際はサービスのアイデンティティを損なうことがないよう、アートワークのコンセプトやカスタマイズ可能なテンプレートを皆で共有することである。その成果もあり、現在Quipperの世界観を各国で維持できていると感じる。
2つ目は学校という特殊な環境を対象としたサービスデザインに携わり、UXを試行錯誤できること。特にユーザーとしての「先生」に向けたUI制作からは学ぶことが多い。例えば、物心のついた時からスマホやタブレットに触れている10代の生徒が瞬時に使い方を理解する一方で、先生は20代〜50代と幅広く、ITリテラシーも大きく異なる。ドラッグ&ドロップの意味がわからない、画面がスクロールできることに気付かないなど、一般的なUIの定石が通用しないこともしばしばだ。また、ITの知識に違いはなくとも、UXに関して求めるものが異なることもある。例えば「宿題を終えた」という状況をどう捉えるか。「正誤はともかく全問やればよい」という先生もいれば「全問正解が必須」と考える先生もいる。同じ先生でも状況によって期待するものは変わる。こうした教育現場ならではのフィードバックは毎度目から鱗であり、現地の生の声を聞けることの価値を実感できる。一般的に保守的と言われる学校という場、さらにIT設備が十分とはいえない環境にもかかわらず、Quipperのような新しいツールを試みてくれる先生の期待は開発業務における大きな原動力である。
3つ目は国際チームで1つのプロダクトを開発から運営まで行う体制。現在弊社は英国、日本、フィリピン、インドネシア、メキシコの5カ国に拠点を構え、デザイナーはそれぞれのオフィスに在籍している。物理的にも時差的にも離れているが、Slackを通して日常的に意思疎通し、UIデザインから映像制作まで、ほぼすべてのアートワークをインハウスで行なっている。こうした各国で連携した体制は、デザイナーだけでなくデベロッパーやマーケティングチームでも同様である。昨年から開始した全拠点同時オンラインミーティングはその最たるもので、アジアとメキシコでは14時間近い時差があるにも関わらず、お祭りのような盛り上がりだ。3ヶ月に1回ではあるものの、開催の度に改めて「One Quipper」を感じることができる瞬間である。今後さらにいくつもの国が繋がっていくことを想像すると楽しみで仕方がない。
こうしてグローバルなサービスの開発・運営に携わっていると、世界中にユーザーを持つ大手SNSのスケーラビリティがいかに高いかと実感する。その一方で、学校教育の場にオンラインサービスを取り込むためには、泥臭いまでのローカライズが必須であり、それができる環境こそがQuipperの強みでもあると思う。多くの現場スタッフの努力をデザイン面からサポートすることがチームの使命であり、そこで得た経験はデザイナーとしてのキャリアにとって大きな価値になると思う。

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