社会問題をビジネスで解決したい―そう思い、起業家の卵としてボーダレスに飛び込んだ新卒のメンバーたち。実際に入ってから起業するまで、そしてそのあとの道のりを赤裸々に語りました。
以下、2019年3月21日開催のイベント「【20代限定】起業を目指すあなたに贈る"社会問題の解決とビジネスを両立する方法"」から、文字起こし。
この記事は、全4本の3本目です。
(前の記事:グループ創業者は同僚?!新卒起業家が明かす意外な関係性)
司会(石川):(スピーカーの)真ん中の2人は海外を拠点にしていて、半年ぶりくらいに帰ってきたくらいだと思うんですけど、クレさんに聞きたいのが、海外で事業をやる上で大事なポイントは何かということで。日本人として気を遣っていたことや、大変だったことがあれば教えてください。
自分が目指す社会に、どれだけコミットするか
呉原郁香(以下、呉原):大変なことは挙げるとキリがなくて(笑)、2年くらいもがいてもがいて、本当のところを言うと、毎月帰りたいって思うんですね。皆さんにアドバイスできるほどじゃないんですけど、大事なことは、自分が目指す社会にどれだけ自分がコミットするかということです。
私もみんなの言う通り「自分がやらなきゃ誰がやる」って思っていて、やらないとだめだなという使命感と、やりたいという気持ちの強さかなと。他にもマンパワーとかいろんなことはあるんですけど、諦めずに続けられたのはやりたい、という自分の意思が強いところかなと思います。日本だったら最悪やめてもというか、誰かやってくれるかなと思うんですけど、やっぱりグアテマラのマヤの人たちのために誰が事業や助けをやれるかなというところで、今の今でいうと自分しかいなくて。その意思一本ですね。
司会:ちょっと脱線するんですけど、クレさんは夫婦で経営をしていて、副社長がトニーさんですよね、そこはどうやって巻き込んでいったんですか?
呉原:私は学生のときに就職活動をしていて、やりたいことは決まっていました。女性だからと言って起業家にはなれないとか、働き続けられないのは嫌だったんですね。働き続けたくて、女性・男性関係なく社会に貢献したいと思っていたので、そうすると3つ大事なことがあるかなと思っています。
1つ目はパートナーの理解。同じ志で同じ方向を向いて働ける関係。旦那さんから「仕事しないで子育てして」って言われちゃったら続けられないですよね。そういう志や夢、向かう方向が同じ人と一緒になりたいなと思っていました。
2つ目としては家族の理解というか、パートナーだけじゃなく、子育てする中で相手の家族や自分の家族にお世話になるので、家族の理解。
3つ目は会社の理解というか、自分が所属するコミュニティ、今で言うとボーダレスですよね。そこからどういうバックアップがあるか。
この3つの軸で考えていて、今のやり方というか、ボーダレスに入って旦那さんと一緒にやるということになっています。たまたま私のパートナーはグアテマラ人で入社する前から付き合っていたので、彼とやりたいと思っていたし、巻き込んだというかもともと志が一致していたので、一緒にやりたいよねとなりました。
司会:ともろーの場合は少し特殊で、ゼロから自分で立ち上げたというよりは、BORDERLESS LINK自体は2014年にまた別のメンバーが立ち上げていて、それを引き継ぐという形でしたよね?
自分が採用に携わっていない人を、どう引っ張っていくか
犬井智朗(以下、犬井):昔バディ制度というのがボーダレスグループにあって、新規事業はバディがついて支えていく、フォローする仕組みがありました。僕はそれでBORDERLESS LINKに行ったんです。
そのとき、社長がダメダメだったんですね。なので一番最初に「明日から会社に来ません。あなたのもとでは働きたくない」って伝えたんですよ。でも2週間くらい経っても変わらなかったから、社長を代わろうという話をして代わりました。
あとはメンバーも自分が採用したわけではないので、自分のフォロワーじゃなくて。自分がリーダーだったら「俺についてこい」って言って採用していたんですけど、そうじゃなくて違う人についていっていた人たちだから、どうやって引っ張っていくかというか。そういうところは難しかったです。しがらみとかは別になかったです、いまは一致団結して、前の社長とも兄弟みたいな関係なんですよね。仕事としては上手くいかなかったけど、プライベートとしては兄弟みたいな関係です。
司会:ここでボーダレスグループの形を簡単に説明すると、個々の事業は会社として独立しているんですが、100%の子会社なんですね。ボーダレス・ジャパンが株式を持っている。でも、それは支配関係のための所持ではなくて、あくまで全力でバックアップをし、自分たちでつくりだしたノウハウやリソースをグループの中でシェアしていくための仕組みなんです。たまに、形だけを見ると「支配関係なんじゃないか」「自分のやりたいことは本当にはできないのでは」と疑問を持つ人もいると思うんですね。
なので、皆に聞きたいのが創業者の田口との関わり方というか、100%子会社でやりたいことはできるのか聞いてみたいと思います。
創業者=同僚?!
中村将人(以下、中村):やりたいならやりなさい、というスタンスは今でも変わらないです。僕が「いま無理です」と言ったら、「分かった、じゃあやめていいよ」と。それくらい自由というか。やりたいことに関しても、本当に、自由(笑)。やっちゃだめって言われたことは一度もない。ただ、アドバイスを求めるという意味では話したりはしますけど、それを強制されたことはない。こういうマーケティングやりなさいとか、こういう商品作りなさいとかそういうことは全くないですね。
呉原:中村さんの話に付随して言うと、自由というのは大前提。ただ、そこに実力がついていなかったりとか、私も含めて社会人経験やマーケティングの力がないというところをサポートしてくれる。全額出資してもらっているので結果は出さないといけないから、実力は必要ですよね。私の場合で言うと、2年間修行させてもらって、そこで色々とマーケティングやオペレーションの構築、事業を回していくうえで必要なスキルを教えてもらいました。今の関係性で言うと、分からないことがあれば必要に応じてアドバイスをもらう感じです。お金だけの関係ではなくて、アドバイザーというか。自分の事業としてやっているけど、メンタル的に、誰かに聞けるというか1人でやらなくていいのが心強いです。
犬井:こんなことを言ったら怒られるかもしれないですけど、僕は同僚だと思っています。創業者とかは別に関係ないかな。ボス(田口)から連絡きたことは1回もないです。この1年ミャンマーにいて、連絡してくださいよって思ったくらい(笑)。叱られることも何されることもないです。同僚ってどういう意味かというと、ボーダレスグループって結局、誰かが上に立っているわけじゃないんですよ。グループ全体で経営をしているんだと思っています。いま23,4社あるんですけど、その社長全員がお互いに助け合っている。その中の1つのボーダレス・ジャパンの代表としてボスがいる。使いたいときは使う、アイデアが欲しい時はもらう。そういう関係かなと僕は思っています。
司会:トモはビジネス経験がない中でとなると、「ボスの意見が絶対だ」みたいにはならないんですか?
廣瀬智之(以下、廣瀬):全然ならないですね。一緒の机で仕事をしていて、「ちょっとこのあといいですか?」って声をかけるといつでも時間をつくってくれる。忙しいときもあるんですけど、嫌な顔されることも全然ないし、まして入社前の学生のときに、あんなに忙しいのに絶対に時間をあけてくれる人なので。これをしろあれをしろ、ではなくて自分が使わせてもらってるみたいな関係なので、主従ではないです。
司会:最後に、いまの事業を通して何をしたいのかということをお聞きしたいんですが、今はやりたいことに向かっての途中だと思うので、この先何を描いているのか教えてください。
"皆の意識を変える"というのを、どれほど日本、世界でやれるか
中村:Sunday Morning Factory(以下、サンモニ)としてで答えると、1つアパレルの工場を持っているのは強みだと思うんですね。ファッションの業界にいるのは縁があるなと思っていて。この業界ってまだまだエコが進んでいないところがたくさんあるので。逆に言えば商材は楽しいじゃないですか。そういう楽しいっていうのを強みにして、今はベビー服しかやっていないけど、レディースをやったりとか、メンズをやったりだとか、アパレルの商材を使って事業をつくっていく。1番いいのは、皆が知らないで、手に取ったら全部オーガニックコットンとかエシカルだったねっていうのが良い形かなと思っています。それをどこまで広げられるかがサンモニとしてのビジョンではあります。
もう1つ、Haruulalaというブランド単体でいうと、出産祝いはもらったらお返ししますよね。いくらくらいのもらったんだろうって調べるんですよ。だから絶対にうちのサイトにくるんです。その時に、こういう背景のある商品だったんだと。あまりそこを今は打ち出していないんですけど。お母さんたちは子どもが生まれた瞬間に100年後、日本、世界ってどうなっているのかなと思いをはせることがあって。その時に、蛍がみれるのかしらとか。100年後って外に出れるのかしらとか不安になったときに行動ってすごい変わるんですよね。背中を押しやすいと思っているので、Haruulalaとして、お母さんのマインドをどのように変えていくか。当たり前の行動に落としていけるかを追求したい。さっきトム(廣瀬)が言った"皆の意識を変える"というのを、どれほど日本、世界でやれるかなということにこれから挑戦したいです。
呉原:私は人生の目標として、生まれた環境や国に左右されないで将来の可能性を最大限に広げていける活動を、特に子どもたちのためにしたいと考えています。その中でマイクロフランチャイズというモデルを開発したので、それを使ってたくさんの子どもたちに繋げていきたい。なので、養鶏だけじゃなくて、色んなビジネスモデルを通じて世界中に広めて、これを使ってお母さんたちを雇用してその先の子どもたちの教育に繋がればいいなと、そういう社会を実現したいなと思っています。
1人でも多くの人が幸せに生きていける、あったかい社会をつくりたい
犬井:ミャンマーはどんどん経済発展している一方で、取り残されている人たちってめっちゃいるんですね。僕が見てきたカレンに住んでいる人の状況は他のところにもどんどん広がっていて、これから悪くなっていく。そこに対して、僕はソーシャルビジネスはたくさん必要だと思っています。今やっている1つの事業だけじゃ、全員は良くならない。
僕は、今ここにボーダレス・ジャパンという仕組みがあるように、これをミャンマーにコピーして、ボーダレス・ミャンマーという社会起業家のプラットフォームをつくって、ミャンマーで起業したい人がどんどんソーシャルビジネスをつくることで、取り残されている人が1人もいない状態にしたい。全員が「ミャンマーに住んで幸せだな、一生住んでいきたいな」という社会をつくりたいです。日本は発展してきたけど、悲しい思いをしている人ってたくさんいる。ミャンマーがこれから発展していくときに、取り残されない人をつくりながらミャンマーを良くしていく。いま日本で起こっているような社会問題が起こらないようにしたい。そのプラットフォームを作りたいと思っています。
廣瀬:簡単に言うと、社会問題が自分ごとになる社会をつくりたいなと思ってます。誰かの犠牲のうえで成り立つ社会はやめませんか?って。ある時、友達に「日本の問題意識が低いのは、日本がある程度成熟した社会やからと思うねんけど」って言われたんですけど、全然そんなことないんですよね。知らないだけで、自分たちの周りにも苦しい思いをしている人も傷ついている人もたくさんいる。皆さんを責めるつもりは全くないですけど、残念ながらその社会を作ってるのは、僕たち1人ひとり自身です。
じゃあどうすれば変えられるかって言ったら、それも1人ひとり自身なんですよね。政治を動かすのは誰か。企業を動かすのは誰かって言ったら、全部自分自身。1人ひとりの意識を変えていくっていうのが、社会の構造を変えていこうと思ったら欠かせないことなので、そこをいち早くやりたいなと。
大事なことなんで何回も言いますけど、決して無関心ではないと思うんです。みんな何かしら思っていることはある。要は、知らないだけだと思っているのでそこをしっかり打破して、1人ひとりがもっと身近に政治や社会を感じられる社会をつくって。社会の問題ですから。1人の問題じゃないですから。1人でも多くの人がしっかりと幸せに生きていける、そういうあったかい社会を、10年20年で実現していきたいと思っています。
司会:スピーカーの皆さん、ありがとうございました。それでは、ここからは会場の皆さんから質問をお受けしていきます。
次回は4月24日に更新します!
「ソーシャルビジネスならではの難しさとは?」「創業者との関係性は、、、同僚?!」
お楽しみに!