AIは魔法のツールじゃない。答えではなく「聞き方」を一緒に考える相棒だ──未経験からGASを操る“AIの民主化”と、部署を越え挑むキャリアの軌跡
プログラマー、総務、マーケティング部門でのシステム・データ活用を経て、AIプロジェクトの最前線へ。未来の設計図(0→1)を現場の力に変える(1→100)仕掛け。現場のつまずきに寄り添い、自走する「AIマスター」を育てる一人の女性の挑戦。
「ここまでは自分で作れたんですが、最後だけ動かなくて、、」
そう言って事業戦略室の和泉さんに相談に来たのは、プログラミング経験のない社員だった。
1か月前までは、AIを文章の要約や壁打ちに使っていた社員が、今では自分の業務を自動化する仕組み(GAS)を自ら作っている。
「質問の内容が変わったんです。以前は『AIで何ができますか』だったのが、今は『ここまで作ったので、次はどうすればいいですか』になりました」
前回公開した記事では、
近藤さんがTAPPのAIに対する思想を語った。
今回は、その思想を現場に根づかせる和泉さんについて追っていきます。
「未来の完成形を見る人(0から1)」が近藤さんなら、和泉さんは「未来に向かうために今日なにが現場でつまずいているのかを見る人(1から100)」。
TAPPのAI思想を現場に定着させ、メンバーを「自律的に自走できる人」へと引き上げる、彼女の伴走スタイルに迫ります。
プログラマー、総務、マーケ。
一見バラバラな経歴が、すべて今の武器になる
現在、AIユニットにて現場の個別フォローアップや個別アプリの開発、実証検証を主導する和泉さん。その経歴は、一見すると非常にユニークです。
IT企業のプログラマーからキャリアをスタートし、TAPPに転職後は総務、マーケティングを経験。今年7月に新設されたAIユニットへと配属されました。一見バラバラに見える経歴ですが、これが実は「今のAI推進にすべて線でつながっている」と彼女は語ります。
「まず、プログラマー時代の3年間があるから、ベースのコーディング理解や、AIが書いたコードの適切さ、そして何より安全にシステムを動かすためのセキュリティ等の設計思想が頭に入っています。
次に経験した総務では、『何でも屋さん』として広く動きながら、社内システムの設定やSalesforceの管理・導入を担当しました。ここで全社のあらゆる業務フローを把握し、現場が何に困っているかを広く深く汲み取って、それを具体的な『仕組み』に落とし込む力が身につきました。
そしてマーケティング部では、データの分析能力や、営業部などと連携して全体設計や仕組みを作る力、そして業務をプロセスに分解する力を培いました」
・開発者の視点(IT)
・現場の困りごとを汲み取り、仕組みに落とし込む力(総務)
・全体を俯瞰して仕組み化し、業務をプロセス分解する力(マーケティング)
「どれか一つが欠けても、現在の『現場に寄り添うAI推進』は成り立たなかった」と和泉さんは言います。
すべてのキャリアを自らの血肉にしてきた和泉さんだからこそ、
エンジニアと非エンジニアの架け橋となり、誰よりも現場に並走できるのです。
「変化を愛する」からこそワクワクする。飽き性が生む強力な推進力
「私、実はすごく『飽き性』なんです(笑)」
そう笑う和泉さんですが、その言葉の裏には、圧倒的な成長欲求と熱量が隠されています。
「ずっと同じルーティンワークを繰り返すより、常に新しい知識を学び、環境の変化に揉まれている方がエネルギーが湧いてくるタイプなんです。
何より、目の前の誰かが困っている課題を、自分のアイデアと手を動かすことで解決し、新しい仕組みを作ること自体にたまらないワクワクを感じるんですよね。課題を解決して、みんなの仕事が楽になる仕組みを作り上げることが、私にとって最大のモチベーションです」
TAPPは、本人の意欲や強みに合わせて、
柔軟に新しいミッションを与えてくれる会社。
「転職をしなくても、1つの会社にいながら何度も転職を重ねているかのように、新しい挑戦や幅広い経験を積ませてもらえる。私にとってはこれ以上ないほど飽きずに、常にワクワクし続けられる最高の環境なんです」
「教わる人」から「教える側」へ。
現場を変えた、できるようになるまでの“超・伴走”
近藤さんがAI導入の種を蒔いてから約1か月。和泉さんが現場の推進リーダーとして加わり、社内のAI活用は「実務の自動化」へと急進化を遂げています。
その象徴が、各部署から自発的に手を挙げた能動的なメンバー約30名を集めた「AIマスター制度」です。この会では近藤さんがメイン講師として教壇に立ち、毎週メンバーに「AIを使った業務効率化の宿題」を課しています。
和泉さんは、講義の方向性を近藤さんと一緒に話し合いながら、講義についていけなかったメンバーのために「個別の補講」を行ったりと、できるようになるまで徹底的に伴走し続けています。
例えば、営業部のAさん。
最初は「Geminiで何ができるんだろう?」と、簡単な要約や調べ物程度にしかAIを使っていませんでした。しかし、和泉さんとの伴走が始まると、その日常は一変します。
「メンバーには、スクリプトの基礎知識や難しいコードの書き方は一切教えていません。
大事なのはそこではないからです。
伴走で教えるのは、
『AIへの質問の仕方(プロンプト)』と『自分の業務をプロセスごとに細かく分解し、言語化する力』。
Aさんが実務で『これを自動化したいけれど、どう指示すればいいか分からない』とつまずいたときには、画面共有で実際に対話し、プロンプトの組み立て方やつまずくプロセスを一緒に可視化して、自走できるまで徹底的に伴走しました」
この伴走を経て、
Aさんは劇的な変化を遂げます。
なんと、
GASを使って自社オリジナルの「ふるさと納税 寄付上限金額シミュレーター」を自作できるまでに急成長を遂げたのです。さらに、Aさん以外にも、「スプレッドシートの情報から自動で周辺地図や住所プレビューを取得する画期的なシステム」を実装するメンバーまで現れました。
「最も感動したのはAさん含めメンバーの姿勢の変化です。
以前は『教えてもらう側』だったメンバーが、今では自分の部署に戻り、周りのメンバーに対して自発的に『教える側』として周囲を巻き込み始めている。
つまずいても決して見捨てず、できるようになるまで一緒に伴走してくれる人がいるからこそ、社員が自信を持ち、組織全体へとAIの熱が波及していっているのだと実感しました」
TAPPが定義する「AIの民主化」とは?
「AIの民主化を進めています」
そう語る和泉さんに、シンプルに問いかけてみました。
──「AIの民主化」とは、具体的にどういうことなのでしょうか?
「現場で使える人を増やすことです。
一部の優秀なエンジニアや専門家だけがAIを独占して開発を進める世界では、本当の意味での変革は起きません。
なぜなら、業務におけるリアルな課題や非効率を最もよく理解しているのは、
毎日その業務と向き合っている現場の人間だからです。
現場の一人ひとりがAIを当たり前の道具として使いこなし、アイデアを自ら形にして自律的に課題を解決できるようになる。この『現場主導のボトムアップな解決力』を社内全体に広げることこそが、TAPPの目指す民主化なんです」
この民主化の加速に伴い、
より高度な『Claude(クロード)』を先行配布された一部のメンバーからは、
・顧客データをAIに分析させて「どの営業に、どのお客様を割り当てるのが最適か」を算出する、高度な「お客様マッチングシステム」
・フォルダ内のファイルを言葉だけで自動整理させるツール
・社内マニュアルをAIで曖昧検索できるチャットボット
などが、次々と現場主導で誕生しています。
AIは「魔法」ではない。言語化の壁を越え、一緒に成長する「相棒」を育てる
すべてのプロセスが平坦だったわけではありません。和泉さんが現場に深く入り込む中で突き当たる「最大の壁」が見えてきました。
それはシステムではなく、
人間側の「言語化能力」でした。
「よく『AIを使ってみたけれど、思ったような回答が来ないから使えない』と諦めてしまう人がいます。でも、AIは人間の曖昧なニュアンスを勝手に察してはくれません。
『何のために、どういう前提条件で、どんな出力を求めているのか』を、論理的に整理して言葉にする力がどうしても必要になります」
だからこそ、和泉さんの役割は、
「完成されたコードを与える人」ではありません。
「本当に大事にしたいのは、『自分のアイデアを形にできる人を増やすこと』です。
その先に、各部署がより本質的な業務に時間を割けるようになり、最終的には会社の売上や成長への貢献につながっていく。そう思っています」
「AIは、指示を完璧にこなしてくれる都合の良いスーパー執事ではありません。こちら側の『言語化力』によって、優秀にもなれば、頼りなくもなる。まさに一緒に走って成長させていく『相棒』なんです。
そのマインドと対話のコツを現場にしっかり根付かせ、一人で走れるようになるまで横に居続けることが、私のいちばん大切な役割ですね」
3年後の未来。
自ら手を動かし、変化を楽しめる仲間と共に
「3年後には、AIが完全に日常に溶け込み、人間が指示を伝えるだけで、AIエージェントが裏側で自動的に業務を完結させる世界を作りたい」
和泉さん、そして近藤さんが描くAIユニットのビジョンは、
どこまでも本気で、かつ現実的です。
AIにより単純業務が極限まで効率化されれば、
社員の可処分時間に大きな「隙間」が生まれます。
「その生まれた時間を使って、新しい事業の立ち上げや、もっと人間にしかできない付加価値の高いクリエイティブな仕事に全員がフルコミットできるようにしたい。AIの力を使って、TAPPという会社全体の成長スピードを、何倍にも加速させていきたいですね」
現在、AIユニットは、近藤さんが「全社周知や新規事業・上層部との連携」といった「0から1のビジョン設計」を担当し、和泉さんが「現場の個別フォロー・実証検証、個別アプリ開発」という「1から100の現場定着」を担う、強力なツインエンジンで稼働しています。
今後、この挑戦をさらに加速させるため、
AIユニットでは新たな仲間を募集しています。
求めるのは、システム開発の基礎知識や、安全に動かすための設計思想を持ちながらも、変化を恐れず自らアクションを起こせる人材です。
「私たちが求めているのは、指示を待つ人や、外からアドバイスを語るだけの評論家ではありません。
『こんな仕組みがあったら面白そうですよね!さっそくプロトタイプを作ってみました』と、フットワーク軽く自ら手を動かし、変化そのものを全力で楽しめる『圧倒的な主体者』です。
・仕事が好き
・新しいことを学ぶのが楽しい
・知的好奇心の塊のような人
そんな方にとって今のTAPPは最高に刺激的でたまらないフェーズだと思います」
変化を恐れるどころか、その波を誰よりも楽しんで乗りこなしてきた和泉さん。
彼女が伴走するこの強力な変革のチームで、
あなたも当事者として、未来の組織を一緒に創り上げてみませんか?