事業も人も、成長に終わりはない。 歴史に挑戦する「素直で前向き」な組織の採用事情 |hokan 松元氏 #5 NEXT UNICORN RECRUITING

怪我や老後、災害などに備えるための保険。日本における事業としての歴史は古く、保険業は明治時代から行われていました。この歴史ある保険業界でイノベーションを起こしている企業が、株式会社hokanです。同社は昨年12月にシリーズAの資金調達を完了し、ITスタートアップとしても、保険業界のイノベーターとしても注目を集めました。

世間から注目されるスタートアップにインタビューを行ない、各フェーズの戦略や取り組みを紹介していく『NEXT UNICORN RECRUITING』。今回は、歴史ある業界ならではの課題に取り組む株式会社hokanの組織運営や、採用についてインタビューを実施。社員の平均年齢約28歳と、若手が活躍する同社の事業責任者を務める松元勇人氏に話を伺いました。

株式会社hokan 
事業責任者
松元 勇人 氏

株式会社フリークアウト・ホールディングスでの CRM 領域の新規事業立ち上げ・ HR スタートアップでの COO を経て、2020年4月に hokan に参画し、9月より事業責任者に就任。現在は保険代理店向け顧客管理システム事業「hokan®️」を中心とした事業・プロダクト戦略の策定とBiz Teamの統括、経営管理・人事体制の構築等を担当。
https://www.wantedly.com/id/ytmatsuge

「会社組織」という当たり前を、社員全員でつくった2020年

hokan 松元

ーー昨年末はシリーズAの資金調達おめでとうございます。まずは、スタートアップ業界の中でも注目度が上がってきているhokan様がどのような事業を行われているのか教えてください。

ありがとうございます。弊社は、「保険業界をアップデートする」をミッションに、2017年に創業したスタートアップです。保険代理店の顧客情報管理をより行いやすくするためのシステム「hokan」を主に開発しています。

保険代理店は、さまざまな保険会社の保険商品を販売する事業者を指しています。銀行や不動産、自動車販売などの火災保険や自動車保険などを扱う企業も含まれるため、全国に約23万法人ほど存在している大きな市場なんです。

この業界は、2016年に行われた保険業法の改正によって、顧客との商談記録や従業員の勤怠管理の徹底が義務化されてきたという背景があり、データ管理の重要性が非常に高まっていました。しかし、歴史の長い業界でもあるため、データの管理や経営への活用がなかなか進んでいなかったんです。創業者のふたりが保険業界にルーツを持っており、この課題をシステムによって解消していこうと意気投合したことが、現在の事業がはじまるきっかけになっています。

ーー現在の社員数や組織体制についても教えてください。

現在は、社員数が21名、役員3名の合計24名で事業を進めています。ビジネスサイドは、マーケティングと営業、カスタマーサクセスから成るThe Model型組織で10名程度の体制です。エンジニアサイドは、機能開発チームと導入サポートなどを行うチーム、データ基盤の整備やデータ活用を専門に行うチームに分かれていて、こちらも全体で10名程度在籍しています。

ーーシリーズAを調達したフェーズだからこそ、積極的に整備を進めているチームなどはありますか。

現在、弊社は組織変化の過渡期にあるフェーズだと考えています。私が入社した昨年4月時点では、そもそもサービスを広く普及させていけるか目処も立っておらず、すでに利用いただいているクライアントのニーズに応える機能を作り続けるフェーズでした。そのため、クライアントの声をきちんと聞き、システムに反映させていくカスタマーサクセスのチームを主に整備していました。実際に、ビジネスチームの約半数はカスタマーサクセスに配属されています。

このフェーズを経て、現在は自信を持ってサービスを販売できるようになりました。これからは新しい顧客を獲得するために、マーケティングやセールス・機能開発エンジニアに比重をおいて採用を進めていくつもりです。

ーーまさに組織が変化している最中なのですね。組織の変化に伴って表出した課題はあったのでしょうか。

2020年の弊社は、創業時から創業者十数人だった集団から、まさに会社組織になった年であり、スタートアップが直面する組織成長に伴う課題には、すべてぶつかっていた気がします。

たとえば、私が入社するまでのビジネスチームは2名だけでしたが、2020年中には10名ほどまで増加。最初は4名だったエンジニアチームも今ではおよそ倍の10名規模程度になっており、組織規模が拡大しました。そのため、組織としての体制が整備され、チームが分かれることで代表の声が届きにくくなり、メンバーの目線がバラバラになってしまうといった課題にぶつかりました。

その際は代表が社内ブログを書いたり、会議体を整理して役員とリーダーの認識を正確にあわせられるようにしたり、定期的なチーム間会議を設けたりするといった、他の会社なら当たり前かもしれないルールを、その都度メンバーと一緒に構築しながら乗り越えてきています。

他にもさまざまな課題にぶつかってきたのですが、こうした課題を乗り越えられている最大の理由は、メンバーの姿勢ですね。弊社のメンバーはとても素直に課題を受け止めて、解決に向けたアクションを取れる方ばかりのため、マネジメント視点でも改善のアクションが取りやすい点で、非常に助けられています。

社員個人の成長が、組織の成長につながる

hokan 松元

ーー課題を素直に受け止めてアクションするといったメンバーの思想は、意図的に醸成していったのでしょうか。

弊社には、私の入社前から組織バリューがいくつか設定されていました。バリューは役員が「こういう組織にしていこう」と意図的に作ったものではなく、メンバーの姿勢から自然に生まれて、文化として根付いていったものだと考えています。現在も、バリューのひとつである「MASSUGU」をメンバー全員が体現できている状態ですね。

私が入社する際に惹かれた点でもあるのですが、メンバー全員がどのような状況でも前向きに改善策を考えてくれるんです。たとえば、ミスやアクシデントが起こった時も、ミスを起こした本人を責めるのではなく、どうすれば「次に同じことが起きないような体制にできるか」という原因究明と改善のみに100%向き合うことができています。自分が得をするためだけに仕事をせず、全員が知力や体力、人間力を総動員して、事業や仲間のことを考えられる素直さが文化として自然に定着していることは、組織の一員として誇らしく感じています。

現在は「素直さ」が採用時のひとつの判断軸にもなっているので、これからも良い文化をつなげていけるような組織運営を心がけていこうと考えています。

ーー社員から生まれてきた良い文化をバリューとして明文化することで、組織のカルチャーとして継承できているのですね。いわば「気持ちよく仕事ができる組織」とも言えると感じたのですが、この組織を維持するために意識されていることはありますか。

もうひとつのバリューである「TAKUSU」とつながるのですが、自身より知見があって適任なメンバーがいるときに、思い切ってその業務を託していくことですね。当初、弊社は現会長の小坂と現代表の尾花が共同代表として事業を行っていたのですが、小坂は、システムに強く若い世代の尾花が会社を引っ張っていくべきだと創業当初より考えており、現在のような会長と代表という役職に分かれるようになったんです。

私自身も、現在は事業責任者として事業全体を推進している身ではありますが、今後の事業フェーズによって必要な役割が多様化していく中で、事業成長に必要なことをやっていこうと考えています。私自身が事業成長のボトルネックになるのであれば、代わりを担える方を社内で抜擢したり、社外から新しい方を採用したりする必要があります。役割やポジションにこだわらず、一人ひとりが価値を最も発揮できる業務にフォーカスできるようにしたい。そのため、自身の業務により適した人材がいれば積極的に託していく文化も、しっかりと継承していくつもりです。

ーー若手にとって業務を託されることは、成長のきっかけにもなりますね。

スタートアップにおける成長は、永遠のテーマでもあると思いますが、組織の成長とは、人数が増えるだけではなく、メンバー個々人の成長も必要不可欠だと考えています。現在、私や役員が主導となり、年収レンジ毎に求める貢献やスキルなどを明文化するなど、評価や成長のための制度整備を進めています。

ただ、こうした評価制度は社内での貢献を前提にした視点です。スタートアップでは、目先の業務で手一杯になってしまいやすいため、中長期的な自身のキャリアを見据えたアクションが取りにくくなってしまいます。

弊社に在籍している時間が、事業だけではなく自身のキャリアにも貢献してほしいと考えているため、中長期的なキャリア視点での1on1をメンバーとリーダー間で実施するようにしています。メンバー自身が考える理想のキャリアから逆算して、社内の業務とリンクさせたミッションタスクを設定し、その進捗やレビューを行うことで、社内貢献とキャリア研鑽の両方に活かす取り組みです。この取り組みは、現場のメンバーだけではなく、過去にマネジメント経験のない者多い弊社リーダー陣にも、中長期的な育成などの視点が得られる成長機会になっています。

社員が自ら勧誘したくなる魅力的な組織は、採用にもつながる

hokan 松元

ーー採用においても、現場の成長視点を取り入れたりしているのでしょうか。

そうですね。採用でもリーダー陣や現場メンバーを巻き込むスクラム採用を行っています。とくに、リーダーは現場を率いていく役割を持っているため、その役割にはチームをつくる採用も含まれるという考え方をしています弊社には人事専門の担当者がまだいないため、結果的に社員を巻き込みながら採用するスタイルが自然に定着していった背景もあります。

スクラム採用は、現場の成長に欠かせないと考えています。なぜなら、「採用とは人の人生を預かること」だからです。弊社のようなフェーズの企業では、人数も少なく、社員一人ひとりが担う役割が大企業と比べると多いと思います。人によっては、期待以上のパフォーマンスを出せる方もいますが、そうでない方もいますし、中長期的に見ると調子が悪いタイミングは誰しもあるでしょう。

メンバーのパフォーマンスや調子の波にかかわらず、同じ目標を持つ仲間として、どのような時も寄り添って並走していく覚悟を持たなければ、人生の限られた時間を弊社に割く意思決定をしてくれた新しいメンバーに報いることができません。採用フローに事業責任者や役員しかかかわらなければ、新しいメンバーのパフォーマンスの一時的な悪化課題などによるネガティブな側面を現場で受け止めきれず、「自分が採用したわけではない」と見放してしまいやすくなってしまいます。

スクラム採用によって、リーダーや現場メンバーが「この人と一緒に働きたい」と実感できる応募者を採用することで、良い時も悪い時も入社したメンバーに寄り添って事業を進めていける組織に成長できると考えているんです。

ーースタートアップは社員数も少ないからこそ、仲間意識を現場視点で持てるかどうかも重要なのですね。このような自社とマッチする人にアプローチするために、どのように採用活動を行っているのですか。

弊社の採用数で最も多いのはリファラルですね。メンバーが知人に声をかけて採用につながるケースや、他のメンバーがSNSで連絡を取ったことがきっかけになるケースもありました。リファラル採用におけるインセンティブを設定しているわけではないのですが、メンバーが仲間になってくれそうな方へ自主的に声掛けしてくれています。素直で前向きなメンバーが多いため、事業を大きくしたいと考えているメンバーにとって、勧誘しやすい組織になっているのだと考えています。

ほかの採用メディアでは、コーポレートサイトとWantedlyからの応募が多いですね。コーポレートサイトでは、事業の認知が高まるにつれ、保険業界経験者からの応募が増えてきています。Wantedlyではメンバーが自社の募集をシェアできるため、もともとリファラルに積極的な弊社メンバーや周囲の方が募集のシェアを手伝ってくれています。募集のシェアがきっかけで採用まで至った方もいました。

ーー歴史のある保険業界の出身者にとって、スタートアップへの転職はカルチャーフィットが心配だと思うのですが、これまで入社後のすれ違いなどはなかったでしょうか。

私たちも、保険業界出身者にとってスタートアップ特有のカルチャーに馴染めるかには注意を払ってきました。現在は、正式に入社する前に少しだけ一緒に働いてみる期間を設けています。可能であれば業務委託として少しずつ関わってもらい、現職が副業禁止などで難しい場合は、1日体験就業という形で少しだけ会社の雰囲気を体験していただいています。正式に入社した後に会社と合わないと感じてしまうことは、会社と新入社員のお互いにとって不幸なことです。このような事態を避けるために、私たちと候補者がお互いに良い関係になれるかを事前に見極められるようにしています。

また、採用ペルソナをチームリーダーが作成し、チームや事業部でどのような人材が必要なのかをまとめたり、実際にオファーメールを送る際に「あなたをオファーする理由」と「貢献してもらいたい領域」をまとめた別紙を添えたりしています。採用における要件や、オファーした方への期待を書類に落とし込むと、「人手が足りないから」といった後手にまわる採用ではなく、事業や組織の成長をドライブさせる採用にできるからです。

こうして事前に社内の雰囲気を体験できる仕組みを作ったり、採用ペルソナを整理したりしているため、入社後のすれ違いはまだ発生していないですね。

>オファー時に送付している「オファーする理由」をまとめた別紙

新しい価値を生み出すためには「多様化」も欠かせない

hokan 松元

ーー同じようなフェーズのスタートアップに対して、組織づくり、採用におけるアドバイスをお願いします。

採用の成果最大化や効率化においては、業界や事業特有の価値観を採用戦略に反映することが重要だと考えています。弊社であれば、保険業界にいる方の特徴として、有事の際に顧客と真摯に向き合う「強い責任感」と、難しい保険商品をわかりやすく説明するための「なぜ思考」を持っている方が多いと考え、募集を作る際のポイントにしたり、社内制度の参考にしたりしています。

しかし、組織成長の視点では、多様性もひとつのキーワードです。似通った価値観を持つコミュニティではコミュニケーションしやすいかもしれませんが、シナジーやイノベーションが生まれにくい傾向があります。新たな価値を見出すためには、異なるバックグラウンドや価値観、スキルを持った人材の掛け合わせが必要不可欠です。採用の成果をあげるために業界や採用成功者の傾向からアプローチする層を絞り込む視点も重要ですが、それによって組織の多様化が失われないように注意を払うことも、同じくらい重要だと考えています。

ーーありがとうございます。最後に、hokan様のこれからの展望について伺わせてください。

昨年途中までの弊社は、開発した機能にクライアント様からフィードバックをいただいて改善を行う「負の解消フェーズ」だったと言えます。しかし、多くのフィードバックやメンバーの尽力に恵まれ、hokanは自信を持って提供できるサービスに成長しました。昨年末には資金調達も完了し、これからは「さらなる提供価値を生み出すフェーズ」に突入していきます。

これまで、ビジネスサイドは10人前後の保険代理店様を中心に働きかけてきました。現在は大きな企業との契約も徐々に進んでいるため、これからは歴史の長い保険業界での経験が長く、大企業との連携にも対応できる知見豊富な方が入社してくれると心強いです。

エンジニアサイドも、これからは新しい価値を生み出していくフェーズです。hokanが保有している顧客の状況や保険情報などのデータから分析を行い、新たな機能を開発していこうと考えています。新機能などの提案を次々に持ってきてくれている現在のメンバーのような、システム開発に自信のあるエンジニアの方も募集しています。

また、先ほどお話したように、弊社は組織拡大に伴う整備を行っている最中であり、まだ専門職の方がいないポジションも多いです。現在のフェーズでは、現場の評価や成長を仕組み化していく人事担当者や、会社を会計視点で支えてくださるCFO候補の方の必要性を強く感じています。こうした方の力を借りながら、会社やhokanをさらに成長させていきたいですね。

ーー保険業界がアップデートされれば、生活者のニーズにマッチした商品が生まれたり、適切な商品を選べたりでき、より安心して毎日を過ごせるようになるかもしれませんね。これからのご活躍も注目しています。本日はありがとうございました。

著者プロフィール

鎌田淳生

Writer

1994年千葉県生まれ。コンテンツマーケティング企業にて、オウンドメディアのプランニングおよび企画編集からキャリアをスタート。現在は広告代理店にて、主にtoCブランドのプロモーション戦略や企画の立案、施策進行などを担当。

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