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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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メガネはまだ枯れていない。R&D 室マネージャーが挑戦する「世の中にないものを創る」仕事とは

センシング・アイウエア『JINS MEME(ジンズ・ミーム)』をはじめとする、新たな価値を生みだすプロセスに迫る

2016/08/08

「メガネは高価なもの」という常識を覆し、低価格・高品質な商品でメガネ市場に革新を起こしたアイウエアブランド「JINS」。ブルーライトをカットし眼の健康を守る『JINS SCREEN(旧 JINS PC)』や、つけているのを忘れるほど超軽量なフレームを実現した『Air frame』など、話題の商品を多数リリースし、業界を牽引し続けています。

視力矯正という役割にとどまらず、メガネのその先について考え、人々の生活を豊かにしていくーーそんなビジョンを掲げる株式会社ジェイアイエヌ東京本社があるのは、飯田橋駅前のオフィスビル最上階。壁一面の大きな窓からは開けた景色が一望でき、業界の未来を模索する JINS の取り組みを象徴しているかのようです。

今回お話を伺うのは、「Research and Development 室」(以下 R&D 室)でマネージャーを務める塩谷 俊介(しおや しゅんすけ)さん。塩谷さんの語る、仕事のやりがいや難しさとは一体どのようなものなのでしょうか。

メガネに新たな価値を作り出す

最初に、塩谷さんの具体的な業務内容を伺いました。すると早速、メガネ屋さんのイメージとは だいぶ違う回答が飛び出します。

「簡単に言うと、新商品のモデル開発です。デザインではなく、主に技術的な面での開発ですね。 また、商品の効果がどのくらいあるか実験・検証をし、その結果を分かりやすくお客様に届けるといったこともします。たとえば、『JINS SCREEN』であれば、本当に肩こりは軽減するのか? といったことや、寝つきを良くすることはできるのか? という検証をおこなったりしています」

塩谷さんの所属する「R&D 室」とは、企業や研究機関などにおいて研究開発を担当する部署につけられるものです。

「こういった部署は、商品のを開発をおこなう企業であれば設けられていることも多いのですが、メガネ業界ではほとんど存在していません。JINS の R&D 室は、ひとことで言うと “メガネ 業界にイノベーションを起こす” ということを軸に動いている部署です。

製品開発だけに留まらず、店舗のオペレーションをいかに効率的にするかをも考えたり、他にもお伝えすることはできませんが、これから取り組もうとしていることもあります。業務内容自体には制約はありません」

ある意味、会社の舵取りをする役割を担っているともいえる R&D 室。なんとそこに所属しているのは 3 名のみという少数精鋭なんだそう。

「新しいことにチャレンジするためには、いろいろな方の知見を借りる必要があります。こういうメガネを作りたいと思ったら、大学の先生や他業界の企業にコンセプトを持ちかけて、共感していただけたら共同開発する。いわゆる『オープンイノベーション』に近い形です。所属メンバーは 3 人ですが、外部の方も含め関わっていただいている人数は 100 人を超えるのではないでしょうか。チャレンジしたいことはまだまだたくさんあるので、これからもっとたくさんの方を巻き込んでいくことになりそうです」

元々大手精密機器メーカーで研究職に従事していたという塩谷さん。その後コンサルの仕事を経てメガネ業界へやってきました。

「前職は、コンサルティング業務に携わっていました。コンサルティングでは、クライアントの思考の枠を広げてアイディアの幅を拡張させたりそれを事業計画に落とし込む際の支援をしたりする仕事をしていたのですが、なんだか物足りないなと思って。なにが物足りないのだろうと考えたときに、『やはりモノづくりがしたい』という思いに立ち返りました。自分はモノづくりで世 の中にインパクトを与えたいのだと。でも普通の製造業ではおもしろくないなと思っていたところ、 JINS に出会ったのです」

ー JINS をおもしろい会社だと思った理由はどのあたりにあるのでしょうか?

「メガネを視力矯正のためだけのアイテムとして考えると、これ以上発展する余地がなさそうと思いませんか? しかし私は、むしろみんなが『これ以上発展する余地がなさそう』と思っているからこそ、より大きなインパクトを与えるチャンスになると思ったのです。さらに JINS に魅力を感じたのは、フットワーク軽く動きやすい会社だと思ったから。自分のやりたいことや目標を実現できる会社だなと感じていましたし、入社した今もその直感は間違っていなかったと思います」

過去に例のない、新しい製品で人々の生活自体にイノベーションを起こしてきたJINS。2011 年に発売した『JINS PC(現在の JINS SCREEN)』は、当時メガネは 3000 本売れたら大成功と言われていた中で異例の大ヒットを記録。現在までの累計売り上げは 700 万本を突破し、メガネ業界に旋風を巻き起こしました。新商品が生まれるプロセスについて、塩谷さんはこう語ります。

「社長の田中が『こんな商品を作りたい』と申したり、僕たちがアイディアを出したり、大学の先生とブレストしている中で新しい案が出たり…始まり方は本当にいろいろです。僕たちに限らず、アイディアがあれば誰でも手を挙げられる環境が社内には揃っています。座席もフリーアドレス制を採用していることもあって部門の壁がありませんし、やりたいやつ集まれ! という雰囲気なので」

また、新商品を開発する際は客観的な視線が大切なのだと続けます。

「新しいものを作ると言っても、自分たちだけが良いと思うものでは意味がないと思っています。なので、アイディアが浮かんだときは積極的にいろんな人の意見を聞きに行って、そのリアクションで良し悪しを判断します。玄人ばかりの意見だと偏るので、あえて普段メガネに関わりが少ない部署の人に意見をあおいだりとか(笑)。

ですが、なにせ『世の中にまだないもの』を作ろうとしているので、言葉で説明してもなかなか伝わらないときもあります。そういうときはプロトタイプを作ってしまうのです。実際に体験してもらって、フィードバックをもらいます」

昨年発売されたセンシング・アイウェア『JINS MEME』の開発にも、入社直後から携わってきました。JINS MEME は、センシングテクノロジーを最大限に活用し、体内の健康状態や運動の記録、ココロの状態を可視化することができます。

「実はこのメガネ、社長の田中が脳トレなどで著名な川島隆太先生に『頭の良くなるメガネは作れないですか?』と相談に行ったのが始まりなのです。そこからブレストを重ねていき、まず『メガネで眼の動きのデータを取れそうだ』ということが分かりました。眼の動きのデータが取れたら何が良いのかと考えたときに、例えば眠気や集中力を可視化できれば、普段なかなか測ることができないメンタリティな部分を推定できそうだと。そこを足がかりに研究が始まりました」

JINS MEME の開発には専門的な知識も必要。締め切りもタイトな中、一筋縄ではいかないプロジェクトでしたが、塩谷さんは「困難の中にこそやりがいを感じる」と語ります。

「エンジニアリングといっても幅広いではないですか。自分は前職で有機 EL の材料やデバイス構造の研究をしていたのですが、JINS MEME が扱う眼電位などの生体信号の技術はまるで畑違いだったのです。当然、他に造詣が深いスタッフもおらず、弊社スタッフと大学の先生と相談しながら見よう見まねで進めていったのでとても大変でした。

しかも、自分の部署はワークフローの上でかなり上流にいるので、自分たちがスピーディに決定していかないとプロジェクトが動かない。前例のない商品を作っているので決断の基準も確立されていませんし、常に締め切りに追われていて、そういう意味ではプレッシャーも大きかったです。

しかし、『世の中にないものを創る』のが仕事なので、大変なのは当たり前。楽して新しいものを作り出すなんてできるはずがないですし。この商品を自分で世の中に送り出したいという強いモチベーションがあるから、つらくても頑張れますし、つらいことがあるからこそやりがいや達成感もひとしおです」

JINS MEME はまだまだ発展途上。将来的には、アルツハイマーの予兆を検出したり、脳卒中の気配を検出したりと、先制医療での活用を目指しているそうです。

JINS がリリースしてきた驚くべき商品の数々ですが、挑戦はまだまだ始まったばかり。後編では塩谷さんが思い描く、驚きの「メガネの未来」に迫ります。

▶後編:「モノ」を通じて世の中にインパクトを与えたい。JINS開発マネージャーが思い描く、新しいメガネのカタチとは

Interviewee Profiles

塩谷 俊介
大手精密機械メーカーでの研究開発及び製造業向けのコンサルティング会社を経て、 2013年に R&D 室に入社。一貫してメガネの研究開発に携わる。

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