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ドバイでカントリー・マネージャー候補と戦う

カントリー・マネージャーとは?

カントリー・マネージャーという職種はまだ日本では聞きなれないものかもしれない。かくある僕自身もAnchorstarさんが開催している最高に面白い体験型イベント、Country Manager Experienceに何度か参加してこの職種の存在をはじめて知った。

Anchorstar Inc. - Setting up your business in Japan doesn't have to be so tough. Founder&CEO 児玉太郎 Taro Kodama
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http://www.anchorstar.com/

カントリーマネージャーとは企業が海外に展開する際に、現地の代表となるポジション。具体的には法人設立、採用、成長戦略、マーケティング、オフィス探しなど、なんでも行う必要があり、いわば現地CEOの役割を担うことになる。UAEで政府プロジェクトを進めている僕らは現地法人の設立および現地の商慣習に明るいマルチタレントを採用する必要を感じ、思い切ってLinkedInで求人をかけてみた。

結果、なんと400通以上の応募が来た。

400通の応募をすべて1人で目を通すという苦行の書類選考を経て、僕は40人まで候補者を絞った。そしてグループ・セッションによる二次選考を現地で開催することに決定、ラスベガス、リヤドを経てドバイへと降り立ったのである。

グループ・セッションで求めるもの

約10名ほどの候補者には面接当日に突然の不幸が襲いかかったようで、リスケジュールを求めるメールが来たものの、こちらも三日しかドバイに滞在しないので残る30人に希望を託し、グループ・セッションを開始した。このグループ・セッションのプログラム作成に関しても前述のCountry Manager Experienceに多くを負っている。

一回のセッションは2時間で、タイムテーブルは以下の構成であった。

  1. Empathの紹介(10分)
  2. グループ・ワーク(1) エレベーター・ピッチの作成と発表(25分)
  3. グループ・ワーク(2)年間計画の立案と発表(35分)
  4. 個別のショート・インタビュー+筆記試験(50分)

グループ・ワーク(1)では1.のEmpathの紹介をもとにしてチームでエレベーター・ピッチを作成してもらう。カントリーマネージャーは営業先で、展示会で、イベントで、はたまた投資家向けピッチコンテストで、何万回ものエレベーター・ピッチをすることになる。ここでは限られた時間の中で印象に残る簡潔な事業説明ができるかどうか(引き算ができるかどうか)をチェックするとともに、グループ内での意見の食い違いをどのように調整しているのかを観察する。また、プレゼンテーションそのものの能力もチェックする。

グループ・ワーク(2)ではUAEでEmpathを展開するにあたり最初の一年間の事業計画を立案してもらう。戦略、メディア・PR、パートナーシップ形成、採用、ローカライゼーションの5つの項目に関してチームで議論してもらい、その結果を発表してもらう。1年間の後に何を成果として残すべきかを考えた上で、各項目を考えていくことが重要だが、時間制限も厳しいため、なかなかまとまった戦略を発表できるチームは少ない。この課題ではチームを牽引できる力があるか、抽象的ではなく個別具体的かつ現実的な戦略を立案できるか、それを実施できるだけの人的ネットワークを有しているのかに注目する。

グループ・ワークでの観察をふまえて個々人にショート・インタビューを行う際には、僕らがスタート・アップであることをとにかく強調する。大企業での経験しかない人にとってはスタート・アップの感覚をなかなか理解してもらえないことが多く、要求する給与水準も法外に高い場合が多いので、スタート・アップであることをいくら強調してもし過ぎることは決してない。

ショート・インタビューの間には論理力を試す簡単なパズルのような問題を1題、そもそも論理って何よ?っていうことを考えてもらうような論述問題を1題解いてもらう。このセクションはおまけではあるけれども、あまりに解答がお粗末な場合には足切の材料として利用する。

LinkedInの重要性

ショート・インタビューではだいたいの人たちが能力を誇張してくる。これ自体は僕ら日本人も見習うべき点であり、あまりに素直で謙虚でいたのでは埋もれてしまう。もちろん、その謙虚さが美徳として評価されるケースは大いにあるが、こと海外で戦うとなるとビックマウスくらいでちょうどいい。一方で人的コネクションをやたらと強調してくる候補者も多くいるのだが、その際にはLinkedInでチェックすれば一発で共通のコネクションがわかるので、そこから実際の人的ネットワークの強度はおおよそ推定できる。将来的なパートナーシップ戦略の上でもLinkedInを活用することは重要で、たとえばGoogleとパイプを持ちたいなら候補者のネットワークの中にGoogleの社員がいるのかどうかを調べればいい。

さて、このLinkedInだけれどもいやしくも「グローバル」展開なるものに参画したいのであれば絶対にアカウントを作っておくべきだ。Facebookでビジネスのやりとりをするのは日本人くらいなもので、たとえばアメリカにおいて仕事で出会った人にいきなりFacebookでフレンドリクエストを送るなど論外。ビジネスでのネットワーク形成のためのSNSにはLinkedInを使うのが一般的だ。基本的には英語での投稿が主なので日本ではまだまだLinkedInの利用者は少ない。だからこそ、日本にいながらLinkedInのプロフィールが充実し、ネットワークも広がっている人であれば「グローバル」という看板のポジションに応募をした際、評価を得ることができる。

スタートアップでは本当に何でもやる

僕は肩書上、Chief Strategy Officerという、なんだかいかめしいけど実際のところ何やってるんですか?というポジションにいる。で、実際に何をやるかというと「何でも」というのがその答えにならざるを得ない。実際、今回ここで開示したグループ・セッションのためのカリキュラム作成、そして現地での採用活動も担っているし、事業戦略立案、現地法人の設立手続き、国内外での営業、契約書のチェック、日英プレスリリースの作成、こうしたSNSでのPR、展示会での説明員、ピッチコンテストやイベントでの登壇、ミートアップ・イベントの運営も行っている。一見すると錯乱しすぎて専門性がないようにも思えるが、何でもこなせるオールラウンド・プレーヤーに成長できる可能性がスタートアップで働くことの魅力の一つでもある。

実際、カントリー・マネージャーという職種に求められるのはまさにこのオールラウンド性だ。そして少なからず、スタートアップで働くということはどのようなポジションについてもマルチ・プレイヤーであることが求められる。

「何でもやれる」可能性をポジティブに楽しめる人にとって、僕らのようなスタートアップは最高に居心地がいいはずだ。

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