目次
・カスタマーサクセス抜きに、ビジネスを語れない時代に
・ニットのカスタマーサクセスは「企業の事業推進の起爆剤」
・ニットのカスタマーサクセスを支えるのはHELP YOUのチーム
・大切なのは、「愛」をもってクライアントに向き合うこと
株式会社ニットは主力サービスのHELP YOU(ヘルプユー)で、人材不足などの課題を抱える企業に対し、人的リソースと業務効率化などのソリューションを提供しています。サービスを継続的に利用してもらうために重要となるのが「カスタマーサクセス」。日本ではあまり知られていない職種ですが、今後ビジネスにおいて欠かせない存在になるといわれています。
ニットでは、この業務を担う社員を増員し、カスタマーサクセス部門をさらに強化したいと考えています。
そこで、ニットのカスタマーサクセス担当者である平島奈美さんに、カスタマーサクセスが求められる背景や、HELP YOUが目指すカスタマーサクセスの在り方などについて聞いてみました。
カスタマーサクセス抜きに、ビジネスを語れない時代に
—ニットが運営しているHELP YOUについて教えてください。
HELP YOUは、企業が本来注力すべきコア業務に集中できるように、その企業でやらなくてもいい業務、つまりアウトソーシングできる業務を、オンライン上にいる専属アシスタントが代行するサービスです。さまざまな職歴やスキルをもった専属アシスタントが、営業、経理、人事・採用、総務、ECサイト・メディア運用など、幅広い業務をサポートしています。
HELP YOUの特徴は、単発の業務を請け負うのではなく、継続的にクライアントの事業成長をサポートしていることです。依頼された業務だけを行うのではなく、その背景にある根本的な課題を解決することを目的としているので、業務改善などの提案もしています。
—平島さんはニットでカスタマーサクセスを担当しているそうですが、そもそもカスタマーサクセスとはどんな職種ですか?
カスタマーサクセスは、顧客に継続してサービスを使ってもらい、実現したいことを達成してもらうために、顧客に能動的に関わっていく職種です。
すでに多くの企業が導入しているカスタマーサポートが顧客からの問い合わせやクレームに対処することを目的としているのに対して、カスタマーサクセスは、問題を発生させないように先回りして、顧客の課題を解決したり情報を提供したりすることで、「顧客の成功体験」づくりをサポートすることを目的としています。
カスタマーサクセスの概念はアメリカで生まれたものですが、その背景には、シェアリングエコノミーサービスが浸透し、サービスや商品が「買い切り型」から月額など定期支払いの「サブスクリプション型」に急激に移行していることがあります。
サブスクリプション型のサービスでは、利用者にそのサービスを「使いにくい」「必要ない」と思われると解約につながります。常に解約と隣り合わせというシビアな状況のなかで、顧客にその価値を理解してもらうためのカギを握るのが、カスタマーサクセスなのです。
ニットで運営するHELP YOUもサブスクリプション型のサービスなので、カスタマーサクセスは必須だと認識しています。
—アメリカでは人気の職種らしいですね。
LinkedInの調査によると、アメリカで成長中の職種の第4位がカスタマーサクセスマネージャーです。それだけ、アメリカでは注目されています。
カスタマーサポートによって解約率を下げることはできますが、そこから利益を生み出すことはできません。世界のビジネス構造が大きく変わりつつある中で、日本でもサブスクリプション型のサービスがもっと増えていくことは確実です。「どれだけ長く使ってもらうか」にフォーカスしていないサービスは類似のサービスに淘汰されてしまい、事業が立ち行かなくなることは目に見えています。
ですから今後、日本でもカスタマーサクセスの知識やノウハウをもった人材は、どこにいっても求められるようになると思います。戦略コンサルティング・事業設計・業務改善の視野とスキルが身につくので、そういった方面でも活躍できると思います。それだけ、将来性のある重要なポジションであることは間違いないですね。
ニットのカスタマーサクセスは「企業の事業推進の起爆剤」
—ニットではHELP YOUのクライアントをどのような形でサポートしていますか?
クライアントと定期的にミーティングを行うことで、悩みや課題を共有しています。相談を受けるというよりは雑談しながらコミュニケーションをとっている感じですね。抱えている悩みや課題、理想とする形やイメージするゴールをざっくばらんにうかがって、それらを踏まえて取り組む課題の優先順位を考え、「ここから始めてみませんか?」と提案しています。
—具体的には、どんな提案をしているのでしょうか。
たとえば、あるクライアントから販売のレポート作成業務を依頼されました。そこからさらにお話をうかがっていくと、そのクライアントが本当に解決したい悩みは、そのレポート作成がすべて手作業で行われ、面倒な関数の処理を必要とするものだったので、ノウハウをもっている人でないと作成できないということだと分かりました。
これに対しHELP YOUでは、1日7時間かかっていたレポート作成作業を半自動化するとともに、属人化していた業務を誰でもできるような仕組みに変えて、業務コストを大幅に下げることに成功しました。
次のステップとして、作成したレポートをアクセス解析して有効活用することを提案しました。そこからさらに、売上をのばすためのコンテンツ作りを提案して、そのために必要なコンテンツライティングを代行して……と、違う部署へのサービス展開とともに、本来企業として解決したい課題であった事業成長にかかわるコアな課題解決へと提案を進めていきました。
—ニットのカスタマーサクセスは、企業にとってどんな存在だと思いますか?
ひと言で言うと、「企業の事業推進の起爆剤」だと思います。
多くの中小企業では人手不足が深刻化し、少子高齢化で労働生産性人口が減少していく中で、ICT化の必要性を感じています。とはいえ、そのリテラシーがないため業務改善に手が回らないところがほとんどです。人手が足りずノンコア業務に追われて、利益を生むために本来取り組まなくてはいけないコア業務に集中できず、企業の事業推進のスピードが遅くなっています。かといって、人を雇う余裕はないし……といった状況です。
HELP YOUが目指しているのは、こういった課題を抱えている企業がコア業務に集中し、社員が企業価値をつくっていける環境づくりをサポートすることです。企業が抱える悩みや課題は、状況によって変わります。常に変動する課題を解決するために、企業に伴走するのがカスタマーサクセスの存在意義だと思います。そして、それぞれの企業が抱えている課題やニーズに対して、課題のフェーズに合ったHELP YOUの活用方法を提案し、成長をサポートすることがHELP YOUの価値だと考えます。
ニットのカスタマーサクセスを支えるのはHELP YOUのチーム
—何社のクライアントを、どのような体制でサポートしているのでしょうか。
現在、クライアントは約200社で、社員としてカスタマーサクセスの業務に携わっているのは私一人です。とはいっても、もちろん私一人で対応しているわけではなく、HELP YOUメンバーで構成された、総勢約40人のカスタマーサクセスチームで対応しています。
その中で私は、カスタマーサクセスのディレクションをしています。クライアントとの定期的なミーティングや、ニットのメンバーと行う週1回のオンラインミーティングで挙がった課題などから改善策を考え、カスタマーサクセスチームのメンバーに動いてもらいながら実行しています。
また、HELP YOUには「顧客カルテ」というナレッジデータベースがあり、HELP YOUのスタッフが、各クライアントから請け負っている業務や課題、発生したトラブルなどをこまめにアップしていて、重要なことはChatWorkの私のところに自動通知されるようになっています。細かなトラブルに対応しているのは、カスタマーサクセスチームのメンバーです。
—その仕組みを考えたのは、平島さんですか?
仕組みを設計したのは私ですが、それを実装できるように開発したのは、HELP YOUの中にいる開発エンジニアです。
—つまり、平島さん自身もHELP YOUを活用しているということですね。
そうなりますね。カスタマーサクセスの仕組みづくりも業務も、すべてをHELP YOUで行っていることになりますから。
それだけでなく、HELP YOUの活用方法を発信するために、HELP YOUのスタッフでライティングチームをつくり、公式サイトで活用事例を紹介したりメールマガジンを作成したりもしています。
HELP YOUには、いろんなバックグラウンドをもつ優秀なスタッフが所属しているので、スタッフのスキルを合わせると、ほとんどの業務をカバーできるのです。
大切なのは、「愛」をもってクライアントに向き合うこと
—どんなときに、この仕事をしていてよかったと思いますか?
「HELP YOUありきで事業戦略を立てている」「HELP YOUがないと業務がうまく回らない」と言われると、クライアントとパートナーシップを築くことができていると実感しますね。そんなときは「事業推進の起爆剤になれている」と、やりがいを感じます。また、ビジネスコンテストで優勝したクライアントさんから、「HELP YOUがあったから優勝できた」と感謝されたときは、うれしかったですね。
それから、自分が成長し続けていると実感するときや、新しいことにふれてワクワクしているときも、この仕事をしていてよかったと思います。
—平島さんが目指す、カスタマーサクセスチームとは?
「愛」のあるカスタマーサクセスチームをつくりたいですね。表面的な対応では本当にクライアントが抱える課題を解決できません。心から信用していない人に、本当の悩みは打ち明けないですよね。それはクライアントも同じで、信頼関係がないと相談してくれないと思います。
どうやって信頼関係を築くのか。それは、どれだけクライアントのことを考えているか行動で示すことです。その行動が、提案だったり、訪問してお話するコミュニケーションだったりするのかもしれません。「こんなに自分たちのことを想ってくれているんだな」と感じていただければ、本当の意味でのパートナーになれると思います。
たとえば営業をしていて、「本当はうちのサービスじゃないほうが、この企業にとっていいのでは……」と感じつつも、利益を優先して自社のサービスをすすめ、心にモヤモヤを抱えている人は少なくないと思います。そういう人たちこそ、クライアントに寄り添っていたいという想いが強いはずです。
ニットのカスタマーサクセスでは、どこよりもクライアントにだけ向き合って、「クライアント・ファースト」で動くことができます。もちろん、事業なので数字も大事ですが、誠意をもってクライアントに向き合っていけば、数字は後からついてきますので。
—最後に、ニットのカスタマーサクセスに興味がある人に伝えたいメッセージをどうぞ。
カスタマーサクセスは、とても将来性のあるポジションです。その市場価値はどんどん上がっていくと思います。さらにHELP YOUでは、成長へのコミットメントが強いクライアントをサポートしているので、さまざまな業界の最先端のケースにふれる機会が多く、自分も一緒に成長していけると思います。
カスタマーサクセスには、決まった答えやゴールはありません。だから、失敗してくじけることもたくさんあると思います。そのたびに自分の思考フレームをアップデートしなくてはならないし、自分の引き出しをどんどん増やしていかないと追いつきません。そうやって、自分のデータベースをブラッシュアップしながら、前進していける人を求めています。
また、私は奈良県に住んでいて、クライアントとのやりとりはオンラインが中心になっているので、クライアントを積極的に訪問して、どんどんコミュニケーションをとってくれる人に来てもらえたらうれしいです。
まわりには、ニットの他のメンバーやHELP YOUのスタッフがいます。心が折れそうなときや困ったときは一人で解決しようと思わないで、私たちに頼ってほしいですね。
HELP YOU ライター:小笠原綾子