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「英会話相手のロボット」 がいる未来を目指して CEO Life Story #2

※代表立石のnoteより転載

株式会社スピークバディCEOの立石剛史です。
CEO Life Story #1では、幼少期から起業に至るまでの経緯をお話してきました。

今回のnoteは、その後の起業してからの話。AI英会話アプリ「スピークバディ」はどのように今の形になっていったのか。誰の何を解決しようと事業につなげていったのかをお伝えしたいと思います。

お試しで作ったサービスが大ヒット。英会話学習へのパッションに気付かされた

約7年勤めた外資系投資銀行を辞め、「デジタルサービスの会社を作ろう」と動き出したものの、当初は何をやるかは決めていませんでした。
起業に向けては、世界を旅しながら事業アイデアを考えようと思っていました。しかし、旅先のアフリカで大きな交通事故に遭ってしまい、手術・入院に加え、3か月の車いすと1年のリハビリ生活を送ることになってしまったんです。足の切断や歩けなくなる可能性も医師から説明されましたが、懸命にリハビリし歩けるようになりました。起業の予定が大幅に狂ってしまったので、入院中にプログラミングの勉強を始めました。

退院後もプログラミング教室に通ったり、個人で先生の指導を受け、アプリ開発を学んだり。起業に向けて準備を進め、2013年に「世の中を変えるようなアプリを作る」という想いでappArray(アップアレイ)株式会社を設立しました。「アプリの配列」というエンジニアには分かりやすい意味と「天晴れ」という語呂のダブルミーニングです。

なぜアプリなのか。いいアプリを作れば、数千万人、数億人という規模のユーザーに体験してもらえる。社会にインパクトを与えられる――。金融時代、機密情報を扱う仕事だったこともあり数人のお客様を相手とするのみだった自分にとって、それはすごく魅力的でした。とはいえ、「何のサービスを作るのか」という肝心なテーマは、なかなか定まらずにいました。

そんなモヤモヤを晴らすきっかけは、友人との会話から出てきた一言でした。
帰国子女の友人から、「英語めちゃくちゃ勉強してるんだから、英語のアプリを作ったら?」と言われたのです。そのとき、私は「それだけは嫌だ」と即答。「一番嫌いで、コンプレックスがあるものをなぜ事業にしなくちゃいけないんだ」と笑いながら反論しました。
しかし、自分のためにもなるし、試しに作ってみるかと始めたらすごい勢いでアイデアが出てきました。冷静に考えてみると、これまで4000時間、金額にして500万円以上費やしてきた英語学習は、自分なりのノウハウがある強みの領域です。それを詰め込んで作ったのが『本気で英会話!ペラペラ英語』でした。

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話モードのほか、名言モードやリスニングモード、毎日届く「アインシュタインからの手紙」のコーナーも。

当初は、プログラミングの先生に直してもらいながら自分でコーディングしていましたが、一人では時間ばかりかかります。海外のクラウドソーシングの会社を通じてインド人と中国人のエンジニア、セルビア人のデザイナーに外注し、約100万円かけて何とかリリースできました。

ユーザーから高い評価をもらい、手応えを感じたので、発売から半年位、帰国子女の友人とプログラミングの先生と3人で改良を重ねていったんです。
すると、なんとAppStoreで有料ランキング総合1位を獲得。それを機にあれよあれよと50万ダウンロードを突破し、Appleの2014年度年間ベストアプリの一つとして、あの『マインクラフト』に次いで2位を獲得しました。

起業間もなく素人が初めて作ったアプリが数千万円もの売り上げにつながり、2作目の単語学習アプリ『マジタン』も発売3日目で総合1位に。アプリ開発の面白さを、早々に味わえることになりました。

もっとも驚いたのは、日本人の英語学習への意欲でした。『ペラペラ英語』は、具体的なシチュエーションに添った「会話」「リスニング」「名言」など、私が欲しい機能を詰め込んだ、日本初の音声認識を活用した英語学習アプリでした。しかし、音声認識技術そのものはとても未熟で、デザインも、当時のランキング上位にあった大企業のゲームアプリなどと比べるとお粗末なもの。でもそれが、多くの人に受け入れられたのです。英語を勉強したい人は、こんなにたくさんいるのかと驚きましたし、レビューで届くお客様の英語を学ぶ意欲に励まされる思いでした。

そして、もう一つの大きな気づきが、私自身の「語学領域へのパッション」でした。英語が苦手だ、勉強がつらい…と思い続け、試行錯誤を続けてきたからこそ、どんなサービスがあればよかったのかを夢中になって考え、2つのアプリに想いを込めていました。香港駐在時の中国語学習も含め、語学に苦手意識の強い自分にこそ提供できる価値があるのだと気づかされ、「言語習得の課題を解決したい」という覚悟が決まりました。

理屈じゃなく、原体験から「助けたい人」にたどり着いた

『ペラペラ英語』や『マジタン』の大ヒットは嬉しい誤算でしたが、これを事業の柱にしようとは思いませんでした。世の中にインパクトを与えている、という感覚が得られなかったからです。

当時は、「自分が作ったものは受け入れられる」という驕りもありました。それを痛感したのが、『ペラペラ英語』や『マジタン』後にリリースした「英語学習SNS」の大コケです。開発に時間とお金をたっぷりかけ、英語学習のロードマップ機能や、英語学習について質問し合えるソーシャル機能など、自分の構想をすべて形にしていきました。しかし、ユーザーが定着しないままクローズを余儀なくされることに…。当時は、スタートアップのセオリーである「小さく始めて仮説検証を繰り返す」というリーンスタートアップのやり方も知らず、ユーザーの声を聞く力も足りず、そもそもイノベーティブな事業づくりの基本を学んでいなかったのです。

いくつかの失敗を経験して、「ユーザーが数百万人を超えるイノベーティブなものを作るには、きちんとした学びが必要だ」という反省が強くなっていました。そこで、経済産業省が主催する起業家育成プログラム『始動』に申し込み、スタートアップのメンターに意見をいただきながら事業計画を作っていくことにしました。

まず考えたのは、サービスによって「誰を助けたいのか」です。

メンターや起業家の方たちに「英語学習の課題」を聞くと、「続かないことだ」という回答ばかり返ってきて「だから続けられるものを作るべきだ」、といいます。でも私は「続けられない人・やる気がない人のためのサービス」にしっくりこなかったんです。
私が助けたいのは、英語を学ぶ意欲に満ち溢れていて、継続の意思もあり、お金も時間も使ってきたけど、喋れないという人でした。
誰よりも私自身が、やる気もあって、膨大な時間とお金を投資して勉強してきた。誰よりも「喋れるようになりたい」と思っていたのに、できなかった。そんな、自分と同じ苦労をしている人のためにサービスを作りたいと思いました。

参加したその起業家育成プログラムでは、プレゼンが評価されシリコンバレー選抜メンバーに選ばれはしたものの、AI英会話のアイデア自体は多くの方に否定されました。「それが欲しい人は、立石さん以外、市場にはほとんどいないだろう」と。さらにはAIを使った英会話についても「音声認識技術が、会話レベルには到達していない」などポジティブなことは一言も言われなかったと思います。(実際、当時は世の音声認識技術がまだまだ実用に耐えられるものではなく、そう言われるのも当然ではあったのですが。)

しかし、私は英語を話せるようになりたい人が沢山いるということを知っていましたし、音声周りのAI技術の進化を信じていました。そして理屈で考えたことは私以外の誰かがやります。実際に英語学習の継続課題に向き合うサービスは現在いくつもありますし、音声認識技術は目覚ましく進化しています。

私には、つらくて苦労したからパッションがある。"原体験"(この言葉を知ったのは後のことでしたが)から来る「自分と同じような苦労をしている人を助けたい」という思いからブレなかったことで、現在の唯一無二と言えるプロダクトが生まれていると思います。

「家に英語で喋ってくれるドラえもんがいてくれたらいいのに」

AIにこだわった理由は、日本人が共通して持つスピーキングの課題解決に最適だと思ったからです。
日本人はインプットばかりでアウトプットの機会が圧倒的に足りていません。でもすぐに海外には行けないし、マンツーマンの英会話教室は高価だし、オンライン英会話は講師の質にバラつきがあって学習効率が悪い。これらを丸ごと解決できるのがAI英会話でした。

私自身、英語のことになると途端にコミュニケーションに対する不安が大きくなり、恥ずかしい、怖い…という感情が先に出ていました。バイリンガルの友人たちから、「会話相手を見つけなければ喋れるようにならないぞ」と言われましたが、そもそも日本で生活をしていて、その相手を見つけることが難しい。そして、いざ話せる環境が整ったところで、言葉が出てこないのです。研修や短期留学でアメリカで過ごしていた時でさえ「家に、英語でしゃべってくれるドラえもんがいたらいいのに」とずっと思っていました。

それから数年経ってAIがすさまじい進歩を遂げているタイミングで、これならあのとき思い描いていた“英会話ロボット”を作れるぞ、という感覚を持ちました。そして2016年、「スピークバディ」の構想が固まったんです。

「スピークバディ」は約9か月間の開発期間を経て、2016年9月にリリースとなりました。
過去の失敗を繰り返さないよう、ユーザーニーズを探るためにクラウドファンディングを実施し、どういう人がターゲットなのか、ヒアリングと仮説検証を繰り返しました。その上で満を持して誕生!・・・と言いたいところでしたが、クラウドファンディングでリリースを待っていたユーザーからは、「音声認識がひどい」「どこがAIだ」などの声も多くありました。ただ、不思議と焦りはありませんでした。スピーキングの自己学習サービスはホワイトスペースだという確信があり、誰の何を解決したいのか、方針にはブレがなかった。だから開発を重ねて胸を張れるプロダクトにしていこうと、ただそう思えたんです。

その後、デザイナーやエンジニア、コンテンツ担当など、「スピークバディ」を支えるプロフェッショナルたちが入社してくれたことで、ユーザーエクスペリエンスは格段にレベルアップしていきました。
音声認識技術はリリース後も現在も進化を続け、合成音声も当初から考えられないほど滑らかになりました。
英語学習に意欲のある人はずっと継続できるレベルとなり、“助けたかった人”に届けられるサービスレベルになっていると思います。

英語は人ではなくAIで学ぶ。AI学習が当たり前の社会を創っていく

ただ、私が目指している言語習得の世界はまだまだ果てしなく先にあります。私が思い描くのは、人よりもAIで学ぶことが当たり前の社会。イメージは、この、映画『her/世界でひとつの彼女』の世界です。


コンピューターのオペレーティングシステム(人格を持つAI)に恋をした主人公が、ゲームのキャラクター(AI)と3人で会話する、そんな場面が20年後には現実のものになるかもしれません。その世界で、英会話のレッスンを人を相手にしているはずがないと思うんです。

もちろんフリートークなどまだ発展途上の部分もありますが、今後、語学習得に特化したサービスを作り込んで行けば、海外に留学したり英会話教室に通うのと同じ、もしくはそれ以上の体験ができるようになる。AIの先生と雑談し「今日は、このテーマを学びましょう」と進めていく。モチベーションの継続もすべてAIがリードしていく。そんな真の言語習得を創っていきたいと考えています。

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