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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

Company

社員1人あたりの時価総額=約16億円!「ユーグレナ」が誇る若手社員2人の働きぶり

小さな微生物の底知れないパワーと、一人ひとりの粘り強さが会社をここまで大きくしてきた。

株式会社ユーグレナ

2015/12/10

東京・田町。平日の昼間は、近隣にある大学の学生やビジネスマンで賑わう街。駅前に立ち並ぶ、とある高層ビルの上層階にその会社はあります。

その会社とは、ミドリムシの学名を社名に掲げるバイオベンチャーの雄「ユーグレナ」。

創業の起源は、出雲社長が大学1年生の時に訪れたバングラデシュにありました。

「ご飯はあるのに、野菜や肉あるいは栄養が足りていない」

そんな現地の状況を目の当たりにした出雲社長は、ミドリムシが「動物性」と「植物性」の両方の栄養素をもっていることを知り、当時方法が確立されていなかったミドリムシの大量培養を研究しはじめます。そして、その研究途中で会社を設立後に屋外大量培養技術を確立。創業から10年たった今、社員数90名で、売上は59億円。1人あたりの時価総額は約16億円にも及びます。

いったい、どんなスーパーマンやスーパーウーマンが在籍しているのか?今後の展開がますます楽しみな会社の秘密に迫るべく、いざオフィスに潜入してきました。

実はうち、ミドリムシだけではないんです

まず出迎えてくれたのは、マーケティング部の秋山さん(入社1年目)。初めてのインタビューということで少し緊張しつつも、日々取り組んでいる業務やこれまでのバックグラウンドなど、ざっくばらんに答えてくれました。

「担当している業務は、大きく分けると2つあって。1つは『ユーグレナを使った他社との商品開発』と、もう1つは『新しい原料のブランディングやマーケティング』です」

企業名だけに、『ユーグレナ』に完全特化されているとばかり思っていましたが…ほかの原料もあるんですか?

「そうなんです。実は、ユーグレナ以外にも2つの原料をもっています。『カラハリスイカ』というスイカの一種と、ユーグレナと同じ藻類の『クロレラ』という原料。ユーグレナに続けと、その2種の商品化プロジェクトが今まさに水面下で動いているところで、早く世に出したくて仕方がないです(笑)」

ユーグレナ ≠ 食品メーカー

ユーグレナの商品といえば、駅の売店やコンビニなどでも見かける『飲むユーグレナ』や『緑汁』など、食品類がぱっと思い浮かぶ人も多いのでは? 

しかし、ユーグレナが扱う商品は、私たちが知らないところにも潜んでいました。

「私が開発を担当している商品は、食品ではなくサプリメントです。ユーグレナの全部の取引先を合わせると約80~90社くらいになるのですが、そのなかでも原料取引と OEM取引の2種類に分かれています。私が担当するサプリメントの場合はOEMですね」

OEMというと、ユーグレナも企画から製造まで1からがっつり関わって、最終的には販売元の企業名やブランド名で販売されていくわけですよね。

それって、良い意味でプレッシャーも大きいのでは?

「そうですね。ユーグレナの場合、商品開発といえども営業色が強い部分もありますし。ただ、プロジェクトを進めていくにつれて、商品の製造をお願いしている受託工場の担当者の方や販売元の意見が一致してくるようなフェーズは、とてもワクワクするんです!」

「いいモノ」に、とことんこだわりたい

今はマーケティング中心の業務に携わっている秋山さん。商学部などでそういった類の勉強をしていたんですか?

「いえ、学生時代は薬学部で細胞や栄養学を中心に勉強していました。といっても、薬学漬けの生活だったわけではなく(笑)、広告系のサークルに入って色々な企業と一緒にマーケティングをやっていました。それもあって、学生のときから世の中にどうやって情報を発信していくか、みたいなことをずっと考えて過ごしていたんですよね」

そこから、どういういきさつでユーグレナにたどり着いたんですか?

「ユーグレナは、大学に入る前から知っていて。確か、2011年ごろに日本科学未来館で展示されていた『ミドリムシ・クッキー』がきっかけでした。『ミドリムシって食べられるものなんだ!』って、新しい食文化に衝撃を受けたんです」

そのとき以来、頭の片隅で気になっていたんですね。

「はい。それに、大学時代のサークル活動を通して、アイディア次第でモノや情報を魅力的に伝えることって楽しいんだ、って感じて。でも同時に、自分が根本的に「いい!」と思えるモノを世の中に発信していきたいんだという思いが強いことに気がつきました」

「ユーグレナは、食の素材としても魅力的だったのはもちろんですが、バイオ燃料でジェット機を飛ばしたり、産業構造や世界の貧困問題に関わる大きいスケールの事業も展開したりしていたので、その守備範囲の広さがとても面白そうだなぁと思ったんです」


次に、お話を聞いてみたのは、入社して2年半になる研究開発部の岩田さん。

実は岩田さん、ユーグレナには新卒として入社しているのですが、前職があります。修士のタイミングで就職活動をして、大手金融機関に勤めた後、ドクターに戻ってからユーグレナに入ったという異色の経歴の持ち主です。

元証券マンの研究者、現る

「元々、僕は修士のときに、いま流行りの幹細胞の研究をしていたんです。でも、そのときはドクターに行く気は全くなかった。加えて、理系は修士で就活するのが一番選択肢の幅が広いといわれているので、周りの流れに乗って『とりあえず就活するか』と考えていました(笑)」

そこで、あえての証券会社を選んだ理由は?

「そのときは、これまでの自分と関係ない分野をやってみるのも面白いかなと思って、文系職と理系職の両方をみていたんですよね。正直、『大企業でそれなりのことができればいいかな』というくらいの理由でした」

「入社した証券会社では、製薬企業の調査を担当していたのですが、2年ちょっと経ったときに自分自身に問いかけてみたんです。『これ、一生やりたいことか?」と。仕事柄、企業の研究者の方と間近でお会いする機会が多かったこともあり、『やっぱり自分は研究開発してた方が面白いんじゃないか』と思って、ドクターに戻ることを決めました」

赤門前のラーメン屋が、まさかのキューピッドだった

そんな経歴をもつ岩田さん。ドクターに進んでからは、取り組んでみたいと思うことの方向性が少しずつ見えていったそうです。

「進学については、製薬企業や大学での専門職がいいかなと考えていました。そんなある日のことです。たまたま、東大の赤門前にあるラーメン屋にふらっと入りまして。そこに『ミドリらーめん(ミドリムシ入り)』が置いてあったんですが、その名の通りラーメンの中にミドリムシが入っているというじゃないですか」

「それで、冷やかし半分で会社説明会に行ったら、社長の出雲や先輩にもあたる研究者が熱く語っていたんですね。そのとき、ミドリムシが食品から燃料まで幅広い分野で活躍できる面白い素材だと知って、『受けてみようかな』と心が入れ替わって今に至ります」

入社からこれまでを振り返って、ワクワクする瞬間ってどんなときですか?

「『一番良い結果が出そう!』という兆しがあるときですね。逆に、良い結果が出ることが確定してしまうと、過去のこととしてすぐに割り切ってしまうので。『うまくいくかも!』という一歩手前の段階が興奮します。あとは、予想もしていなかった方法で問題が解決するとか、ですね」

例えば、どういうことですか?

「ユーグレナの中に『パラミロン』っていう植物繊維みたいな要素が入っているんですが、それを使って実験する場合、パラミロンは水に溶けないので実験上はやりづらいとされるものなんです。でも、共同研究先と打ち合わせする中で、パラミロンをうまく分散させるために、『これ使うとできるよ』とか『こっちの方法がいいんじゃない』など、思いがけないところから解決方法が見つかったときでしょうかね」

研究開発の失敗は、寝たら忘れているくらいで丁度いい

今、ミドリムシは自然界で100~150種類くらいあるといわれいて、ユーグレナの研究所にいるのがそのうちの 数十種ほど。岩田さんが取り組んでいるのは、まさにその種類を増やしていく「ユーグレナの育種」というミッション。

「育種は、稲でいえば『よりたくさん実が成るものをつくる』というイメージ。ユーグレナでいうと、『より油をつくるもの』や『より特定の要素を含んでいるもの』を見つけるというのが仕事です。簡単にいうと、新種を発見することです」

新種発見というと、聞こえはいいですよね。でも、その道のりって相当険しいのでは?

「基本、失敗ですよ。9割5分くらい。そういう意味で、研究者は図太い人が向いていると思います。研究開発に限らず、仕事をする上で失敗は多いものだと思っているので、失敗にもへこたれず、寝たらケロっとしてるくらいがちょうどいいのかなと」

最後に、岩田さんが今後やりたい研究テーマについて聞いてみました。

「ユーグレナのなかに、医薬品の成分を発現させたいと思っています。それって結構難易度が高くて、通知表でいえば5段階中の5くらい。これまで色々な方法を試しているんですけど、なかなかうまくいかない。それでも『明日うまくいくだろう』という気持ちで取り組んでいます」

プレッシャーや失敗は、あって当たり前。インタビュー前、穏やかな外見からは想像していなかったけれど、お話するうちに見えてきた、お二人のなかに秘められている静かなる闘志。派手な採用はせず、じわじわと、でも着実に精鋭たちが集まってくるヒントを垣間見ることができました。


Interviewee Profiles

秋山 茉由
マーケティング部食品事業二課
2015年株式会社ユーグレナ入社、7月よりマーケティング部配属。学生時代は薬学部衛生化学を専攻。配属後は主に国内OEM企業や新素材の商品開発などに従事。モットーは「新しい食文化を社会に浸透させて、人と地球を健康にする」。
岩田 修
研究開発部研究企画開発課 主任研究員、博士(農学)/CCMA
証券会社勤務を経て、大学院で応用生命工学専攻修了(農学博士)。証券アナリスト(CCMA)。2013年ユーグレナ入社、7月より研究開発部配属、主任研究員として多様な微細藻類等の育種に取り組む。モットーは「ユーグレナ社を世界一のバイオテクノロジー企業にする」。

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