1
/
5

“サッカー界の神様”ジーコ氏、スポーツフィールドに来社し、スポーツの価値や可能性について経営陣との対談を実施

 今回は、元ブラジル代表の天才的名手であり、日本代表監督も務めたジーコ氏に来社いただき、スポーツが持つ価値や、可能性について対談させていただきました。熱く真剣ながら、時折冗談も交えつつ約1時間のインタビューとなりました。ジーコ氏の人柄や、スポーツに対しての想い、そして日本に対しての想いも同時に感じることができました。

(インタビュアー:永井淳平、運営・編集:鶴巻翔平、宮内優樹)

○ジーコ (Zico) :アルトゥール・アントゥネス・コインブラ

選手、監督としても名声高き人物で、ブラジル代表では、72試合に出場し52ゴールを挙げており、FIFAワールドカップでは1978年、1982年、1986年の3大会に出場した。ブラジルサッカー界でペレに次ぐ超英雄。2006年ドイツW杯では、日本代表監督を務める。また、母国ブラジルで就任していたスポーツ大臣の椅子をけって、Jリーグ開幕前の住友金属(現:鹿島アントラーズ)に来てくれた、日本サッカーにとっての大恩人でもある。

参考:http://ur0.work/KygP

○永井 淳平(ながい じゅんぺい)

慶應義塾大学法学部卒。新卒で三井住友銀行に入行後、外資系コンサルティングファームを経て、共同創業者兼取締役として株式会社オスカーを創業。財務や、経営戦略などを中心に担ったのち、株式会社スポーツフィールドに参画。現在は、当社の取締役CFOとして経営戦略、財務戦略、新規事業、内部統制、広報・IR、新卒採用、IPO準備などを統括。



―:永井発言

なし:ジーコ氏発言

―当社はスポーツには無限の可能性や価値があると考えており、自らを様々なフィールドでスポーツに関連した事業を行っていく、総合的なスポーツの会社だと捉えています。今まではスポーツ選手のキャリア支援を行うことで成長を遂げてきました。本日はよろしくお願いします。

―まずアイスブレイクですけど、このインタビューと同日同時刻に日本代表の選手発表が行われていますけど、やはり気になりますか?

 今は、自分の仕事は試合が終わった後のコメントくらいなので、あまり気にならないですが、監督当時はスタッフ含めもちろん、気になっていましたし、でも今はそうでもないですね(笑)

―日本対ガーナ戦もご覧になっていましたよね。ツイッターでコメントされていましたが。

 見ていて決定的なミスが多かったですよね。今のサッカーは、ミスした数が多いほうが負けるというか、勝ち負けが決まるんですよね。実力うんぬんよりも、決定的なミスがあるかどうか。1点目なんかは、GKのミス、2点目もミスから。つまり、相手はそういったミスを狙って突いてくるので、ああいうミスをしていると負けてしまう。日本はちゃんと戦っていましたが、決定的なチャンスを物にできなかった、というところでしょうね。7万人の観客につめかけてもらって、代表選手を送り出す試合でもあったと思うので、勝てれば良かったんでしょうけど、そうならなかったのは残念ですね。

―貴重なコメントありがとうございます。

―では本題に入りまして…。早速お伺いしたいのですが、これまで、選手、監督そしてスポーツ大臣としてスポーツに携わってきたと思うのですが、ジーコさん自身にとっての、スポーツが持つ価値や、可能性とはどのようなものでしょうか?

 自分の場合、長年選手をやってきたし、培ってきた知見というものをしっかり持っていて、自分が引退してからは、その経験を活かせる場ということで、今までスポーツに関わってきました。今現在も、スポーツクラブの経営をするという形でスポーツに関わっています。自分の人生において、今まで経験してきたことを試すもの(スポーツ)としては非常によかった、最適であったと思います。選手をかなり長くやった中で、ブラジルだけじゃなくて、イタリア(ウディネーゼ)にも行っていました。サッカー強国であるイタリアで、サッカーに対するあり方や、考え方、システム等、様々な角度からサッカーを見られたことは貴重な経験になりましたね。その後、選手を引退して、初代スポーツ大臣になりました。そのときに、サッカーだけでなく、いろんな種類のスポーツと関わることができたので、すごくいい経験になりました。そして、ご存知の通り鹿島(鹿島アントラーズ)にいって、日本のプロとして、どうやってスポーツを、そしてサッカーをビジネスとして成立させるか、ということに0から携わることができたのは、すごく幸せでした。 



―なるほど。サッカーやスポーツを様々な角度や立場から実際に見られてきたわけですね。そういった意味でも、確かにジーコさんは稀有な存在です。

 今、自分の経験則に基づいてお話しましたが、ご存知かもしれませんが、ブラジルの場合、スポーツクラブというのは(総合的な)レジャークラブなんですよね。ということは、数多くの種目で、たとえばサッカーだけじゃなく、バスケットボールもありますし、スポーツ総合クラブのイメージで経営をしています。でも、イタリアのクラブにおいてはそうではなくて、サッカーだけなんです。本当にどこのクラブもそうですが、サッカーだけで、他のスポーツと一緒にとか、そういう概念は特にないんです。そういったクラブの姿も見てきたんですが、日本(鹿島アントラーズ)に来ると、また違った環境がそこにはありました。日本のサッカーは、会社に属しながら社員としてプレーをするアマチュアの位置付けで、当時はちょうど、仕事が終わって練習をするというモデルから、プロとしてサッカーをして生計を立てる、というモデルへの転換期ではありました。最初はグランドもない、ロッカーもない、クラブハウスもない、スタジアムもない、という現状を目の当たりにしたとき、びっくりはしましたが、逆に今まで自分が見てきたものや、体験してきたものを活かすことができたわけです。よく聞かれていました。「ロッカー作りたいんだけど、どうしたらいいか?」「スタジアム作りたいんだが、どのような設計なら観客が観やすいか?」。私が世界中で見てきたものを直接伝えて、具体的なアドバイスすることができました。自分がやってきたことをそのまま伝えることができたのは良かったし、力になれている感覚もありましたね。



―ありがとうございます。ジーコさんにとってのスポーツの価値とは?といったお話を今お聞かせいただけましたが、では、スポーツそのものの価値というのはどういったものでしょうか?そもそもスポーツには価値がありますか?

 スポーツは実に面白いものです。すべての人にとって、健康は基本的に必要なものですよね。人間は健康でないと気力も出ないし、メンタル面でも弱くなってしまう、つまり自分の良さみたいなものを発揮できなくなってしまう、がんばるぞ!という気持ちが起きないですよね。そういう人生において本当に大切で、根源的なことを教えてくれますし、感じさせてくれ、そして力を与えてくれるものだと思います。そこに価値はありますよね。それを実感するためには、できるだけ自分がやるということが大切で、うまい、下手とか関係なく自分で体を動かしてみるということは非常に大切なことだとそう思います。

―ありがとうございます。私たちとしても同意見です。

―いろんな観点があると思うのですが、では、ジーコさんは日本はスポーツ先進国か、後進国、どちらに位置づけられると思いますか?

 はっきり言えることは、日本はスポーツ先進国です。国の面積が小さいので、例えば河川敷とか。いろんなところを利用して、いたるところに様々なスポーツができる施設がある。あとは、女性、高齢者の方でも通えるようなスポーツジムも数多く存在している。こういった点で、非常にいつでもスポーツできる環境は整っていますよね。これは、どこの国にもないような施設の数と、施設の質は類を見ないほどすばらしい環境は整っていると感じています。あとは、日本の場合、教育制度もしっかりしている。文武両道ということですかね。ブラジルと比較しても学校の中で教育しながらスポーツに打ち込める仕組みが整えられている視点はブラジルにはない仕組みですね。つまり、勉強もしながらスポーツもできる。これは日本ならではないかと思いますね。

―施設や、環境に関しては、確かに他国からして引けをとらないと思うのですが、一方で、欧米諸国からしても、選手の年俸や待遇に関してはまだまだ低い、過少評価されているのかなと感じるのですが、いかがでしょうか?



 スポーツって2種類あると思っていて、それは個人競技、団体競技。日本においては個人競技に関しては欧米諸国と並んで年俸に関してはもらっているなという印象です。(テニス、ゴルフ等)ただ、団体競技になるとそうはいかないですよね。また競技によっても違いますね、例えば野球とサッカーのように。アジアであれば、中国のように多額のお金を使って知名度の高い、そして優秀な選手を獲得する。こういった動きは日本には少ないですよね。あと、少し話は変わりますが、体格面で言うと、現代ではどのスポーツを見ていても、高くて強いのが当たり前で、世界的に見てもその流れはありますよね。その点は、体格面に関しては、日本は劣るなとは感じています。

―なるほど。スポーツをやってきた方のセカンドキャリア問題は、日本でも注目されていますが、ブラジル、ヨーロッパでは引退後の再就職先というか、セカンドキャリアの選択肢に関してはどういった状況ですか?

 選手が現役を引退した後、色々セカンドキャリア考える際に、ある程度ブラジルでは選択肢的には、充実していると思います。国や、州が、専門学校や、スポーツに関しての知識など学ぶ機会を提供していますし、キャリアとして新しい分野に移行できる機会はありますね。例えば、栄養管理、メンタル管理、フィジカルトレーニングなど、専門性を極める、選べる機会はありますね。ただ単に選手を引退したらすぐ専門職につくのではなく、学んでから就くという流れがあります。


―なるほど。セカンドキャリアの話に付随してなのですが、では知っている選手の中で、引退後にビジネスマンとして成功しそうな人、あるいは成功しているはだれですか?それはなぜですか?

 数限りなくいますね。一流の選手って、その後監督になるケースも多く、同じサッカーの分野の中でも成功している人は多い。例えば、ジダン氏は選手として一流で、そして監督としても成功していると私は思います。もちろんほかのスポーツでも数多くの選手が活躍していますがね。でも、忘れてはいけないのは、監督等になるまでに必ず勉強をしているということです。選手として一流だからといって、すぐに監督になれるわけではない。だからこそ、新しく就く専門職に関して、学ぶ必要があるんだと思います。ベッケンバウワー氏とかもそうですし。ロマリーニョ(ブラジル)氏なんかは、クラブの運営で手腕を発揮しましたよね。選手として経験したことを、新しい知識を学ぶことで、ピッチだけでなく、別の角度からも活躍することができますよね。フィリップ・トルシエ氏(元日本代表監督)は選手としてよりも監督として一層活躍し、一流になりましたよね。彼は、新しい道を進むにあたって、大いに勉強したわけですよ。そういうセカンドキャリアへの考え方は非常に重要だと思います。

ちなみに、私もそうなんですけど(笑)選手としても、監督としても頑張ってきました(笑)私としても、監督だけじゃなくて、クラブやチームの運営にも携わってきましたし。私もたくさん新しい分野の勉強をして選手時代の経験を活かすことができましたね。

―(笑)すごくよく理解できました。私はビジネスマン=企業の経営者や社員を想像して質問しましたが、あなたが優れた方として監督などを何人か上げていただきました。それはつまり、優れたマネジメントができる方(監督や、クラブ運営等)は、ビジネスもできるという考え方なのかなとお察ししました。その発想にすごく共感しますし、理解できました。



 まさにそうですね。自分の経験からいっても、選手として活動しているときは、いかに自分が歯車の中でうまく立ち回れるかを強く考えているんですけど、面白いことに監督になると、選手のこと、スタッフのことすべてを把握、知っていることが求められ、意識するようになるんですよ。様々な分野の知識を知っていないといけない。選手のときは自分のことだけを考えていればいいわけですから。このバランスをとっていかないと強い集団、勝つ集団を作れない。そういった意味で言うと引退後に活躍できている人、つまりビジネスマンとしても活躍できている人と言えるのかも知れないですね。ただ、相当難しいと思いますけどね。選手をするよりも。私の場合は、キャプテンもやってきましたし、周りをよく見るということはやってきていても、今の時点でも、結構気使っているわけですよ。例えば、この通訳ちゃんと訳しているの?とか(笑)これは癖ですね。(笑)以前、私が、右から攻めろ!といっているのに、通訳が左から攻めろ!といってしまうというようなことが少しありましたけどね。(笑)


―お隣で鈴木さん(通訳)が苦笑いされていますが(笑)多方面に常に気を配られていること、よく勉強して物ごとを知っていることがマネジメントにおいてとても重要なんですね。私自身も勉強になります。

―これからも益々のご活躍をお祈りしています。本日は本当にありがとうございました。

こちらこそ、ありがとう。貴社とあなたの末永い発展を心から願っています。


 今後も、スポーツ界を巻き込んだ様々なイベントや、各プロスポーツ協会・団体と連携した共同企画の実施等を通して、「スポーツが持つ可能性を様々なフィールドで発揮する」という理念の実現に向かってまいります!

2018.6.12 スポーツフィールド 鶴巻

株式会社スポーツフィールドでは一緒に働く仲間を募集しています
6 いいね!
6 いいね!
同じタグの記事
今週のランキング