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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

Company

ハードの時代は終わらない。家電ブランド「UPQ」のプロダクトは、削ぎ落として生まれる「新しさ」がアクセントになる

企画案から売場づくりまで、「メーカーの人に刺激を与えたい」起業 1 年目 CEO の挑戦

2016/06/27

日本発の家電ブランド「UPQ(アップ・キュー)」。2015 年 8 月のデビューから、ガラス製のキーボードや超小型折り畳み電動バイクなど、次々と発表されるプロダクトはどれも個性派揃い。洗練されたデザインと、そこによく映えるポップで楽しいコンセプトカラーは、見る人に思わず「こんなアイテムが、自分の手元にあったなら」と想像させてしまう魅力とパワーを持っています。

プロダクトの企画から売り場づくりまでを執り仕切るのは、創業者・中澤優子(なかざわゆうこ)さん。ハードウェアスタートアップの聖地ともなりつつある、秋葉原の「DMM.make AKIBA」で、「UPQ」代表としてのお仕事と企画者としてのそのこだわりについて伺ってきました。

プロダクトをつくる、売り場をつくる

ー お忙しい毎日だと思いますが、製品発表会後は少し落ち着きましたか?

中澤「発表会後は、営業側の業務に移っていますね。世の中にまだ 1 つしかないサンプルをお見せしながら『こういうものを販売します』『何台必要ですか?』という話をして、店舗の方といっしょに売り場をつくっていく仕事があるんですよ。たとえば、今年の 2 月に発表させていただいたバイクだと、『販売したい』と言っていただいても、バイクや原付の販売には制限があるので、キーボードやヘッドフォンと同じ要領では置けないということもあるんです。『どういう免許が必要なのか』『どうすれば可能なのか』というところをこちらでも調べながら、いっしょに答えを見つけていくという作業ですね」

販売開始のタイミングで売り場が揃っていることがベスト。シナジーを生むことができるよう話をまとめていくのもブランドを盛り上げる大切なお仕事です。しかし稼働しているメンバーは現在、中澤さんを入れて 5 名。人気ブランドを支える部隊としては驚きの人数ですが、それにはこんな回答が。

中澤「通常、全国の量販店さんと取引をする場合、各店舗で 1 台売れるたびに自動発注が入り、都度納品が求められます。伝票の準備や配送もすべて人の手なので、UPQ でそれは叶いません。どうすれば効率よく店頭に置くことができるかというのは常に課題であり、販売店の皆さんとも一緒に解決策を見出す毎日です。ただ、そもそも UPQ の製品は『日立の炊飯器』のように、どの家電量販店のどの店舗でも取り扱っているメジャー品である必要はないと思っています。『あそこに行けば実物を見ることができる』という場所があり、かつ『ネットではいつでも買うことができる』というようなところに UPQ らしさを置いているんですよ」

明確なブランドコンセプトのもと、現在の会社規模で生み出せる最大の効果を中澤さんは探っているのだと言います。たしかに UPQ 製品は、その他多くの家電メーカー製品とは異なる役割を持っているようです。

中澤「販売店さんが『置きたい』と考えてくださるのも、『他の店舗には無いものを置いている』ことで生まれる PR 効果を UPQ に求めているから、という話も多いんです。そこに対して、どうすれば効果が出せるか。商談  ではなく、売り場を作りましょう、変えていきましょう、という姿勢で話をしていることが多いですね。UPQ としては、大量に同じものを生産して売る、ことよりも、少量で限定感があることを創る上でも売る上でも大事にしようと動いています。」

製作の場「中国」との距離

対して、プロダクトづくりは非常にシビアな目で評価・判断をおこなう中澤さん。発表会の前には中国の深センや香港の工場にも頻繁に出向き、確認・指示を欠かしません。

中澤「平均して週に 1 回は中国に行っていますね。秋葉原で働いたあと、25:00 発の LCCで向かうと、現地の工場に 9:00 に到着できるんです。工場の稼働が終わってからも WiFiと電源が確保できるカフェで打ち合わせを続けます。それから向こうの深夜 2:00 の便に乗って、日本には翌朝に到着して秋葉原に出勤するという 0 泊 3 日のコースですね。行き帰りの機内では少し寝るんですが、狭いのでなかなか大変です(笑)」

過酷なスケジュールの中で作り上げていくのは、発表会でデモをおこなうためのサンプル製品。これが前述の販売店舗営業にも活躍するのです。チェックを繰り返す中で、「これを変えてほしい」「最後にワントライした場合は間に合うのか」など、細かいところを詰める真剣勝負です。

中澤「サンブル品は関税がかかるので、日本に到着するといつも税関の人が待ち構えていて『中澤さん、今日は何を持って帰ってきたの?』なんて言われながら、名指しでチェックされるんですよ(笑) 毎度のことで、もう常連になってしまっていますね」

語る中澤さんの様子は至って爽やか。発表会前の多忙さえ大いに楽しまれているようでした。

「技術」として、捉えて活かす

UPQ で取り扱う製品は、スマートフォンからディスプレイ、バイク、バックパック…と多岐にわたるラインナップです。

ー スマートフォンを開発する工場とバックパックを制作する工場は、業界も勝手も異なりますよね。そういったパイプラインは、もともとお持ちだったのですか?

中澤「いえ、2015 年当初は、全く持っていませんでした。ネットの『Alibaba.com』(オンライントレードサイト)を使って探すこともあります。英語でコンタクトができて、規模がフィットする相手で絞るようなやり方ですね。あとは、現地の展示会に出かけます。香港や広東でも大きな部品やセットの展示会が催されるんですよ。そこでの探し方も知見が溜まってきています。どれだけしっかりとしたものを作る要素技術があるのかという点で見ています。また、今では既存製品をつくっている各工場の得意分野を見極めて、各工場をつなぎ、新しい製品をつくる、ということもしています。」

「技術」として、それぞれを判断しているという中澤さん。その組み合わせから発想されたプロダクト案も数多いのだと言います。

中澤「技術を見て、『次、こういったものが作れるのでは』と着想することもありますし、複数の組み合わせで『これらの技術を組み合わせると、こういうことができるかな』なんてことを、常に考えています。この発想は、カシオ時代から変わりません。最初から持っていたパイプは本当に 1 つもないんですよ」

削ぎ落として生まれた、ガラス製キーボード

目を引く、ガラス製のキーボード「Q-gadget KB01」もそのような発想から生まれた製品の 1 つです。

中澤「このキーボードを製造しているのは、すごくメタルの加工に強いチームです。金属の仕上げのクオリティが高いんです。たとえばヘッドホンやバイクのメタルパーツ部分などは、このキーボードのチームから各工場に指導を入れてもらうなど連携したりもしました。」

デザイン性の高いプロダクト。しかし、ここで注力したのは「削ぎ落とすこと」だと言います。

中澤「世の中の傾向として、機能追加ばかりがなされて『削ぎ落とす』ということが全世界的にとても苦手になっているなと思っています。このキーボードは、削ぎ落とした結果キーさえもなくなってしまっていますよね。どこか『未来感』のあるデザインに仕上げることができたのは、削ぎ落とした分、違うところで飛びぬけさせることができるからなんです。これを購入する人の懸念としてあがるだろうと想定していたのは、タイプしてもハードキーとしてのレスポンスがないために『面白そうだけど、使いづらそう』と感じるであろうということ。ただ、今の時代みんなタブレットや PC の大画面に両手でタッチ入力して使っていたります。2-3 年前だと厳しかったかもしれないですけど、今であれば使ってみると意外といける、と思ってもらえるというのが我々としての狙いでしたね。もちろん、『意外といい』と思ってもらうために、キーパッド自体の傾きの角度を何度も何度もミリ単位で調整したり、ソフトウェアのチューニングをしたり、キーの大きさをチューニングしたり、とできるだけ心地の良いものといえるよう、開発しました。」

ドキュメントレスな家電アジャイル開発

UPQ が会社設立時に「製品発表」として掲げたアイテムの数は 24。

中澤「当初 100 ぐらいあったアイデアを、『これなら、サンプルとして持って来ることができるだろう』『発表から数ヶ月以内に発売できるだろう』というものに絞ると、24 個が残っただけなんです。工場のクオリティだったり、製品としてのポテンシャルだったりを常に判断をしていて、サンプルまでつくっても量産しないプロダクトもあれば、一旦は保留にして再度形を変えて量産までするものもあります。今回のアクションスポーツカメラ Q-camera WPX2 などは、まさに後者でしたね」

多くの「タネ」の中から、育てられるものを選び取っていく作業を繰り返す中澤さん。そんな調子でいくつものプロダクトを同時並行ですすめていますが、その企画案はどのようにして開発側へ伝えているのでしょうか。

中澤「企画書にもデザインにも起こすこともなく、まずは話しに行っちゃうことがほとんどですね。そこは、私がその工場のメンバー・エンジニアにいかに伝えることができるか、工場長を落とすことができるか、という話ですから。作りこんだ資料を見せるよりも、イメージの写真を 1 個見せて『こんなの作りたい!』と伝えるのもいいですし、その場で絵を描いてもいいかなと思っています。体裁ばかりを整えた資料を準備する時間がもったいないので、とにかくすぐに話にいきます。」

ー ドキュメント制作は、まったくされないんですか?

中澤「内容が固まってくると仕様は起こしますが、それ以外は特にしていませんね。情報共有もほとんどチャットで完結させています。『ここは、丁寧に伝えないとわからないだろうな』という事項については気をつけていますが、それでも懇切丁寧に文字がたくさん書いてあるような資料はつくることがないですね。ただ 1 つ例外があるとすればバックパック。あれだけは初めて絵を描いたんですよ」

中澤「パターンをひいたこともなければ裁断をしたこともない、知見がないので型紙さえもすぐに作ることができない。『こういうものを作りたいんです』とサイズと雰囲気のわかる絵を描いて持って行きました。日本側で CAD がいじれるメンバーに 3D 作成をお願いしたんですが、彼も布製品は作ったことがないとはいえ、CAD でバックパックを描かされるとは思ってなかったと苦笑してました。平面で絵を描くよりも『ポケットはここで』『ジッパーはこういうふうになってる』と示すには、3D のほうがわかりやすいと思ったんですよ。結果一発で伝わったので、まあ間違いではなかったと思います。その絵を持って、私は布製品のプロではないけれど、こういうものがあれば絶対にいいと思ってるんですよ、というお話をしたんです。出てきたサンプルに対して『ここは弱いね』『ここが少しちがう』というのを繰り返して最終形にしていきました。たとえば、日本人は雑巾を縫うとき、真ん中でクロスさせた “ バッテン “ をつけるよう習うじゃないですか。リュックの紐を縫い付けてある布に、その “ バッテン “ がなかったので『これではよれ易いし強度が不安だ』といった具合に。たくさんのバックパックと比較して検討を重ねていきましたね」

工場は、それぞれがそのプロダクトのプロ。初回はラフな状態で持って行き、意図と熱意を伝えることで『ここは、どうなってるの?』という質問を引き出しながら内容をつめていきます。サンプル品の確認と改良を繰り返す様子は、バックパックのアジャイル開発。何度も何度もやり取りを繰り返すのだそうです。

UPQ で業界にボールを投げる

UPQ で実現していきたいのは「日常にアクセントを加えれば、きっともっと楽しくなる。」というコンセプトそのもの。

中澤「『ハードの時代は終わった』だなんて言われ続けてきましたけど、面白いことはまだまだやるべきでしょう、と思っています。新しいことに取り組んだり、規模を縮小したりすることで『ここまでできた!』というのを、日々示せるように頑張っている状態なんですよね。ありがたいことに、いろんな人に取り上げてもらって売り場も拡大することができていますし、海外からの引き合いも強いので、今は日本と同じ規模で海外でもチャレンジすることに知恵を絞ってみています。時代と共に、売り場も変わってきています。メーカーの人たちも UPQ のことは見てくれていると思うので、こういった動きを捉えてもらいつつ、『チャレンジしていかないと、こういう奴らにやられる!』と思ってもらってもいいですし、『自分たちも少し考え直すと、面白いかも』と思ってもらってもいい。業界全体に、そういうボールを投げられればいいなと思ってるんですよね」

挑戦する姿勢で、業界全体の刺激となるような動きを続けていきたいという中澤さん。ひとつひとつの効果や結果で、中澤さんなりの「ものづくりのあり方」を示していきます。

後半では、中澤さんが手がける人気カフェの経営と家電ブランド「UPQ」の共通点や、企画者としてのそのこだわりのルーツに迫ります。

Interviewee Profiles

中澤優子
1984年生まれ。中央大学経済学部卒業後、カシオ計算機株式会社にて、携帯電話・スマートフォン商品企画に従事。「830CA」「CA007」「EXLIMケータイ」などの企画開発に携わる。 退職後の2013年4月には、秋葉原にカフェを開業。オリジナルケーキやパンケーキ等の商品企画から、製造・経営まで、すべてに携わる。 2014年10月、食をテーマにしたハッカソンに参加し、IoT弁当箱「XBen(エックス・べン)」を企画・開発。同年12月には、経産省フロンティアメイカーズ育成事業に採択される。 2015年7月、株式会社UPQ代表取締役に就任。2ヶ月で17種類24製品を取り揃え「UPQ」ブランドを立ち上げる。 2016年2月、「UPQ」ブランド第2弾となる製品群をリリース。日々ものづくりに没頭している。

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