以下、要旨です。 ↓ アクリロニトリルを炭素源とした 規則性メソポーラスカーボン電極の調製と炭化過程の検討 (横浜国大院・工) ○山口哲平・中尾太一・窪田好浩・稲垣怜史 Carbonization behavior of ordered mesoporous carbon electrode by using acrylonitrile as carbon source / Teppei Yamaguchi, Taichi Nakao, Yoshihiro Kubota, Satoshi Inagaki (Yokohama National University) / Creation of effective adsorption sites of electrolyte cations/anions on carbon surface is necessary to improve the electric double-layer capacitance. We attempted turning of infusibilization treatment of polyacrylonitrile/SBA-15 composite to give highly efficient nitrogen-containing mesoporous carbon electrode. 1. 緒言 電気二重層キャパシタ(EDLC)の電極材料として規則性メソポーラスカーボン(OMC)が注目されている。この材料は規則性メソポーラスシリカを鋳型として調製するため、規則的に配向した均一な大きさの貫通孔を有しており、高い比表面積を有することが特徴である。これをEDLCの電極として利用することで優れたレート特性及びサイクル特性を示す1, 2)。また、OMCの原料である炭素源として含窒素化合物を用いると、高いEDLC容量が得られるとの報告がある3)。本研究では、鋳型である規則性メソポーラスシリカSBA-15に炭素源としてアクリロニトリルの導入量を変えていくことでCMK-3を調製する方法4)を検討し、そのEDLC容量を測定した。 2. 実験 アクリロニトリルに重合開始剤である2,2-azobisisobutyronitrile (AIBN)をモル比が750:1となるよう混合した。鋳型であるSBA-15にアクリロニトリルの量を調整して浸み込ませ、これを大気中60ºCで24時間重合させた。その後、不融化(infusibilization)を大気中250ºCで12時間行った。次に、窒素流通下900ºCで炭化処理を行った。このとき、炭化処理後のSBA-15の質量に対するカーボンの占める割合をx [wt%]と表す。これをフッ酸を用いて鋳型を除去し、MC_xを得た。比較のため、SBA-15を鋳型として炭素源にフルフリルアルコールを用いて1000ºCで減圧炭化し、CMK-5furを得た。得られたMC_xとCMK-5furの周期構造と細孔構造を粉末X線回折(XRD)、窒素吸脱着測定などで評価した。調製したMC_xとCMK-5furに導電助剤としてアセチレンブラック、粘結剤としてpolyvinylidene difluoride (PVDF)を85:5:10の重量比で混合し、アルミ箔に塗布後、円形に成形した。対極に活性炭、参照極にAg、電解液にEt4NBF4のpropylene carbonate溶液(1 mol kg–1)を用い、電位範囲を−1.0~+1.0 V vs. Ag/Ag+、電流密度を0.1~10 A g–1で変化させ定電流充放電試験を行い、EDLC容量を算出した。 3. 結果と考察 SBA-15に対してアクリロニトリルの含浸・重合・不融化処理の工程を2回繰り返して得たカーボン試料では、XRDパターンはp6mm構造に由来する(100)、(110)、(200)面の回折ピークが現れていたものの、BET比表面積が非常に小さかった。またSEM観察では、SBA-15の規則性細孔外で重合・炭化したカーボン種が支配的に存在していることがわかった。そこで、これらの処理を1回ずつ行い、カーボン試料MC_x(x =44, 72, 82)を得た。XRDパターンをFig. 1に示す。MC_72のXRDにおいて(100)面の回折ピークが強く現れた。一方、MC_44やMC_82では明瞭な回折ピークが現れなかったことから、炭素源をアクリロニトリルとした規則性メソポーラスカーボンを得るには炭化後のカーボン/シリカ複合体においてカーボンが72 wt%程度必要であることが明らかとなった。また、Table 1にMC_xのBET表面積、細孔径、および定電流充放電試験(電流密度0.2 A g–1)の結果を示す。MC_72は884 m2 g–1と比較的高いBET比表面積を有していた。またMC_72(70.1 F g–1)ではCMK-5fur(69.6 F g–1)と同程度の重量比容量が得られ、これは活性炭素繊維A-10より高い値であった。これは、MC_72ではSBA-15に由来する規則配列したメソ孔構造をうまく転写できたためと考えられる。 参考文献 1) S. Inagaki et al., Chem. Lett., 38 (2009) 918-919 2) S. Inagaki et al., Micropor. Mesopor. Mater., 179 (2013) 136-143 3) 山田能生, 棚池修, 白石壮志, 炭素, 215 (2004) 285-294 4) A. Lu et al., Chem. Mater., 16 (2004) 100-103