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RightDesignの2023年度を振り返る

2023年は、Right Designにとって躍進の年となった。グラフィックやウェブから映像、空間、UI/UXまで総合的なデザインを手掛けるのはもちろんのこと、さまざまな企業や自治体に伴走しながら課題や目指すべき方向を考えるなど、その領域はさらに広がろうとしている。

デザイン会社でもなければ広告代理店でもなく、コンサルティングファームでもない──果たしてRight Designはいま何に取り組んでいるのだろうか。2023年度を振り返りながら、CEO兼クリエイティブディレクターの小川貴之とUI/UXデザイナーの山道柊がRight Designらしいデザインの考え方を振り返る。

小川 貴之
Right Design - CEO / Creative Director
2013年株式会社博報堂入社。TBWA\HAKUHODOを経て、スタートアップ、The Breakthrough Company GOを経て現在はthe Right Designの代表を務める。スタートアップや企業の新規事業のブランディング、コンセプト立案から、プロダクトの UI、メディアへの広告戦略までデザインをベースに他分野にまたがりながら活動。読売広告大賞2022、ACC Creative Award 2017ゴールド、Cannes Lions Design Bronze、Tokyo Midtown Award 2016 グランプリ、同賞2015優秀賞、小山薫堂賞など。
山道 柊
Right Design - UI/UX Designer
多摩美術大学統合デザイン学科卒業。新卒で当時10人程度の建設業スタートアップのインハウスデザイナーとして、キャリアをスタートさせ、コーポレート・サービスの総合的なアートディレクションを担当。2022年にRight Designに立ち上げからジョインし、広義のUI/UXデザインやWebデザイン、動画やモーションの作成、ロゴデザイン、広告クリエイティブ、イラストレーションなど、多岐にわたるデザイン業務を担当。幅広い経験を活かし、クライアントの理想と顧客の課題の両軸からユーザーエクスペリエンスを最大化するための柔軟なデザインでビジネスの成功に貢献することを目指す。


山道:2023年度は、さまざまなプロジェクトに携わった年でした。ぼくたち自身もRight Designの強みがわかってきたような気がします。今日は2023年度を振り返りながらRight Designがどのようにデザインやブランディングに携わっているのか整理できたらと思います。

小川:オフショア開発を強みとする「Enlyt」のようなスタートアップから京丹波町のような地方自治体、大きな事業会社に至るまで、領域や規模を問わずたくさんのプロジェクトが形になったよね。2023年の仕事をまとめたリールを見返してみても、自分たちのスタイルのようなものが明確になってきたように思う。大きく分けると「クリアにすること」「一体化すること」「手を動かしつづけること」の3つがぼくらの強みでありスタイルだと言えるかもしれない。

2023年仕事の一部をまとめたリール動画はこちら



クリアにすると、浸透する

山道:「クリアにすること」は何をすればいいかさえもモヤモヤしている状況からデザインを通じて課題やビジョンを明確にすることですね。Right Designはデザインプロダクションだと思われることも多いんですが、実際には、依頼の時点ではウェブサイトやムービーなど予め決まったアウトプットが定まっていることの方が少なく、クライアントの方々と議論しながら課題をクリアにしたり、どんな施策を行うべきか整理することからプロジェクトを進めていったことも多かったと思います。

小川:課題がモヤモヤしている状況だからこそ、デザインが役立ったともいえる。たとえばEnlytや三菱地所の住まいリレーのプロジェクトでは、コンセプトやビジョンを具現化したようなモチーフをつくったことで、プロジェクト全体が大きく進んでいったよね。

Enlytでは、リブランディングに携わるにあたってVIやMVVの策定、ウェブサイトのリニューアルに取り組んだけれども、スマイルマークのモチーフに「結晶化」したことで、目指すべき方向性がクリアになった。日本の日の丸を表す円とEnlytが開発拠点を置くベトナムの国旗を象徴する星をマークの“目”として使うことで、日本とベトナムをつないでいく姿勢を表現されたことはもちろん、彼らと過ごしていて感じたポジティブなカルチャーをスマイルマークと楽しくて軽やかなトンマナに込められたと感じている。あとは、様々なオフショア開発会社が、トーンとしてクールで技術力の高さを表現している中、「一緒に仕事すると楽しそう」という理由で選ばれると、埋もれないのではないかと思った。

株式会社Enlyt リブランディング

山道:ものすごくシンプルなスマイルマークではありますが、だからこそみんなが理解しやすいし社内にも浸透するようなものになったと思います。デザインによって会社の性格やムードが可視化されたからこそ、会社というブランドがクリアになっていったというか。

小川:「浸透」もキーワードのひとつかもしれないね。ロゴのような制作物をクライアントに納品して終わりというより、それがきちんと社内に浸透すること、人からもらったものではなくて自分で使いこなしてもらえるような状態をつくることが大事だな、と。



小川:三菱地所の住まいリレーのプロジェクトも、まさに浸透を考えさせられるものだった。これまで展開されてきたサービスやそのコアにある思想を「バトン」というモチーフでつないだことで、社内でも多くの人が理解しやすくなったんだよね。実際には、ロゴをつくるだけではなくて販促ツールや一般には公開されない契約書類のフォーマットのUIなどさまざまなアウトプットをつくったけれども、バトンのモチーフがあったからこそ伝えたい表現もクリアになっていった気がする。

もちろんぼくらの仕事に限らずデザインすることは情報をクリアにしていくことでもあるけれど、ぼくらはクライアントと一緒に課題をクリアにしていくプロセスを大切にしていると思う。きちんと一次情報に触れたり仮説を立てたりプロトタイピングしたり、クライアントとともにプロセスを共有していくことが大事なのかな、と。


「三菱地所の住まいリレー」リブランディング


「対話」から「共話」へ

山道:プロセスの共有は、2つめの「一体化すること」ともつながっていますよね。ぼくらは受注/発注の関係性のなかでプロジェクトに取り組んでいくというより、一つひとつプロセスを共有することでクライアントと一体化して溶け合いながら議論していたと思います。

自分たちは『寄生獣』の「ミギー」のような存在なんじゃないかと話していたこともありましたね。ミギーが主人公の体内に入っていくことで主人公の能力を拡張していったように、ぼくらも半ばクライアントの内側に入り込みながら、クライアントの方々がもっと力を発揮できるようデザインという技術を通じてサポートしていたような気がします。


小川:やっぱり、いい関係性をつくることが重要だと思う。前提としてお互いに意見を交わせる「対話」の関係も重要だけれど、ラリーのようにそれぞれが意見を言い合うだけだと相乗効果は生まれないし、言われたものをつくるだけの関係に終わってしまうことも少なくない。

他方で、情報学者のドミニク・チェンさんが著書『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために』で紹介している「共話」の関係性をつくれるとクライアントと一緒によりよいものをつくっていける気がしている。

相手の発言を待ってターン制のように会話を重ねるのが対話だとすると、完結しない発話によって相手からも発話を引き出し、相互に補完しあうコミュニケーションが生まれるのが共話だと言われていて。デザインやブランディングにおける課題解決を考えてみても、共話的な関係をつくることで広がりが生まれると思う。

引用元:未来をつくる言葉: わかりあえなさをつなぐために


山道:先方のブリーフィングにこちらが打ち返すだけではなくて曖昧な状態から一緒に課題を定義した方が、お互いに話しやすいし動きやすくなりますよね。その分、アウトプットの形態も自由に変えられるようにもなります。アウトプットの質を考えてみても、共話的な関係のなかでこそ個性的なアウトプットを生み出せる気がしました。

小川:同時に、自分たちが負う責任も大きくなっていく。ただ自分の考えたデザインについて説明できればいいだけではなくて、アウトプットがもたらす効果に対しても責任を負わなければいけないから。
しばしばデザイナーは仕事の“下流”にいると考えられてしまうことも多いけれど、視覚言語を扱いながら課題を定義したり悩みをクリアにできるデザイナーは、むしろ“上流”でこそ活躍できるとも思う。2023年はAIの発展が大きなニュースになった年でもあったけれど、単にきれいな絵をつくるだけなら早晩AIに駆逐されてしまうかもしれないわけで。
上流・下流や受注・発注といった概念にとらわれず、クライアントやチームと共話的な関係をつくることがこれからのデザイナーの役割でもあるのかもしれない。

手を動かす、世界が動く

山道:「クリアにすること」や「一体化すること」と言うと抽象的な話をしているように聞こえてしまうかもしれませんが、2023年はとにかく手を動かしつづけた年でもありましたね。どんなプロジェクトにおいても、まずぼくらが率先してプロトタイピングを行ったり、まず手を動かして形にしたりすることが多かったと思います。

小川:ただ「共話関係をつくりたい」と言うだけで関係性が変わるわけではないからね。とくにデザイナーが信頼を形成するには、なによりつくることが大事になる。まずは自分たちで手を動かし、人に見せてフィードバックをもらう。プロトタイピングを重ねることで、やりたいことも目指すべき方向もクリアになっていくはず。

京丹波町タウンプロモーション戦略
ファミリーマート 新プライベートブランド「ファミマル」

山道:とくに京丹波クリスマスマーケットのプロジェクトやファミリーマートのプライベートブランド設計は、プロトタイピングがなければ実現しなかったものだと思います。たとえば京丹波なら何度も現地に通って地元の方々と親交を深めたりどんなものをつくれるか検証を繰り返していましたし、ファミリーマートのPBを立ち上げたときは都市型店舗やオフィス店舗、地方店舗など種類の異なる多くの店舗に通いながら、どんなプロダクトが最適なのか考えていましたよね。

京丹波クリスマスマーケットアーカイブムービー

小川:「汗をかく」という言い方をすると古臭く聞こえてしまうかもしれないけど……でも、自分たちで手を動かしてプロトタイピングを行うからこそ、クライアントのサービスやプロダクトへの理解も深まるし、課題をクリアに捉えられるようになっていく。“待ち”の姿勢になるのではなく積極的に手を動かしていくことこそが、デザイナーの役割でもあると思う。

ただ抽象的な議論を重ねるのではなくプロトタイピングによって具体化するからこそ、空理空論で終わらずにプロジェクトも前に進みやすくなる。実際、京丹波のプロジェクトではぼくらがデザインを活用しながら町の魅力ややりたいことを可視化したことで、町役場の方々がこれまでよりもアクティブに動くようになったらしくて。
さまざまなしがらみや状況のなかで変化しづらくなっていたものをデザインによって変えていけるのはすごく面白いし、AIによってデザイナーの仕事がなくなると言われたりするいまだからこそ、デザインの可能性を感じさせられたよね。

世界をよりよくするためのデザイン

山道:Right Designは2022年に創業したわけですが、約2年かけて自分たちがどんなことをやりたいのか、どんなことをできるのか少しずつ言語化できるようになってきた気がしますね。本来は最初から言葉にできるべきなのかもしれませんが……。

でも、当初よりも幅広い領域でデザインが機能するし求められている実感も得られました。最初は何をつくるか明確になっていることが普通だと思っていたんですが、むしろ何をつくればいいかわからなかったり、そもそも何が問題かわからなかったり、どうすればいいかわからないけどなんとなく困っていたり──曖昧な状況こそ、デザインの価値は高まっていくのかもしれないですね。

小川:2023年はありがたいことにメディアやイベントに出させていただく機会がいくつかあったのだけれど、デザイン業界に限らずさまざまな人と話す機会が増えたことで、いまの社会におけるデザイナーの役割や、デザインの可能性について考えることも多かった。

とくに近年はAIはもちろんのことモビリティや医療、環境、教育などさまざまな領域で技術的な発展が進みビジネスの環境も大きく変わっているし、社会やライフスタイルの変化によって人の価値観もどんどん変わろうとしている。世界をよりよい方向へ変えていくような取り組みをもっとサポートできたらいいなと思うんだよね。

少なくとも自分にとってデザインは目的ではなく、あくまでもツールにすぎない。偉そうに聞こえてしまうかもしれないけれど、2024年はこのツールを使いながら、企業や社会が抱えている課題をクリアにしていきたいし、もっといい世界をつくっていきたいと思います。



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