社内に撮影と編集の専門機能があるのに、なぜわざわざ外部に切り出すのか、と思われるかもしれません。
▍膨大なコンテンツ量を前に、何を手放すか
2022年3月の設立以来、私たちはタレントのSNS運用とファンクラブ運営において、一貫して内製化の強みを活かしてきました。しかし、事業の拡大に伴い、すべての工程を社内だけで抱え込むことの限界に直面しました。
現在、私たちが運用しているSNSアカウントは300にのぼり、総フォロワーは1,000万人を抱えています。量でいうと、年間13万本以上の投稿を出しています。のべ1,700万前後のいいねが付きます。事業の特性上、成人向けの領域が含まれるため、各プラットフォームの規制ラインを慎重に見極める繊細な編集とディレクションも欠かせません。
もし社内のメンバーがすべての撮影機材を準備し、すべての動画のカット編集からテロップ入れまでを行っていたら、コンテンツの供給量はすぐに頭打ちになります。だからこそ私たちは、社内に撮影・編集チームを持ちながらも、意図的に外部との分担を進めています。重要なのは「すべてを自分たちでやること」ではなく、「最速で質の高いものを届けるための線引き」です。
▍社内に残すのは「正解を見つけるまでの時間」
では、具体的にどこで線を引いているのか。私たちは「表現の型が決まっているか否か」を判断基準にしています。
たとえば、新しく担当するタレントの初期のファンクラブ向け動画や、まだ勝ちパターンが見えていない新規企画のSNS投稿。これらはすべて社内のチームが担当します。現場で照明の角度を微調整し、タレントとのやり取りを通じて最適なトーンを探り、編集段階でカットのテンポを1フレーム単位で見直す。正解がない状態での試行錯誤は、外部に依頼しても意図が伝わらず、修正のラリーが無限に続くからです。
社内で数週間テストを繰り返し、「このアングルで撮影し、開始3秒でこの効果音を入れれば視聴維持率が上がる」という明確な型ができあがった瞬間、その業務は外部へ切り出す対象になります。社内のリソースは常に「新しい正解を見つけること」に使い、量産と継続は外部のパートナーに委ねる。これが私たちの戦い方です。
▍外に出すとき、何を渡しているのか
外部のクリエイターに業務を渡す際、「あとはいい感じにお願いします」と丸投げすることは絶対にありません。渡す情報の解像度が低ければ、上がってくる納品物の質もブレるからです。
私たちが外部に渡すのは、解釈の余地を極限まで削った指示書です。動画編集を依頼する場合、まずはスプレッドシートで構成表を共有します。そこには、映像の開始から終了までの秒数指定、挿入するテロップの文言、強調すべきキーワードの文字色指定、さらにはBGMのテンポに合わせたカットチェンジのタイミングまで、言語化して記載します。
同時に、完成イメージのズレを防ぐため、社内で過去に制作した参考動画のURLを必ず3点添付し、「この動画の冒頭のテンポ感」「この動画の色調」とピンポイントで指定します。
さらに、発注の手間そのものも、生成AIによる自動化で圧縮しています。過去の傾向を学習させたAIに条件を入力し、構成案の叩き台を自動生成させます。ディレクターはその叩き台を微修正して指示書に落とし込むだけです。朝の投稿指示の締切である12時30分までに、大量の素材発注と社内共有をノーミスで完了させるためには、この仕組みが不可欠です。
▍曖昧さを許さない姿勢は、採用の現場にも
こうした「数字で線を引き、手順を言語化する」というカルチャーは、コンテンツ制作だけでなく、私たちの採用活動にも完全に浸透しています。
現在、私たちは40本以上の募集を掲載しており、9つの職種で採用を展開しています。ありがたいことに、これまでに届いた応募は240件を超えています。しかし、私たちはこの結果に満足して立ち止まることはありません。
採用担当者は、毎日巡回している同じ市場の競合である66社の動向をチェックしています。どんな文脈で募集を出しているのか、どんな層を狙っているのか。手元に貯まっている競合募集の記録はすでに1,071件に達しました。そのデータを分析すると、会社全体の応募総数が自社を上回る競合が25社存在していることがわかります。
この差をどう埋めるか。ここでも私たちは、クリエイティブ制作と同じように数字でルールを定めています。たとえば、求職者の目を引くための募集タイトルの上限は37字。これを超えると視認性が落ちるという仮説のもと、厳格に文字数を管理しています。
▍数字の区切りが、次のアクションを決める
募集記事を公開したあとも、放置はしません。停止候補を判定する公開日数は24日と定めており、判定に必要な閲覧数の下限は60としています。公開から24日が経過し、60以上の閲覧があっても応募に繋がっていない記事は、見出しや内容に問題があると判断して容赦なく取り下げ、修正に回します。
さらに、応募率の基準を作るときの公開日数の区切りは15日とし、基準に使う上位の割合は全体の35%に設定。この上位35%のパフォーマンスを標準値として、他の募集記事のテコ入れを行います。直したあとに効果を測るまでの日数は21日と決め、行き当たりばったりの改善ではなく、定点観測で成果を測ります。
徹底してデータを追い、改善の手順を回し続けた結果、1年前の会社フォロワー数がわずか19だったのに対し、現在の会社フォロワー数は310まで成長しました。
▍再現性のある環境で、ディレクションを極める
制作物であれ、採用の募集記事であれ、私たちがやっていることは常に同じです。まずは自分たちで手を動かして正解を探し、勝ちパターンが見えたら基準を設けて言語化し、AIや外部リソースを活用して仕組み化する。
「どこまでを社内で抱え、どこから外に出すか」の線引きに迷いがないため、ディレクターは進行管理や連絡業務に忙殺されることなく、企画の根幹や新しい表現の探求に時間を割くことができます。
感覚やセンスに依存せず、数字と手順で成果を出す。この再現性の高さこそが、私たちが経験者の方に提供できる最大の強みです。もしあなたが、これまで「なんとなく」のディレクションや属人的な進行に限界を感じていたのなら、私たちの仕組みの中でその経験を最大限に活かしてみませんか。
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