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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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「デザインは開かれたものであるべき」ーgroovisions代表・伊藤弘が見据えるデザインの未来

デザインを取り巻く環境の変化と、groovisionsの行く末

2017/06/28

東京都世田谷区にスタジオを構えるデザイン・スタジオgroovisions(グルーヴィジョンズ)代表の伊藤 弘(いとう ひろし)さんにお話を伺っています。

結成されてから20年以上第一線で活躍してきたgroovisions。前編では、伊藤さんのディレクターとして立ち回る一面や価値観について取り上げました。

前編▶︎小さな“フィクション”で作る設計図ーデザイン・スタジオgroovisionsの変化のかたち

後編では、時代の変化とともに変わりゆくデザインのあり方と、その中で「働く」ということをテーマに語っていただきます。

変わっていく、デザインを取り巻く環境

デザイン・スタジオgroovisionsとして駆け抜けてきた24年。伊藤さんは時代とともにデザイナーという職業の立ち位置も変わってきたと語ります。

100%ChocolateCafe. パッケージ / 明治 /2004-

「個人的には、今までの、いわゆる『デザイン』ってそんなに必要じゃなくなったんじゃないかと思っているんです。イメージから結果までのプロセスがテクノロジーで相当短縮化された。しっかり自分のイメージを持っている人も増えたし、作らなくても選ぶだけでそれなりの結果まで到達できる。ハイスコアを目指さなければみんなそこそこのものができちゃうので。今後ますますそうなるし、それはきっと予想以上に速いスピードだと思う。

でもそれを悲観しているわけじゃなくて、僕個人はむしろ、一部の天才が作る崇高なデザインをありがたがるよりも、それぞれが自分の好きなものや方向性を持っているのであれば自分でアプローチできた方がいいって思っているんですよ。僕らだって、むしろそういう、“素人デザイナーの源流”にいた自覚はあるんです」

−「一部の天才」と「素人の源流」にはどんな違いがあるのですか?

「デザインに対する意識の持ち方というのがあると思う。デザインを特別にクリエイティブで神聖なものと思うかどうか。僕はどちらかというと、デザインは世の中に開かれた“一技術”であってほしいと思う。それは結果的にプロフェッショナルのデザインのジャンルを壊すことになるけど、それはもうしょうがない。

でも、いわゆる本当の『玄人』への需要は絶対になくならないと思います。なんとなく70点でいいやと割り切れるならいいけど、そこから先の高みを極めようと思ったら、そういうプロが必ず必要になる。そしてそういう人たちはいつの時代も必ずいるから。自分たちはどう舵を取るのか、まだぼんやりしてますね」

−でもgroovisionsさんは、時代の流れをうまく読み解き、人の心を掴んできていると感じるのですが。

「うちの場合は『会社』というより『プロジェクト』のような存在だから、個々の作品の評価よりも文脈で見せてきたというところがあります。俯瞰で見ると良さそうなんだけど、何が良かったのかというとうまくいえないというのが、うちの作品だと思いますけどね」

−「プロジェクトのようだ」という意味ではほかのデザイナーさんと根本的に違いますね。

「基本的にデザイナーは一個人のクリエイティビティと個性が根本にあると思っています。自分たちは架空の『groovisionsっぽさ』をそれぞれのデザイナーが自分の個性と対話しながら作り出しているんですよね。その『それっぽさ』とデザイナーの距離感をはかって作っていくものだから、ちょっと屈折しちゃう。その屈折自体が個性といえるのかもしれませんが」

groovisionsの「仕事」

−今『groovisionsっぽさ』という話がありましたが、groovisionsの「デザイン」について教えてください。

「グラフィックデザインだと『コミュニケーション』が一番大きな機能なので、できるだけ王道なコミュニケーションの形を考え、作り出したいとは思ってやっています。そこでなにより大切なのは、“気分”なんですよ。口で言うとばかみたいな感じだけど、明るくて健康的でポジティブなイメージ、メッセージを作るようにしています」

20th anniversary complete single box / RIP SLYME / パッケージ /Warner Music Japan /2014
Total artworks concept inspired by 赤塚不二夫 “天才バカボン”  ©Fujio Productions

Metro min. エディトリアル / スターツ出版 /2011-2014年4月号イラスト:白根ゆたんぽ+groovisions

−それはずっと変わらない方針ですか。

「そうですね。作ってる人は全然ポジティブではないんですけど(笑)」

「やはり仕事なのでね。自分たちの作ったイメージが広く流通するから、社会的な責任ってあると思う。悪いもの出さないようにしないと。でも、このアプローチはあくまで僕たちの方針です。刺激的でショッキングなイメージで人をひきつけるメソッドもあるし、いろんなコミュニケーションの仕方があると思うけど、自分たちはそれをやらないというだけ」

−これまでのベストワークはなんでしょうか。

「難しい質問ですね。世の中でいわゆるベストワークとされている作品って、意外とマイナーな仕事のものが多いんですよ。世の中を動かした誰もが知っている大きいものってわけじゃない。そこはちょっとデザインの歴史もバイアスがあるなって思います。そうなるとちょっとフェアじゃないなって。やっぱり、もっと世の中と絡みがあって、なおかつ良いものを作れてこそのベストワークじゃないかと。そういうものができたときは達成感もありますし、そういうものを作っていくべきだと思っています」

アニメ「ピンポン」ロゴ、DVDパッケージ / ANIPLEX / 2014
©松本大洋/小学館 ©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会

−なるほど。伊藤さんにとって「仕事」とはどういう存在ですか?

「“あったほうがいいもの”。昔はとにかくさぼりたい、働きたくないと思っていたんですけど、最近は仕事はあった方がいいなと思うようになりましたね。少なくとも僕にとっては社会と関わる一番大きい、そして唯一と言ってもいい手段。仮にそれが退屈で淡々としていたとしても、重要なものだと思えるようになった。なんだかんだ言って、人が生きる上で『淡々とやること』はあった方がいいなと思うんですよ。そうやって勝手に、理不尽に社会に組み込まれていった方がいい」

−ちなみに、伊藤さんはこれまでの人生の中で、価値観が変わったなという瞬間はありましたか。上京など、さまざまな変化があったと思いますが。

「子供ですね…。思っていた以上に衝撃すぎて。なんか部屋をエイリアンのような裸のちっこいのが走り回ってるんですよ、ちょっとリアリティの壁が崩れるというか。

今までは、本当の意味での弱みというか、弱点というのがなかったんですよ。だからちょっと怖いなという思いは大きいですね。根本的な意味で自分中心じゃなくなった。それまではなんというか、自分は『厨二の延長』だったところはあったんだけど」

−(笑)。この先伊藤さんは、何歳くらいまで一線で戦っていこうと思っていますか?

「そんなに無理する必要もないかなと思っています。仕事なので、変な意味で自分のポテンシャルを見誤るのが最悪だなと。そこの臨界点を見極めて『はい、引退!』と言えるかどうか。それはほんの2、3年後かもしれないし、20年後かもしれないし、ちょっとわかんないですね」

−これからもgroovisionsさんのお仕事に期待しているという方は多いと思うのですが、期待を寄せられるのはご自身にとって喜びですか、プレッシャーですか。

「うーん、期待に関してはありがたいですがなんの役にも立たないので(笑)、正直嬉しくないですね。評価であれば、自分たちの作ったものに対して誰かの気持ちが動いてくれたということなので嬉しいですけど」

機能的で、世の中に「気分良く」受け入れられて、かつデザインとしても優れている。伊藤さんの話を総合すると、groovisionsの作ってきたものや目指しているものは、ご本人のテンションと裏腹に非常にハードルの高いものであることに気付かされます。

groovisionsという“奔流”がこの先どのように姿を変え、世の中にアプローチしていくのか。ますます目が離せない存在だと感じました。

NHKスペシャル シリーズジャパンブランド ロゴ、オープニングムービー / NHK / 2013,2014


MUJI TO GOウェブサイト/ 良品計画 /2012


Interviewee Profiles

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伊藤弘(いとう・ひろし)
アートディレクター。デザイン・スタジオ『groovisions』代表。1993年、京都で『groovisions』設立。グラフィックやモーショングラフィックを中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど多様な領域で活動する。 1993年京都で活動開始。PIZZICATO FIVEのステージビジュアルなどにより注目を集める。 1997年東京に拠点を移動。以降の主な活動として、リップスライムやFPMなどのミュージシャンのCDパッケージやPVのアートディレクション、100%ChocolateCafe.をはじめとする様々なブランドのVI・CI、『Metro min』誌などのアートディレクションやideainkシリーズなどのエディトリアルデザイン、『ノースフェイス展』など展覧会でのアートディレクション、MUJI TO GOキャンペーンのアートディレクション&デザイン、NHKスペシャル シリーズジャパンブランドや日テレ NEWS ZEROでのモーショングラフィック制作などがあげられる。

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