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クライアントに、「いい仕事」をしてもらうために。諦めが悪い元自衛隊員の「参謀」が、挑戦の先に見つめる景色。

林 広之(54歳)
コンサルタント/ディレクター
出身地 :愛知県瀬戸市

ヤマトグループの中で、ECコンサルタント先駆者の一人として「意思決定」から「実務遂行」の支援を行う中、「諦めない」「現場を見る」そして「ダメなものをダメという」という3点にこだわり続ける林。その信念を支える思いと、挑戦の先に見ているものとは。事業発足を期に、あらためて自身と向き合う。

自衛隊員時代

愛知県の瀬戸市で生まれ育ちました。小さい頃は明るい性格の子どもでした。明るくて、人が好きで、寂しがり屋。性格は今も基本的にあまり変わっていません。

逆に、子どものころと比べて大きく変わったのは「姿勢」です。高校卒業後に、自衛隊へ入ったことがきっかけでした。新隊員という一般隊員として航空自衛隊に入り、その後、一般曹候補生という士官養成過程に進みました。

新隊員はミッションを「遂行する」側、一方で士官は「遂行させる」側、つまり「決定する」側です。
新隊員時代はひたすら集団活動を訓練します。集団活動というのは、同じ小隊の誰一人脱落させないで作戦を遂行し切るっていうことなんです。同じ小隊6人いたら6人の力をばらけさせないで、6人で作戦遂行して、帰ってくる。1人も脱落させないで作戦遂行をするっていう、自分と班、作戦への根性ですよね。

一方、士官側になると作戦遂行のために部下を訓練することも入ってきます。号令で動くための「共通言語」を持たせるというようなことはもちろん、「遂行」側との大きな違いは「退くという決定」もあるんです。だって、部下を1人も死なせちゃいけない。死なせないための「退く勇気」も必要なんです。

新隊員時代に得た「遂行」の根性と、士官養成過程で直面する「退く」ことを含めた「決断」の経験が、今の仕事人としての人格を形成していると思います。

諦めない

だから、諦め悪いです。

クライアントが抱える課題を解決をお手伝いする場合、たとえ自分で解決できなくても、他に解決方法を知っている人がいるかも知れない。自社でできなくても他の会社ならできるかも知れないじゃないですか。
クライアントの要求は、「うちの会社を使いたい」んじゃなくて、「何かがやりたい」んです。クライアントの要求を満たすのが、ディレクションだと思うんですよ。その選択肢の中で、うちの会社っていうリソースを使ってもらえれるのなら、その道で頑張ります。でもクライアントのオーダーに対して、うちのグループでお応えできないのであれば、他社さんのご紹介や全部のコストを含めて、そのオーダーが現実になるように組む。それがディレクションだと思っています。クライアントの要求を満たす道を見つけるまで「付き添う」し、絶対に諦めません。

現場を見ないで判断しない

もう一つ、自衛隊時代から徹底していることが、「現場を自分の目で見る」ことです。ヒアリングだけじゃなくて、現場を見る。それって、クライアントだったりチームの仲間を信用しないこととは全然違って、自分の目で見ておかないと、納得できないっていうだけなんです。「なんだ、できたじゃないか」っていう後悔は絶対にしたくない、「あの時見とけばよかった」なんていう後悔は、クライアントに結果でお応えする責任がある以上するわけにはいきません。

ECの現場でも、例えば人を増やすことで解決する問題なのか、そもそもシステムを入れなければ根本的な解決にはならないかだとか、現場を見て商材のロケーションや人の動きを確認しないと見えないことは結構あるんです。

例えば、ヤマト運輸時代に、あるEC事業者様のオーダーで倉庫を変えるという案件がありました。WMS(倉庫管理システム)を入れるかどうかは決まっていなかったんですが、新しい倉庫業者さんを実際に見に行ったとき、広い倉庫に大量にある軽量ラックをアナログで全部管理しているのを見て、絶対WMSが必要だって確信したことがありました。それまでは保管倉庫だったので問題なかったんですけど、ECで在庫管理・入庫管理が煩雑になると、とても人が軽量ラックを全部数えてなんていられないですよね。そういう現場を目の当たりにしていると、例えば、WMS業者側から条件提示があっても、こちらとしても諦めるわけにはいかなくなるんですよ。もう、クライアントにも、新倉庫側にも、そしてWMS側にも、実現できるための手を尽くす以外ないです。その時は、WMS側の営業マンに逆に感謝されました。そして「いやあ、林さん、諦めないですね」って言われました。「ほんとはお前が諦めちゃいかんよ!」って言っちゃいました。

「いい仕事をしてもらう」「致命傷にさせない」ために、ダメなものはダメ。

ディレクターとして、諦めないことは絶対必要だと思います。ですがコンサルタントとして、クライアントには「ダメなものはダメ」と言わなくてはいけないことも、やはり必ずあるんです。クライアントに、「いい仕事」をしてもらう。それが我々が「参謀」として隣に寄り添う意味ですから。

コンサルタントとして「決定」を支援するか、ディレクターとして「実行」を徹底的に支援するか、それはクライアントが私に求める役割によって違います。どちらの場合であっても、まずはクライアントのお話を伺って、困っているのが「実行」の方法なのか、そもそもの「決定」なのか紐解いていく、そこから始めます。お困りごとの原因が、表面に見えているものとは別のことっていうパターンも圧倒的に多いので、ちゃんと原因を見つけて、わかってもらわないと「根本治療」にはならないんですよね。「対処療法」じゃなくて、ちゃんと治していかなくちゃならない。

ECって、先行投資が必要でしょう。意思決定次第で、その先行投資が全部無駄になったりする例も見てきているんです。だから「致命傷」になるような選択だったり、「対処療法」に留まってしまうような選択については、「他に手をつけるところはありますか」という問いを投げかけてしまいます。クライアントにとっても「耳の痛い」ことを言われるのはいい気分ではないとは思いますが、「退く勇気」の話じゃないですけど、本当に「致命傷」になるものには、クライアントの立場に立ちながら、きちんと「ダメなものはダメ」とお伝えしなきゃいけないと思います。それが、コンサルタントの責任です。

それでも、クライアントが「絶対にやりたい!」とおっしゃるのであれば、顔を変えて、ディレクターとして徹底的に付き添って「実行」を支援します。付き添っていれば、本当に「致命傷」になる前に、止められますから。コンサルタントとして、ディレクターとして、クライアントの「決定」と「実行」、そしてその先に待つ「結果」に責任を持つ。これが、「参謀」であるということだと思います。

「参謀業」の立ち上げから、新たに見えた景色

実は今まで、自分自身でも、このままいくといつかは「致命傷」になることを感じながら、立ち止まることができずに歩かなくてはいけなかったような時期もありました。このままじゃ、絶対「生き残れない」っていうことは、本能でわかるんですよ。「ずっと暗闇を歩き続ける」ような感覚でした。

そんな中で、「事件」が起きるわけです。
社会における「参謀」というものの必要性について、気づいてしまった。しかもその「参謀業」を、誰もやっていない。

誰もやっていないのであれば、私たちがやったって、いいじゃないですか。

この事業をチームで立ち上げることを決めて、走り出してから、視界は変わりました。
とはいえもちろん、結果が見えているわけでもないし、新しいことを始めるときに起こる摩擦もあります。周囲の人間全員に理解されるわけでもありません。当たり前なんですが、本当に苦労するんです。この苦労というのはきっと、事業を構築しているメンバーたちにしかわからない種類の苦労が、それぞれにあるんだと思います。

苦労はするけど、「暗闇」の中で、実現するべき「光」を見つけてしまった以上、そちらに進まずにはいられないんです。そういう性分なのかも知れません。達成しなくてはいけない、成功しなくてはいけないという前提の中で、本人たちが一番苦労をしながら挑戦する。事業を行うって、そういう苦労で出来上がっているんだなっていうことを実感として得たのは、この事業立ち上げを経て得たものです。

今回の事業の立ち上げもそうですし、生きていると色んな「事件」が起きます。前向きな「事件」だけじゃなくて、起きてほしくなかったような「事件」も起きます。そういうものにもちゃんと向いてると、きちんとひとつひとつ対処していると、自分の引き出しはやっぱり増えるんですね。悲しいことでも、それでも強くなっていく。それがいわゆる年齢なのかな、とも思います。

この先10年、コンサルティング/ディレクションを続けていれば、また色んな「事件」に出会うでしょう。その道中、クライアントにも、チームにも、結果に責任を持つ「参謀」として、きちんと向き合っていきたいですね。

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