募集の掲載を止めるのは、単に応募が集まらず失敗したからなのではないでしょうか。
私たちが募集を停止する真の理由は「失敗したから」ではありません。「枠」が有限だからです。Wantedlyの仕様上、ただ闇雲に募集を出し続ければ、自社の他の募集と露出枠の食い合いを起こしてしまいます。本当に届けたいポジションの露出が相対的に下がってしまうのを防ぐため、現在40本以上の募集を掲載中ですが、放置することなく定期的に掲載を止める判断を下しています。
限られた枠を最大限に活かし、ターゲットに確実に届けるためには、意図的な新陳代謝を起こし続けなければなりません。
▍数字で引く、掲載停止のボーダーライン
では、具体的に何を見て止める判断をしているのでしょうか。
私たちは感覚で決めることは一切しません。毎日巡回している同じ市場の競合は66社に及び、手元に貯まっている競合募集の記録は1,071件に達します。このデータベースを元に、特に会社全体の応募総数が自社を上回る競合25社の動向を常に分析し、自社の募集の立ち位置を測っています。
募集を止める基準には、明確な数値のルールを設けています。まず、応募率の基準を作るときの公開日数の区切りを15日と設定し、社内に蓄積された過去の実績から上位35%の募集の応募率を抽出して、私たちがクリアすべきボーダーラインと定めます。
そして、停止候補を判定する公開日数は24日です。公開から24日が経過した時点で、判定に必要な閲覧数の下限である60を超えているかを確認します。60を下回る閲覧数では、原因がタイトルにあるのか露出位置が悪かったのかのブレが大きく、正しい判定ができないためです。閲覧数が60に達しているにもかかわらず、応募率が先ほどの基準を下回っていれば、その募集は迷わず停止ボタンを押します。
▍止めた募集を「在庫」に戻す手順
掲載を止めた募集は、そのままゴミ箱行きになるわけではありません。私たちが大切にしているのは、止めた募集の画像と切り口をどう在庫に戻すか、という一連の手順です。
反応が得られなかった募集も、要素ごとに細かく分解すれば次に活かせる強力な資産になります。まず、募集タイトルの上限である37字の中で使っていた単語をスプレッドシートに書き出します。「未経験」「フルリモート」といった単語を品詞や訴求軸レベルで区切り、どのキーワードが入っているとクリックされなかったのかにフラグを立てるのです。
画像についても同様です。使っていたサムネイル画像をただフォルダにしまうのではなく、「人物の顔のアップは敬遠された」「テキストのフォントサイズが大きすぎた」といった言語化を行い、単なる画像ファイルではなく「意味を持ったデータ」として共通の保管庫に戻します。
現在、9つの職種で採用を行っていますが、例えば「ディレクター」の募集で使って反応が悪かった画像が、「デザイナー」の募集では高いクリック率を叩き出すことも珍しくありません。一つの募集として失敗したものを、テキスト、画像、ターゲットの要素ごとにバラバラに解体し、会社の「共通の材料在庫」として棚に戻す作業を徹底しています。
▍空いた枠に何を入れ、どう測るか
募集を止めて空いた枠には、在庫から別の要素を組み合わせた新しい募集を投入します。
例えば、タイトルで「スキル重視」の切り口を使っていたものを、在庫の中から「データ分析」を訴求するキーワードに差し替えます。画像も、鮮やかなオフィス風景から、あえて落ち着いたトーンの作業風景へと変え、届けたいペルソナの視点を根本から切り替えます。
作り直した募集を公開したあとは、直したあとに効果を測るまでの日数を21日と定めています。週末の波を3回経由させることで、一時的なトレンドに左右されない純粋な効果を測定するためです。この21日間はいたずらに手を加えず、数値の変化を静観します。期間が過ぎて再び閲覧数と応募率を確認し、改善が見られなければ再度要素を分解して在庫に戻す。このサイクルを淡々と繰り返すことで、募集全体の精度を底上げしていくのです。
これまでに届いた応募は240件を超えていますが、これは決して一発のホームランを狙った結果ではなく、泥臭い解体と再構築の手順を回し続けた結果です。
▍事業のSNS運用と採用の手順は同じ
実は、この「数値を測り、枠を管理し、在庫を回す」という手順は、私たちが普段行っている事業の進め方と全く同じです。
私たちは、タレントの魅力をSNSで発信し、ファンコミュニティを運営する事業を展開しています。扱うコンテンツの中には成人向けの領域も含まれるため、プラットフォームごとの厳しいレギュレーションをクリアしながら、いかにクリエイティブの切り口で魅力を伝えるかという、緻密な表現の在庫管理が日常的に求められます。
運用しているSNSアカウントは300に上り、総フォロワーは1,000万人。量でいうと、年間13万本以上の投稿に対して、のべ1,700万前後のいいねが付きます。この膨大なトラフィックを管理するため、朝の投稿指示の締切を12時30分と厳格に定め、午後からは生成AIを活用して大量のテキストバリエーションの生成や効果測定を自動で行う手順を構築しています。
SNS運用も採用活動も、限られた露出枠の中に最適なコンテンツを配置し、反応を見て改善するという根幹の手順は共通しているのです。
▍感覚に頼らず、仕組みで資産を増やす
2022年3月の設立以来、私たちは才能やひらめきに依存するのではなく、明確な基準で枠を管理し、要素を在庫に戻しては再構築する仕組みを作り上げてきました。
結果として、採用市場での存在感も着実に数字に表れています。1年前の会社フォロワー数はわずか19でしたが、地道に在庫を回し続けた結果、現在の会社フォロワー数は310まで成長しました。
「どのタイミングで見切りをつけ、どう立て直すか」。経験者の方であれば、この手順を構築し、数字で回していくプロセスの重要性と面白さがお分かりいただけるはずです。もし、感覚だけの運用に限界を感じているなら、私たちの徹底した数字と在庫の管理手法に触れてみてください。
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