成果の創出事例
私は、経営大学院で「イノベーション※機会の創出」を専攻してきました。※必ずしも技術革新だけでない、組み合わせやコンセプト等が新しい場合も同様の意味を成す言葉。事業変革創造クラス内での「理論的」な学びに加え、実際にイノベーションの機会を創出された「イントレプレナー」の方々に対してインタビュー等をも行い「行動特性」を学んできました。その上で実際に自身の実務でも再現し、気づいた要諦として以下6つにありました。 ① 市場機会の発見が全ての始まり、自ら「顧客の声など一次情報」を掴みに行く。 ② 機会の発見を踏まえて、事前にテストorリサーチなどをして「社内説得材料」を揃える準備を行う。 ③ トップや事業責任者等に対して事前に共有し、それらを踏まえての「支援体制」を作っておく。 ④ 市場機会の発見から、実行までに多くの関係者を巻き込む事が必要であり、その際に想定されるボトルネック を把握しおき「対応策」も一緒に考える。 ⑤ 競合を想定し、参入障壁も高めておく。 ⑥ 既存のリソースから借用しやすい環境を創り出す為に「評価制度」を変えたり付け加えたりする必要がある。 上記の気づきを実務に活かした事例として、私が現職で担当している町は、東北で一番小さな町であり、人口はわずか18000人。町の大きな観光資源である海水浴場は、日本で3番目に開設された由緒ある海水浴場でしたが、東日本大震災の津波被害によって封鎖され、再開までに7年かかりましたが、集客数は震災前の約半数という状況でありました。 私は、経営大学院での学びを活かし、復興の一環として自分が関わること、「今の自分だからこそできることは何か」と考え、①自ら顧客の声など一次情報を掴む為に動き出しました。具体的には、町で観光に関わる方々に対して「2006年に世界初のキャッシュレスビーチを実現させた神奈川県由比ヶ浜の電子マネー事例」を参考に、当時まだ黎明期であり店舗内活用がメインであった「スマホキャッシュレスサービス」の存在を提示し、意見交換を開始。テクノロジー等が不得手な方々からは懐疑的な意見ある中で、当時観光協会の副会長であった方と協力し「東北初のキャッシュレスビーチ」を実行させるべく、共創に動き出しました。 私はリソースを早めに準備②社内説得材料を集めるために、上記ヒアリング結果及び震災前と後での海水浴場に関する定量データ等を作成し、まず自チームメンバー1人1人と対話をしました。このPJが各メンバーにどういう意味意義があるのかを確認し合い、未来のリーダーになるメンバー達に「自身の仕事を可視化」することで、成功事例も失敗事例をも見せる誠実な仕事を見てもらうことで、賛同を得ることができました。 そして、③事前に支援体制を早期に作るべく、社内では上席にあたる事業責任者に対して、隙間時間を見ては声掛けを行いつつ、あえて主要クライアントの同行の機会等を作り、予め余裕のあるスケジュールを確保し、近隣の町の視察と題して現場に同行してもらいながら、町の現状や課題等を共有しました。当初は、スマホキャッシュレスサービスの黎明期であることから、市場セグメントの規模が小さい点に加え、一過性の効果にとどまるのではないかという点において、優先順位としては低位置にあったプロジェクトであったため、支援体制の構築に手を焼く場面もありました。しかし、「震災復興の足掛かり」になることや「スマホ決済での海水浴場では東北もしくは日本初」になる可能性が高い点などを挙げ、事例の先行創出から次年度以降には全国へ横展開が可能になるなど、社内外での貢献性の高さからも、期待に値すると判断いただけることに成功しました。 一方、自チーム内のリソースでは足りない点を予め予測し、別チームリーダーとなる人物や、ツールの作成に秀でている人物とも定期的に情報交換も実施。プロジェクトが実行した時のリソース借用をお願いし、実現可能性を高めていきました。 社外では、本社広報担当者にも情報提供し、実現した場合、日本初もしくは東北初のプロジェクト事例になること等を示唆しておいたお陰もあり、マスメディア等からの取材があった際にも、スムーズな対応をしていただけました(実際にテレビ局や新聞等の複数社からの取材依頼がありました) ④次頁で記載のPJの全体を想定して作成していた「工程設計」をもとに、いつまでに誰が何をどのように行うのかの「手順」や「リードタイム」「リスクの可能性」「難所」等を洗い出しておいたことで、余裕を持ってPJを推進できた点からも、どの業務にでも活かせる経験となっていると思います。 また、今回のような季節性があり、かつ話題性の高いテーマについては⑤競合等を想定し参入障壁を高めておくについても、予め対策を考えておく必要もありました。キャッシュレスとの相性の良いサービスなだけに、競合各社も同様の試みをしてくるだろうと考え、海水浴場関係者の抽象度を高めて「町全体」からもプロジェクトの賛同を得ておくことを考えました。 ③にあった通り、サービス黎明期でもあり市場セグメント攻略の優先度が低いと見なされていた地域でしたが「短期間」で「集中」して地域攻略の事例創出することを掲げ、他のエリアよりも多くのリソースを割き、先行して「地域内の加盟店舗数」を多く確保。町全体からの賛同の声を集めることにも注力しました。特にデジタルサービスに不得手な多くの方々には、使い方説明会を開いてサポート体制を作り「スイッチングコスト」を高めておいたことも、功を奏したと感じております。 そして最後に③リソース(人員)借用の際に、⑥現行の評価制度を変えるもしくは付け加える等も考慮して対策を練る必要がありました。上記のような短期集中でエリア内のサービス浸透率を掲げるプロジェクトの場合、訪問やアプローチ等のコンタクト数が攻略の肝となります。自チーム内の人員数では計画通りに進まないなどが想定されると、他のチームから人員を借用するという手段等がありますが、その場合借用させてもらう人員が、何によって評価されているのかなど、評価軸に対しても注視する必要があります。 上記のように各チームに割り振られている「エリア内のアプローチ数やサービス浸透率」がKPIの場合は、エリアに関係なく個人単位の活動数をKPIに変更させるなどして、評価する時間軸を短期から、中期単位で帳尻を合わせる等も勘案。さらに、リソースを借用しやすくするために、事前にトップor他チームリーダーに対してもKPI対策を打っておくことで、組織間の摩擦を最小限にするよう心掛けておりました。 私は様々なプロジェクト等を通じて、上記の要諦を軸に成果は「5+1のセイカ」によって創出されていると気づきました。その手段としての「工程設計管理」を行い、業務の「見える化」のために、積極的にテクノロジーのツールも活用することも肝要だと感じました。私は常に「セイカ」を生み出せるビジネスパーソンになりたいと考えております。コンサルティング会社で有名なマッキンゼー・アンド・カンパニー社には、成果を出す人は「捨てられる人」というキャッチコピーがあると聞きますが、私は成果を出す人は「ヨユウを生み出せる人」だと考えております。 ヨユウとは「余裕」とも書き、また「良結・善結」良り善いモノコトヒトを結ぶという役割を、そして「世湧・好湧」好きなモノコトが湧き出る世の中に、さらに「与勇」勇気を与える存在になるという意味も込められております。ヨユウを生み出し、成果を上げるビジネスパーソンの要諦として、オリジナルですが5+1の「セイカ」が必要だと考えております。 ❶セイカ=誓可 いつまでに何を成し遂げたいのかをコミットする「①自らが一次情報を掴み確信する」より。 ❷セイカ=誠加 誠実な気持ちで、チームや仲間を作る、関わる「②説得材料を揃える」より誠実に説く。 ❸セイカ=成化 変革創造機会を通じて、同時に後進を育てる「④ボトルネック対応策」よりPJ全体の可視化。 ❹セイカ=声掛 声を掛け合う、助け合う「③事前に根回し支援体制作り」より。 ❺セイカ=制変 評価制度やルールを見直す。制変or制加「⑥評価制度を変えるor付け加える」より。 ❻セイカ=世為価 世の為人の為の機会を創出する「上記のテーマ:キャッシュレスビーチ」より。 上記の「セイカ」を成し遂げるための手段として、全体工程設計(段取り)であり、ポイントは「作業の見える化」にありました。仕事全体のスケジュールを意識しながら、TODOリストを作成する(流れ、括り、要素) (1) まずはランダムにすべきことを全て書き出す(モレ・ダブり)の洗い出しとチェック。 (2) 書き出した作業を関連性ごとにグルーピングする (3) 最終工程から逆算して、ステップのチェーンを作る(工程数に分解) (4) 分解したステップごとに①の作業をリストアップし、TODO化 (5) 時間配分を行い、どの仕事に一番時間がかかるかを見極める(業務難易度) 誰かに依頼する必要があれば、早めに依頼をかけておく。作業の見積もり時間は2倍程度設定し、予め余裕を作 っておく。動き出す前に全体像を確認把握し「今日やるべきこと」を明確にし、あとは「その仕事に集中する」だ けにする。一見当たり前のようですが、改めて肝要であると学びました。 そして積極的にテクノロジーツールを活用し、SFAやCRMツール等で、プロジェクトの進捗度を可視化することで、どこの誰の工程が進捗しているのか、停滞しているのかがわかり、声掛け、入れ替え、ルール変更等を早めに打ち出すことで、時間的な「余裕」を生み出すことで難所を乗り越えてきました。 以上のことからも、成果を生み出すには「5+1のセイカ」を掲げ「ヨユウ」を生み出すことを、今後のキャリアにも取り組んでいきたいと思います。仕事もプライベートでも、生み出せる成果は「段取り力」にあると確信し、自身を「工程設計士」と名乗っております。 上記の活動の「セイカ」により生み出された、キャッシュレスビーチプロジェクトの「成果」は、震災前の集客数を大幅に伸長する140%アップという大きな成果を上げる事に成功しました。キャッシュレスビーチ化は東北初でしたが、スマホ決済としてのキャッシュレス化は日本初ということもあり、多数のメディアにも取り上げられたことも勝因の一つでもあったと考えております。 また、上記の活動が‘社内のベストプラクティクス’でも表彰され、スケールとインパクトの両輪の成果を、チーム全員で勝ち取る事ができました。チームメンバーからは、当事者意識を持ち、担当しているエリアの地域貢献をしていきたい、仕事を志事として捉えてこれからの活動を頑張りたいとも言ってもらえ、本当の意味での成功事例の横展開化に繋がったと自負しております。そして、プロジェクトに関わった町の関係者の方々からも、御礼を含めた成果報告書まで頂き、地域貢献につながった事を実感できる成果を残すことができました。 これからも「絆づくりと感動の創出」をこだわり抜いていきたいと思います。