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(講師研修)~南海トラフ巨大地震・富士山噴火 首都直下地震に備える~「大地変動の時代」 を賢く生き抜く方法と 「100年無敵の勉強法」(前編)


坪田塾では、「一流に触れる」というテーマで、毎年、様々なジャンルの第一人者の方に講師研修をお願いしています。

今回は、地球科学、環境学の面から、これから日本に起こることと生き方、これからの生徒さんたちに伝えていきたいことについて、京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授 鎌田浩毅 (かまた ひろき)先生に講演をしていただきました。

後編には、鎌田先生の講義名物、リアルタイムQ&Aまで掲載しておりますので、お楽しみください!


略歴

●演題:

南海トラフ巨大地震・富士山噴火 首都直下地震に備える
「大地変動の時代」 を賢く生き抜く方法と 「100年無敵の勉強法」


●演者:京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授 鎌田浩毅 (かまた ひろき)


●講演の概要:

近い将来「南海トラフ巨大地震」 「富士山噴火」 「首都直下地震」 が必ず発生する。
2035年±5年に予想される南海トラフ巨大地震は、東日本大震災の10倍の被害をもたらし、全人口の半数 6000万人が被災する。 また昨今、地球温暖化で気象災害が激化しているが、 脱炭素とカーボンニュートラルの政策は、 大噴火のもたらす地球寒冷化でひっくり返る可能性がある。 「京大人気 No.1 教授」 を24年間続けた「科学の伝道師」 が、 最先端の地学が示す災害予測と減災対策を開示し、賢く生き抜く知恵と、 それに役立つ 「100年無敵の勉強法」 を提言する。


● 講演者の経歴:

1955年生まれ。筑波大学付属駒場高校卒業。 東京大学理学部地学科卒業。

1979 年通産省 (現・経済産業省)入省。

1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士。

2021年より京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授

☆専門は地球科学・火山学・科学コミュニケーション。

☆ 「京大人気No.1 教授」 の 「科学の伝道師」

☆週刊 「エコノミスト」 に 「鎌田浩毅の役に立つ地学』を連載中。


●著書 (サイエンス関係)に

『地震はなぜ起きる?』 (岩波ジュニアスタートブックス)

「京大人気講義生き抜くための地震学』 (ちくま新書)

『やりなおし高校地学』 (ちくま新書)

『地学ノススメ』 (講談社ブルーバックス)

『地球は火山がつくった』 (岩波ジュニア新書 )

『地学のツボ』 (ちくまプリマー新書)

『富士山噴火と南海トラフ』 (講談社ブルーバックス)

「首都直下地震と南海トラフ』 (MdN 新書)

『地球の歴史』 (中公新書、 上中下 全3巻) など。

●著書(教養関係)に

「100年無敵の勉強法』 (ちくまQブックス)

『新版 一生モノの勉強法』 (ちくま文庫)

『一生モノの受験活用術』(祥伝社新書)

『一生モノの英語勉強法』(祥伝社新書)

『座右の古典』 (ちくま文庫)

「武器としての教養』 (MdN 新書)

「理系的アタマの使い方』(PHP文庫)

理学博士の本棚』(角川新書)

『理科系の読書術』(中公新書)

『世界がわかる理系の名著』 (文春新書) (ちくま文庫) など。

YouTube 「京都大学最終講義」 の動画は 87万回以上再生中。



経歴について

(鎌田先生)
地学そんな好きじゃなかったけど、通産省に。ろくに仕事しなかったのに、「阿蘇山に火山の勉強してきてください」と言われ、火山にハマったんですね。

人生何が起こるかわからないなぁと。やりたいことが見つかるには、いくつか条件が合って、
まず1つ、火山という、目の前に存在するホンモノに出合えたこと。
2つ目に、良き先生に出会えた(おのこうじ先生)こと。話が上手で、面白かった。

その時は、阿蘇山へ行った。1000℃弱の溶岩の平野 九州の噴火で北海道に火山灰が積もった。
実物を手に取って論理的に話してくれて、それが実感できた。
好きなことが決まらないときに、焦ることはない、決まるときは決まるので。

ただ、そこには先生や、誰か介助してくれる人がいるから、見つけることができる。
阿蘇山で出合った先生が、自分にとってはメンターだった。いつどこで出会うかはわからないけど、そういう瞬間が、人生が見える瞬間でもある。

今、自分が本を書いているのも、英語の時間にちらっと見たバートランド・ラッセルから学んだ。興味を持って、派生していって、結果、彼のように本を書いたりしている。何を学ぶかという内容より、どう学ぶかが大事。

皆さんが教えているのも、コンテンツではないのかもしれないですね。

何を教えるのか

学力には、コンテンツとノウハウがあります。

コンテンツ:学習内容
ノウハウ:どう学ぶのか(勉強法、時間術、読書術、人脈術)

生徒さんが、「この先生素敵だな」と思えると、その子の人生が変わる。皆さんも普段の指導で、そういう機会に恵まれているはず。「活きた時間」と「一期一会」がキーワードです。

ちなみに、今日は、ノートに取るようなことはすべて資料にまとめてありますので、今日は、頬づえつきながら聞いて、驚いてショックを受けてください。

(一同) ~笑~

京都大学の最終講義について

最終講義ってたいてい振り返って懐かしむんだけど、僕はもっと火を噴いていて、「振り返ってる場合じゃない!ちゃんと勉強して生き残れ!」と、そういう話をしました。

講義はせっかくコロナ後の時代にもかかわらず集まっていますし、ここでしかない、生きた時間の現場だと思っています。だからライブで、何を話すか、対面で伝えるか。それが大事。
そこに合わせて自学自習ができるように資料などを用意したり、新書を書いたりしている。

大学の講義でも、その場のリアルな雑談の中から興味関心を持ってもらえたりする。

ちなみにその雑談を本にしろって学生が言うから本書いたんですね。こっちの本の方が地震火山の本よりはるかに売れるんです(笑)

(一同) ~爆笑~



地震について

今日のテーマはこちらですね(→板書)

・海
・陸
・火山
・トラフ
・地球温暖化


海の地震、陸の地震について

太平洋という1枚の大きなプレートが、海の下100kmで横に動いている。

同時に、日本列島は中国やヨーロッパ含むユーラシア大陸がある。

この境目で、太平洋プレートが大陸のプレートを引きずり込み、たまに跳ね返るのが海溝型地震。これが海の地震。

海の地震の影響もあって、大陸上の弱い断層に亀裂が入る。これが直下型地震。これは陸の地震。阪神淡路大震災もそれ。首都には19の活断層がある。

海の大地震(海溝型)を受けて、陸の地震(直下型)が活発化する、というのがセオリー。

東日本大震災のあと、震度4,5クラスの余震が全国で続いているのはこのため。

トラフ(海盆)と海溝は仕組みはほぼ同じ。


南海トラフ地震について

2011年の東日本大震災から、日本全体が地震と火山が”スタンバイ状態”になってしまった。
2035年±5年。必ず起きます。パス(抜け道)は無し。必ず。地球科学者全員の意見です。

過去、

869年にマグニチュード9という大地震が東北で起きた。311と同規模の津波あり。2011年の311は1000年ぶりの定期的な地震。

878年マグニチュード7(9年後)に関東南部地震。これは現代の首都直下地震に当たる。

888年マグニチュード9(さらに9年後)に仁和地震。これは南海トラフ地震に相当。2030年代にくる。

マグニチュードとは、地震のエネルギーの量。(1上がると32倍、2上がると1000倍)

東日本大震災は、海溝型地震で、岩盤が跳ね返ってしまって、跳ね返りすぎて東に引き延ばされてしまった。これストレスのせいで、陸の直下型地震が続いている(震度4くらい)落ち着くまでに100年。震災後直近30年くらいは震度5クラスが続いていく。


南海トラフ大地震のシナリオ

南海トラフ地震とは、①東海(静岡)、②東南海(三重、愛知)、③南海(和歌山~高知)の3エリアが連動して起こる地震。法則として、各エリアで連動して地震が起こる。これは間違いない。
連動の際、タイムラグ(時差)は20秒~2年と開きがある。

古文書の資料からの復元で、過去の南海トラフ地震は、

・1605年(慶長地震 M7.9)

・1707年(宝永地震 M8.6)

・1854年(安政南海地震 M8.4)

・1946年(昭和南海地震 M8.0・昭和東南海地震 M7.9)→この時、東海地震は休んでる

・2035年前後


被害の大きさ

広いエリアで震度6~7。震度7は、高層マンションは倒れないけど、中がぐちゃぐちゃ。ガラスが降ってくるとか、本棚、コピー機なんかはガンガン揺さぶられる。

とにかくアタマを守る。ライフラインは3日どころではない。一週間から1か月復旧までかかるので、とにかくそこに準備。

東京から九州まで6000万人が被災。どれだけ頑張って救助しても、被害が広すぎて間に合わない。時間がかかる。

津波は最大34m。11階建ての建物。高知県で最短3分で津波が到達してくる。3分で高層ビル11階の高さまで避難できますか?という話。

この、2035年前後に来る南海トラフ巨大地震を、「西日本大震災」と名づけました。わかりやすいから。地震は普通、発生してから名前が決まって、法律が決まって、復旧復興が進められていくけど、事前に備えなければ意味がないから、勝手に名前を付けました。


東日本大震災(「3.11」)との比較

被害総額:20兆円→220兆円

死者:2万人→32万人

被災者:50万人→6000万人

時期と規模がわかってるんだから、各自準備すべき。あまりにも被災人口が多く、規模が大きすぎるので公共の支援は間に合わない。もちろん、頑張って助けるんだけど、間に合わない。

みなさん、心の手帳に書き込んでください。

2035年は「大震災がもう起きるよ」

2030年には「そろそろ起きはじめるよ」と

これを教え子にも伝えてほしい。ちょろっとで良いから教養として伝えていただきたい。そういう心の手帳の情報をもとに、どう生きるかを選択し、生き延びてほしい。


火山の話

マグマだまり、というのが火山の下にある。マグマだまりが上がってくるとき(噴火前)に、

①低周波地震

②有感地震(マグマが火口に向けて上がる際にバリバリ通路を破る)

③火山性微動(マグマによる水蒸気で起こる揺れ)

が起こる。上空11kmには偏西風が吹いているので、噴火した際のいろんなものが西から東へ運ばれる。特に火山灰。

火山灰が積もるんだけど、めちゃくちゃ細かいガラスの破片なんですね。水で流そうにも排水溝が詰まってしまうのでできない。なので、袋に入れて海に捨てるしかないという非常に厄介なモノ。

火山灰が積もれば、水道水止まる、電車止まる、電気止まる、全てのライフラインが止まる。

スマホも基地局アウト。エレベーターもアウト。タワマンはかなり厳しい60階まで上り下りするのか?生活できないですよね?

富士山について

富士山って、万葉集とかで「きれいなもの」扱いだけど、じつは、賞味期限がある。5000年に1回崩れている。前回は3000年前だけど、誤差500年なんでね。地球科学ってそういうもんですね。

今はたまたまきれいなだけ(笑)

3000年前は、御殿場が(アウトレットはファッションの大事なメッカ、私大好きなんですが)、岩なだれに襲われた。山手線全周分のエリアが厚さ10メートルの土砂で埋まった。

約3000年前に南海トラフ地震で富士川河口断層が動いている。東日本大震災後の活発化した20の火山に富士山もちゃんと入ってる。


東海地震は起きないんじゃないですか?

「東海地震って、起こる起こるって言って、実は起こんないんじゃないですか?」という人がいる。
1946年で1回パスしてるので、この分のエネルギーがたまっている。だから2035年前後は確実に揺れる。東海は、南海トラフと一緒に確実に動く。

富士山はそこに連動して動く可能性がかなり高い。1707年の宝永地震(南海トラフ)の流れで噴火している。

平安時代の普通の富士山は、50年ごとくらいで噴火している。ただ、宝永地震で200年分貯めて噴火。ここ最近はその後300年動いていない。溜めすぎている。

311の4日後に有感地震が起きた。結果、富士山にひびが入った。このひびで富士山内部が減圧して、水が水蒸気になり、体積が大きくなる。結果、居場所がなくなって外に噴火する。

さらに南海トラフが振動を与えると、加圧されて水蒸気になりかけている水が一気に水蒸気になって噴火。

東日本大震災、直下型地震の余震、東海、東南海、南海のトラフ、そこにエネルギーを溜めに溜めた富士山。とにかく役者がそろいすぎているんですね。

南海トラフの連動地震から、おまけとして富士山噴火が来ますね。(おまけどころではない)


情熱大陸

ここでちょっとビデオ見てもらいます。マグマに追いかけられた私を見てください!なかなかそういうチャンスないので。生き残ったので今こうして講演会してますね(笑)

「今ならもう行かないね。だって危ないもん」

(一同) ~爆笑~



服について

言い忘れてましたが、私の今日の服は赤ですが、火山学者だからですね。マグマです。全部衝動買いしてます(笑)

受講生300人の講義に400人いて、そこに配るんですね。試験で、100点と99点を分ける。

100点は教えてないことを書いてくる生徒。

99点は、教えたことを上手にやってくれる。

100点の子には服とか本とかあげる。インセンティブがないとなと。教育的には、99点で十分すぎるくらい効率よい。ただ、日本全体、人類全体で考えると、生徒は、講師を超えないといけない。

で、けしからんことに、全然授業に出てこない生徒が、100点だったりする。あぁ、こいつは教授になるんだろうなと。まぁ、正直100点あげたくないけどね!

(一同) ~爆笑~

そうそう、Q&A行きましょうか。質問感想は何でもいいですので!京都のおいしいパン屋とか、どうやって彼女彼氏をつくるかとか(笑)


Q&A方式について

なんで始めたかっていうと、学生が寝ちゃうんですね(笑)

(一同) ~笑~

寝させてなるものか、というね。Q&Aは、、、、


(以下、後編に続く!!)

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