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なぜ美術なのか?(3)

期待と挫折。

夢で出会ったルドンに夢中になった私は、研究者になろうと思いましたが、うまく行きませんでした。

というよりも、諦めてしまいました。

その理由として、語学力の問題がありました。英語はまあまあだったのですが肝心のフランス語がダメでした。

教授からは、英語もさることながら、フランス語も現地の研究者と同じくらいできるようにならなければ研究者には到底なれないだろうとはっきり言われました。

なるほど、確かに私はルドンが好きなだけで、第二外国語は中国語とイタリア語でした。そのため、大学院の入試は受けるとしたら英語とイタリア語でなければなりません。

かなり落ち込みました。それに、修士課程に進んだとしてもそのあとの就職先はほとんどありません。

学芸員の職も全国的にかなり少ないですし、何年も研究していた研究者も応募してきます。

ならば、フランスへ留学かとも考えましたが、お金がありませんでした。それに優秀でもありませんでした。

優れた人間であれば、給付型の奨学金でフランスへ行けたのでしょうがそういうわけにも行きませんでした。フランス語が出来ませんでしたから・・・

そこで絶望した私は、就職活動に切り替えることもできず家で寝込んでいました。

私とルドンとの関係はここで終わりなのか・・・さようならルドン・・・。

(別に、好きなんだったら研究者でなくてもいいじゃん、とそのときは思えませんでした)

ずっと寝込んでいるのもよくないので、中央線沿いの古本屋をググっていました。本でも読もうと思ったわけです。

そこで発見したのが吉祥寺の古本屋「よみた屋さん」でした。


古本よみた屋 おじいさんの本、買います。
¥5,500 (税込) ¥2,640 (税込) ¥6,600 (税込) ...
https://yomitaya.co.jp/

重い腰を持ち上げて出かけて行きました。クラシック音楽の流れる整然とした素敵な古本屋です。

私は、西洋美術のコーナーへ行きました。

すると、ルドンの研究書が三冊も置いてありました。大学の図書館で借りるようなものです。

なんという奇跡!(そのときはそう思いました)

全部買って家に帰りました。やはりルドンとの関係は捨てられない。しかし、どうやって関わり続ければいいだろう。

この本とルドンの関係はこの後私の就職にも関わってきます。それはまた次の機会に。