胃炎や胃潰瘍の原因~大河平隆哉
胃炎や胃潰瘍など胃の病気は、胃の中の攻撃因子と防御因子のバランスが崩れることで起こります。
攻撃因子の第一は胃酸です。胃酸は食べ物の消化に大切なものですが、胃の粘膜に対しては攻撃的な働きをします。
防御因子は、胃粘膜の血流と、粘膜から分泌される粘液などです。
強い酸性の胃液があるのに、胃の健康が保たれるのは、これら防御因子の働きです。
胃潰瘍の発生を年齢別にみると、30歳代まではそれほど高くありませんが、40歳代になると急に増えだし、50歳代でピークになります。
原因の一つはストレスです。
ストレスがかかると、胃粘膜の血液循環が悪くなり、逆に胃酸は過多になります。
つまり、攻撃・防御因子のバランスが崩されてしまうのです。
胃の病気は強いアルコールや暴飲暴食、塩分の過剰摂取などでも起こります。
また、脂っこい食事は胃が食べ物を腸に送り出す機能を弱めます。
胃の中に食べ物がたまり、もたれ、むかつきの原因になります。
風邪薬、鎮痛剤の成分も粘膜の防御因子の働きを低下させます。
胃を守るには、暴飲暴食を避け、ストレスの少ない生活を心掛けることが大切です。
今は市販薬でかなり症状を改善できます。
しかし、市販薬の服用は1、2週間がめどです。
具合が良くならない場合は病院で診察してもらってください。
他の病気が隠れている可能性もあるからです。
胃炎や胃潰瘍の原因として今、最も注目されているのは1980年代初めに発見されたヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)です。
胃の中にすみついたピロリ菌は食べ物に含まれる尿素を分解し、アンモニアを作り出します。
このアンモニアが胃の粘膜に影響し、胃炎や胃潰瘍を引き起こすと考えられます。
日本人の保菌率は若い人では20-30%ですが、40歳を超えると70-80%に達しています。
ピロリ菌に感染していても、だれもが胃潰瘍になるわけではありません。
菌の数や、その人の抵抗力、防御能力が関係するからです。
胃潰瘍になるのは保菌者の3、4%と見られます。
慢性胃炎、胃潰瘍を繰り返しているうちに、がんになるとの心配もありますが、それは保菌者1万人のうち3、4人とのことです。
ピロリ菌が直接、胃がんには関係しないと考えられます。
除菌法は、抗生物質など3種類の薬を1、2週間飲むことです。
80-90%以上の人は菌がなくなり、ほとんどの人が再発しなくなります。
ピロリ菌が陽性の人で、胃潰瘍の再発を繰り返している人には除菌を勧めます。
しかし、除菌により逆流性食道炎などが増えるという報告もあります。
陽性でも病変がない人も含め、すべての人が除菌すべきかどうかは判断が難しく、意見が分かれるところです。
大河平隆哉(ヨガのインストラクター)