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【土屋鞄製造所✕Minimal】 “ものづくりへの共感”が互いを繋げ実現。異業種同士の新しい取り組みとは?

目次

01 作るものは違えど"思い"は同じー「手仕事の共通点」
02 思い出も手づくりで。体験の場で深まった共感
03 コラボレーションの根底にあったブランド価値の本質
04 日本を豊かにする、世界に届けたいものづくり


2020年のバレンタイン、土屋鞄製造所は、東京・渋谷区富ヶ谷のクラフトチョコレートメーカー「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」とコラボレーションを実施しました。Minimal代表の山下 貴嗣さん、土屋鞄の丸山 哲生(KABAN事業本部長)、前田 由夏(KABAN販促企画課)が、取り組みを振り返ります。


作るものは違えど"思い"は同じー「手仕事の共通点」


ー 革製品のブランドとBean to Barチョコレートメーカーが、なぜタッグを組むことになったのか。実はこの構想は、数年前からありました。

丸山「もともと山下さんとは知り合いで、『いつか何かの形でコラボレーションができたらいいね』という話をしていたんです。Minimalさんは、チョコレートの素材となるカカオを厳選して調達し、素材本来の個性を活かしつつ、日本ならではの繊細な味を追求しています。土屋鞄でも、素材から開発し、素材の個性を活かした鞄作りをしているので、Minimalさんのものづくりには、我々と近い価値観があると思っています」


山下「僕たちも、土屋鞄さんが持つものづくりの価値観や、手仕事の温もりを伝えたいという思い、お客さまとの信頼関係の築き方に、とても共感しています


ー こうした両社のお互いのものづくりへの共感から、共通の価値観を一緒に広めていこうと、コラボレーションが決まりました。

丸山「土屋鞄では、毎年バレンタインシーズンに、デザイン・素材・パッケージのすべてにチョコレートギフトの世界観を織り交ぜた革小物をバレンタイン限定製品として展開しています。バレンタインといえばチョコレート。なので、Minimalさんとは、ぜひバレンタインにコラボレーションをしたいと思っていました。お互いの個性を尊重し合える企画を目指して、数年がかりで時期を見計らい、今年ようやく実現できました」


今回実現した企画は二つ。バレンタイン限定製品の購入特典としてMinimal特製チョコレートのプレゼントと、合同ワークショップの開催です。

前田「今年は土屋鞄として、『本命』を贈るバレンタインにしたいという軸がありました。ここで言う『本命』は、『好き』に限定した意味ではありません。いわゆる『義理チョコ』でも、『ありがとう』や『これからもよろしくね』の気持ちが込められていることが多いと思います。それは、一般的には『本命』ではないけれど、本当の思いではないか、と。こういう本当に伝えたい大切な思いを『本命』と位置づけ、応援することにしたのです。

これを伝える間柄というと、すでに関係性が築かれていることが多いですよね。ですので、限定アイテムでは、大切な人の日常に長く寄り添えるよう、経年変化を楽しめる素材と高い機能性を大切にしました。そして、さらに本物のチョコレートを添えることで、よりいっそう『本命』を贈るお手伝いをしたいとMinimalさんにご相談。その結果、ノベルティ用に“鍵型”の特製チョコレートをつくっていただけることになりました」

思い出も手づくりで。体験の場で深まった共感



ー Minimalと土屋鞄が合同で行うワークショップの開催は、土屋鞄からの提案でした。

前田「大切な思いを伝えるのは、プレゼントを贈るだけでなく、一緒に楽しい時間を過ごし、思い出を重ねるということでもかなうと思ったんです。

ワークショップは、2020年1月末、東京・渋谷区富ヶ谷にあるMinimal本店で開催されました。前半は、カカオ豆からチョコレートをつくる体験。後半が革のコースターづくりと、2つの制作をペアで楽しめる特別なワークショップとなりました。

ワークショップに参加されたお客さまは、『土屋鞄とMinimalのことはそれぞれ好きだったけど、ブランド同士がつながっていたとは知らなかった!』と、このつながりを面白いと感じてくださっていましたね。

実際にお客さまが楽しんでいる様子を目の当たりにして、価値観の共感があるブランド同士のコラボレーションは、単純な足し算にとどまらない、想像以上の相乗効果を実感しました


またワークショップの現場では、ものづくりにおける新たな発見があったといいます。

前田「今回の土屋鞄のワークショップでは、『念引き(ねんびき)』という工程がありました。革に筋をつける作業で、全体の印象をきゅっと引き締める効果があります。機能的な役割はないものの、この念引きをあえて行う意味をお客さまに説明しました。すると、それを聞いていたMinimalの担当者の方が、『【念引き】は、職人の手仕事を感じる良い言葉ですね。チョコレートづくりも手作業が多いですが、つくるものが違っても“手仕事で思いを込めること“は共通しているんですね』と話してくださって。

何より、念引きが思いを込める作業だと瞬時に気づいていただけたことに驚きました。土屋鞄にも繊細な感性を持っているスタッフがたくさんいますが、『Minimalさんも同じなんだな。だから、素敵なブランドがつくれるんだな』と思いましたね」


山下「手仕事は、余白があることが良いと思っています。念引きのように、機能的にあまり意味がない工程は、手仕事以外の工業製品では省かれますよね。工業製品は機能を追究して、いかに効率よく、大量につくるか。そういう世界では一見無駄に思えることが、個人の感性に触れる。そこに価値を感じる人がいるからこそ、土屋鞄さんには強烈なファンがたくさんいるんだと思います。手仕事ならでは部分が、情緒的な価値としてブランドへの共感を深めていく。僕らも、Minimalのチョコレートづくりが好きだ、というお客さまが少しずつ増えています。我々2社のお互いの共感が、ワークショップでもつながったのは幸せなことですね


コラボレーションの根底にあったブランド価値の本質



ー コラボレーションの実施に向けて企画を進める中で、お互いに「学びがあった」と、両社は振り返ります。

山下「土屋鞄さんが、『バレンタインに土屋鞄らしい表現をするには、何が大事なのか』を、とても真剣に考えていらっしゃったのが印象的でしたね。『本命』のコンセプトにたどりつくまでの思考のプロセスが勉強になりました。正直、もっと簡単に企画を通せた気がするんですけどね(笑)。

でも逆に、それが素晴らしいと思いました。『バレンタインイベントに乗っかろう』みたいな気持ちはなくて、土屋鞄がバレンタイン向けのアイテムをつくる意義は何か、お客さまにどんな価値を提供できるのかを考え抜いていた。ブランドの哲学とアイデンティティを感じましたよ。それが好きなファンの皆さんがいるからこそ、企画が成り立つんですよね。

しかも、今回の『本命』という言葉は、強い言葉です。セグメントを切る力がある言葉。それをストレートに使う決断をした背景には、自分たちの確固たる軸があるからだと思います」


丸山「土屋鞄では、オンラインストアの読みものコンテンツで、ものづくりをしている会社を取材することはあるのですが、取材先の方々と一緒に何かをつくってきた経験はごくわずか。

過去のコラボレーションでは、2018年に手編みのセーターやカーディガンを手掛ける気仙沼ニッティングさんとコラボレーションを実施しました。これも、お互いにものづくりの姿勢で共感し合う点が多くあって実現した企画。鞄職人と編み手さんが、それぞれの素材と技術を使って、ものづくりを応援するようなストーリーをWEBで連載し、ものづくりの魅力を伝えました。

他社と一緒に何かに取り組む場合、“ただ、ものをつくっただけ”で終わらないよう、ものづくりやブランドの価値に共感した相手とコラボレーションすることを大切にし、お互いの価値観から新しいものを生み出すことを目指しています

今回のMinimalさんとのコラボレーションでは、お互いの大事にしている価値観への理解が深まった思います。相乗効果で素晴らしい企画が実施でき、お客さまにブランド価値の本質を伝える良い機会にもなりました。今後また、Minimalさんともっと密度の濃いコラボレーションをするとしたら、『土屋鞄味のチョコレート』をつくっていただくとか(笑)」


山下「実現できたら面白いですね。職人同士が良い相乗効果を生む可能性もあると思います。土屋鞄の歴史や、これまで大事にしてきたものを教えてもらって、それをチョコレートに込める。チョコレートに土屋鞄のアイデンティティが入っていることを示せれば、ブランドコミュニケーションを豊かにするアイテムになると思います。そういうものづくりが一番面白いし、僕らの技術力を上げる良い挑戦にもなります」

日本を豊かにする、世界に届けたいものづくり



ー 今回のコラボレーションによって、ものづくりへの共感がいっそう深まった両社。今後、どのようなブランドを目指していくか。そこにもまた“共通の思い”がありました。

山下「僕は、2100年を迎えたときに、日本が豊かであることがすごく大事だと思っています。あと数百年程度で、世界経済の過度な発展はある程度行き着くだろうと予想してるんです。そうなったときに、日本はどんな価値を提供して生き残っていくのかというと、その一つに、日本人ならではの繊細できめ細やかな感性を活かしたものづくりのクオリティがあると思っています。

本当に良いものをつくれば、日本の素晴らしい技術が世界で認められ、職人さんが胸を張ってものづくりに取り組める。そういう社会になったら、この国がずっと幸せであるような気がするんです。

2100年に僕は生きていないですけど、そういう日本発のブランドが溢れることを願っています。土屋鞄さんは、すでにそういうポジションにいますが、僕たちもその一つになりたい。Minimalの職人が、おいしいものだけをつくることだけに集中できるような環境をつくりたいですね。それが、カカオ豆の生産者を豊かにすることにもつながります」


丸山「日本のものづくりを世界に伝えたい思いは、僕らも同じですね。それを実現させるために、土屋鞄はもっとものづくりに注力して、製品のデザインや質を高めていく必要があると思っています。日本のファッション業界では、さほどクオリティの高くないものも大量に流通していますが、良いものをつくれないと、世界とは戦えない。

また、ブランドが栄えるだけではなく、もう少し広い範囲で盛り上げることもできたらいいですよね。先ほど山下さんから、『カカオ豆の生産者を豊かにできたらいい』というお話がありましたが、土屋鞄も『日本のものづくり全体を変えていきたい』という思いがあります。土屋鞄以外も含めて、日本でものづくりに携わっている人々を幸せにできるといいなと


山下「多くの職人さんが技術研鑽を続け残っていくためには、独立という選択だけでなく、企業がしっかりとものづくりに取り組んでいくことが大事ですよね。技術力の高い職人さんが企業に属し、企業を通して、製品を届ける。良いものをつくりながら、世の中に価値を還元して、自分の生活も豊かにしていく。

個人の時代は、結局チームの時代。個と個が有機的につながって、チームでどうアウトプットを高めていくか、という時代だと思っています。企業で、高いクオリティのものをつくり、世の中を幸せにする。規模を拡大しながら、成長してしていく。それを土屋鞄さんが実現していることは、僕らにとって勇気と希望でしかない。僕らもそうなりたいと思っています」

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