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ミニ連載A第2回:なぜデジタルアーカイブの会社が「まちづくり」人材の育成? 〜博物館法改正〜

こんにちは。社長室室長・上級デジタルアーキビストの寳德真大(ほうとく まさひろ)です。

今回は、ミニ連載A第1回目の「なぜデジタルアーカイブの会社が「まちづくり」人材の育成? 〜問題提起〜」に引き続いて、第2回目となります。

1:問題提起
2:博物館法改正 ←← 今回はココ!
3:サステナビリティ"という経営課題をどう考えるか
4:まちづくりの誠勝"が目指す未来

前回の投稿では、貴重な史資料の後世への継承には「利活用」が必要なこと、デジタルアーカイブ化はその「利活用」しやすい環境構築であること、しかしながら「明確に何かの課題解決に繋がった」という確固たる利活用のロールモデルが、社会全体には不足している」点をお伝えしました。

そして「実利を得るための利活用」ではダメだけど、「利活用の結果、実利を作る」ことは貴重な史資料の後世への継承に欠かせない点を伝え、その試みが社会全体に広がるための大きな動きが今年2023年から始まることをお伝えしました。

今回は、そのうちの一つである「博物館法改正」について、書いていきたいと思います。


【目次】
・約70年ぶりの博物館法改正と、そのねらい
・文化庁が見通す、博物館が新たな価値を創出するまでの工程表
・奈良大学文学部国文学科で実施した、地域活性化人材育成のための特別講義
・「まちづくりの誠勝」って、大学向けのサービスだけなの?

-- 約70年ぶりの博物館法改正と、そのねらい

今年2023年4月1日、前年に国会で可決・成立した「改正博物館法」が施行されました。博物館法が改正・施行されたのは約70年ぶりの出来事です。

これにより、登録博物館・博物館相当施設は2028年3月31日までの5年間、新しい要件への適応が求められる形となっています。

この要件、具体的な部分は都道府県・政令指定都市の教育委員会に委ねられていることもあり、実際問題として「具体的に何をやれば要件をクリアするか」については、まだ不透明な部分が多いです。

しかし大事なのはそこではなく、今回の博物館法改正に伴い、文化庁が資料のデジタルアーカイブ化と博物館DX、また地域課題解決への先進的な取り組みの事例作りを推進しているということです。つまり今後博物館では、「デジタルアーカイブ」「地域課題解決」に取り組む館が、だんだんと増えてくることが予想されます。

そしてこれは「博物館をもつ大学」「学芸員課程をもつ大学」も影響を受けることになります。特に将来学芸員として博物館に就職する学生にとって、「デジタルアーカイブ」「地域課題解決」に対して意識を向けることが必要になってくるからです。博物館の将来を担う学芸員課程の大学生・大学院生にとって、デジタルアーカイブと地域活性化に対する知見はますます重要度が増してくる状況といえるでしょう。

私たちは、大学のもつデジタルアーカイブを、特に学芸員を目指す学生の社会実践力向上のために利活用し、将来地域課題解決を担う人材育成ができないかと考え、「まちづくりの誠勝」の大学向けサービスを展開することに決めました。

-- 文化庁が見通す、博物館が新たな価値を創出するまでの工程表

とはいっても、まだまだ改正博物館法は施行されたばかり。「博物館と学芸員の仕事は、本当に変わるの?」と疑問を持たれる方も多いと思います。

確かに「改正後」の具体的な要件については都道府県・政令指定都市の教育委員会に委ねられていることもあり、実際問題として「具体的に何をやれば要件を満たせるか」については、まだ不透明な部分が多いです。ここ次第では、博物館のデジタルアーカイブの利活用と地域課題解決への取り組み方も変わってきてしまうかもしれません。

しかし一方で、文化庁は予算をかけてまでデジタルアーカイブ化と博物館DX、また地域課題解決への先進的な取り組みの事例作りを支援しています。(既に終了した令和5年度分で言えば、上限や予算の範囲内という制限はあるものの、定額補助で募集要項が上がっていました)。

そして文化庁は、新たな価値を創出する博物館を広げていくまでの工程表も示しています。

ご覧いただければわかるように、一つの大きなマイルストーンとして、特に令和 7 年度から、文化庁は本格的に改正博物館法対応に関する周知徹底を行っていく予定です。

令和 7 年度になってから動き出すか、それまでの期間に準備をするか...この違いは、学芸員課程を持つ大学の社会実践教育において大きな差を生み出すでしょう。

-- 奈良大学文学部国文学科で実施した、地域活性化人材育成のための特別講義

既にこうした動きを捉え、将来貴重書や文化財に関わる学生に、ビッグデータを活用した地域課題への意識づけに取り組む大学も存在します。連載第1回目の冒頭でも少し書きましたが、去る2023年6月12日、私たち株式会社誠勝は「国文学科で知っておきたい、デジタルアーキビストが行う地域課題の探究~ “ 文化 ” を仕事にする人に求められること~」という特別講義を実施いたしました。

当日は、博物館学芸員・図書館司書の教育課程をもつ奈良大学様。主に国文学科の学生に対し、デジタルアーカイブ利活用の大切さを講義するとともに、地域経済分析システム「RESAS」を用いて個人ワーク・グループワークを交えつつ、地域の図書館・博物館を取り巻く課題の探究を双方向型で実施しました。

一見縁遠そうな「貴重書・文化財」と「地域課題・ビッグデータ」。しかし、これらの結びつきが着実に密接になっていることを、ひしひしと感じているところです。

私たちは引き続き、「まちづくりの誠勝」の大学向けサービスを通じて、大学のもつデジタルアーカイブを、特に学芸員を目指す学生の社会実践力向上のために利活用し、将来地域課題解決を担う人材育成のお手伝いを担っていきたいと考えています。

そしてこの考え方に賛同し、ともに事業を運営していただける方も今後随時募集していきたいと考えています。

--「まちづくりの誠勝」って、大学向けのサービスだけなの?

すっかり書くのを忘れていました。「まちづくりの誠勝」には企業向けのサービスも存在します。しかし長くなってしまったので、これについては連載第3回目に書いていくことにします

1:問題提起
2:博物館法改正 ←← 今回はココ!
3:サステナビリティ"という経営課題をどう考えるか
4:まちづくりの誠勝"が目指す未来
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