ホイットニーの静岡公演(1988年)湯村紗瑛
ホイットニー・ヒューストン-今をときめくスーパー・スターが目の前にいます。
ファンにとってはこたえられない喜びですが、それも地元の会場とくれば、感慨はさらに深いものがあります。
ステージ中央に黒いスカートの彼女がこつ然と現れた時のどよめきにも似た歓声が、それを物語ります。
1988年10月7日夕、静岡市の草薙体育館は超満員約5500人の熱気と興奮に包まれました。
米国ニュージャージー州生まれの25歳。
著名なゴスペル・シンガーであるシシー・ヒューストンを母に、ディオンヌ・ワーウィックをいとこに持つ恵まれた音楽環境に育ち、小さいころから聖歌隊に入ってゴスペルを学びさらに伝統的なソウル、コンテンポラリーなソウルをバランスよく吸収しながら、着々とデビューの日まで大事に育てられてきました。
その才能はデビュー・アルバム「ホイットニー・ヒューストン そよ風の贈りもの」で開花、これは米国だけで800万枚、世界中で1400万枚という、ソロシンガーとして史上最高のデビューアルバム新記録を達成しました。
またこのLPから次々にカットした「ブロークン・ハーツ」など7曲はいずれもナンバーワン・シングルとなり、現在のセカンド・アルバム「ホイットニー(2)素敵なSOMEBODY」のロングラン・ヒットへとつながっています。
静岡公演では「恋のアドバイス」から、デビュー曲「そよ風の贈りもの」を経て、アンコール曲「素敵なSOMEBODY」までのオリジナル十数曲とゴスペル・ソング2曲をバラエティー豊かに、エネルギッシュに歌い切りました。
しなやかな体から繰り出す彼女のボーカルは、ニュアンスに富むこまやかな情感から、突き抜けるような激情の表出まで圧倒的なダイナミズムで展開します。
天賦のカラフルな美声を驚嘆すべき声量で自在に操るその歌唱力は、人間の可能性の際限なささえ感じさせてしまいます。
無駄のない洗練された身のこなし、ユーモアたっぷりのトークは、その若さに似ず、既に大物の風格を漂わせています。
バックバンド、コーラス、ダンサーのチームワークも磨き抜かれていて、この不世出のアーチストを大いにもり立てました。
湯村紗瑛