7月17日-18日に開催された日本最大級の住宅・建築・建材のイベント「リフォーム産業フェア2018」の経営者向けセミナーにUDSの設計を統括している取締役の中原が登壇し、UDSが手がけるホテルコンバージョンのコツと事例について、お話させていただきました。
その内容を少しサマリーしてお届けします。
UDSでは日本のデザインホテルの先駆けとなった目黒のクラスカ以来、既存ビルのコンバージョンによるホテルを複数手がけています。
とはいえ、わたしたちはホテル専門の会社ではなく、まちづくりをする会社です。
ホテルはまちにひらいた施設となることで、地元の人のつながりや、旅行に来た人のつながりが作れる場所。
まちづくりにおいてホテルはとても発信力があるのでホテルを一つの主軸として事業を展開しています。
UDSの大きな特徴として企画と設計、運営を一気通貫で手がける点があります。通常のホテルでは企画、設計、運営はそれぞれ別の会社が行うことが多いですが、1社ですべて手がけることで、運営による気づきを企画や設計にフィードバックして循環させていくことができます。その点にこだわっており、また強みとしています。
既存ビルのホテルへのコンバージョンにおいて大事にしているポイント6つ
1.収益を最大化するために(多人数対応、レンタブル費の向上)
建物のスケルトンがきまっているなかで、どう収益を最大化するか。この点は当たり前ながら大きなポイントで様々な観点から徹底的に考えます。
手前のテーブルと椅子を壁側に収納し、布団を敷くことで多人数対応が可能なホテル カンラ 京都の客室。最大5人まで泊まれる客室設計にしたことで、修学旅行など団体の予約をとっていけるように。修学旅行などでは1館貸切にできる規模なので2年も前から予約がはいり閑散期にも確実に予約を取っていくことが可能に。
2.費用対効果を徹底的に考える
3 常にゲスト目線
コンバージョンの際にはお金をかけるところかけないところを意識しながら考えてコストをかけていくことが必要です。
お金をかける部分、かけない部分の判断は、ゲストの目線で考えます。
このホテルに来た時にどこをみるか、何を感じるか。宿泊するゲストの目線になって徹底的に考えます。
ホテル カンラ 京都 本館エントランス
建築や不動産の人ではない一般の人の目線は3階以上にはほぼいかないため2階以上はそのままに、1階のエントランス部分に大きく手を入れて、コストを集中させている
4.数あるホテルから選ばれるために(インターネット、インパクト)
本当にたくさんのホテルがある昨今、その中から選ばれるにはやはり「特徴」が必要です。
今はSNSが非常に発達していますので写真映えする場所を意識的に作り込んでいます。
写真映えするアートを描いたON THE MARKS KAWASAKIのエントランス
また通常のビジネスホテルのように全て同じ小さなお部屋にするのではなくて、広いお部屋も作っておくことを意識的に行っています。そのお部屋の写真がきっかけになって「このホテルに泊まってみたい」と目に止まることを狙っているためです。
ホテル カンラ 京都の100平米を超えるスイートルーム
5.新しいコンテンツ(いままでにないもの)
今まであるものを、ちょっと組み替えたり、重ねてみたりすることで今までになかったようなものにする。これはUDSが常に意識しているとことです。
このホテルのウリはなんですか?と聞かれた時に一言で伝えられる、わかりやすいコンテンツを埋め込むことで4.数あるホテルから選ばれるために、にもつながる特徴がでてきます。
ホテル カンラ 京都ではショップの傍に職人の仕事に触れることのできる金継ぎのブースを設置。持ち込んでいただいた器の金継ぎも行っている。
BED, FOOD NAD MUSICをコンセプトにしている川崎のON THE MARKSは、音楽のまち、川崎ならではのDJブースや高品質のスピーカーをホテルのレストラン部分に入れ込んでいる
6.既成概念を取り払う
どの業界もそうかと思いますが、ホテルにおいても「通常はこうだ」という、既成概念があります。
この既成概念はいろいろな工夫することで取り払うことができます。
お客さまの立場になって考えるとそれが果たして正しいのか、いいことなのか、と疑問に思うことがあれば当たり前と思われていることもとことん考えて、変えていく。
これができているかどうかが非常に大切です。
人的リソースや所要時間を短くしてスムーズにご案内するため、通常は立ってすることが多いチェックイン。ホテル カンラ 京都では企画と設計と運営が議論を重ね、コンシェルジュがフロント業務を兼務ることなどで座ってのチェックインの形を採用にした
ホテルのレストランとフロントの場所を入れ替えレストランを通ってフロントへいく導線にしたON THE MARKS KAWASAKI。
リノベーションは既存の建物ありきのプロジェクトですので、難しいポイントや問題点などが立ちはだかります。しかしそれをクリアして仕組みを考えて解消していくことで、新しいものが生まれていきます。
ネガティブな点は克服すればチャンスに変わる。
その視点を大切に、チャレンジしながら取り組んでいます。
と話して締めくくりました。
ご参加いただきましたみなさま、貴重な機会をいただきました主催者さま、ありがとうございました。