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デジタルマーケ担当とリアルマーケ担当は、なぜ仲が悪いのか? ホコ×タテ対決 第2回:樋口 進

■ 二種のマーケッターとそのルーツ
デジタルマーケティングという言葉が出現して以来、実は困った現象が起きている。元々企業内でマーケティングをやっていた担当者、プロダクトマネージャー、マーチャンダイザー等と、デジタルマーケッターとの間の「軋轢」が絶えないのである。なぜこの二者がなかなか相容れないのか?その理由を探ってみよう。
一番の違いは彼らのルーツにある。リアルマーケッター(以下RM)のルーツは人とライフスタイルと商品であり、デジタルマーケッター(以下DM)のルーツはしくみ、プロセスと指標である。ここに根本的な違いがある。「誰がどんなものを欲しがるか?」を考える志向と、「どの段階で何をすればどの数値が上がるか?」を考える志向の違いである。

■ 縦割り組織の弊害
しかし、この二つは元来、表と裏の関係にあり、相互に矛盾するものではないはず。それなのに歩み寄れない理由の一つに組織の問題がある。実はこの問題は、昔からあった商品部門vs営業・販売部門の対立構図に似ているのだ。
商品部の人間は商品を特定のターゲットに向けて開発する。どこで売れば最も売れるかを考えてチャネル戦略を考えたり、小売業の場合は陳列や演出も設計する。しかし、彼らはお客が実際に購入に至るまでのプロセスには責任を持っていない。自分の開発した商品が他と比べて売れたかどうか?が責任の範疇である。
これに対して、デジタルマーケッターは商品に起因する販売不振には責任を持たない。お客の購買プロセスを観察して、どこに穴があるか?どこで離脱するか?を見定めて対策を打つのが仕事である。

何がギャップを生んでいるのか?
結局のところ、部門の役割・部門利益が異なるからと言ってしまえばそれまでなのだが、これを打ち破る担当が出てこないことには、会社は変わらない。
RMがデジタルに近づけないのは、買うお客と買わないお客という二元論でモノを見ているからだ。見ている数字も主に売上、粗利益、原価、せいぜいが客単価である。
DMがリアルに近づけないのは、商品の魅力や品揃え・売場の魅力を数値化できていないからだ。彼らが見ているのはあくまで見込み客の行動プロセスの数値であり、なぜその行動に至ったか?の原因を分解できていない。しかし、原因を分解するには「購買マインド」「市場特性」などに関する知見がいる。商品をもっと知る必要があるのだ。

掘り下げれば同じ答えに行き当たる!
以下、現在のRMとDMの比較表を掲載する。RMは顧客のライフスタイルとかだけではなく、買い方のパタンをつかむこと、DMは買い方・購買行動の背景に関心を持つこと…それによって、両社の溝は狭まるはずだ。願わくば、左右の両方を兼ね備えた人材が現れることを望む。


株式会社シンクエージェント
代表取締役 社長
樋口 進

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