ある会社で、ホームページのリニューアル会議が開かれていた。
参加者は、社長、WEBデザイナー、SEO担当者。
そして、なぜか呼ばれた構造設計プロデューサー。
社長の希望はシンプルだった。
「うちもそろそろ、ちゃんとしたホームページをつくりたいんですよ。問い合わせも増やしたいし」
その一言で、会議室の空気が変わった。
第一ラウンド|ブランディング vs SEO
デザイナー「まず大切なのはブランディングです!」
デザイナーが勢いよく立ち上がった。
「企業の理念や世界観を整理して、統一感のあるデザインにしましょう。第一印象は重要です。せっかく訪問してもらっても、信頼感がなければ離脱されてしまいます!」
SEO担当「ちょっと待ってください!」
今度はSEO担当者が身を乗り出す。
「どれだけ美しいホームページでも、検索されなければ見てもらえません。重要なのは検索流入です。キーワードを選定して、アクセスを増やして、コンバージョンにつなげるんです!」
デザイナー「でも、訪問者にブランドの価値が伝わらなければ意味がありません!」
SEO担当「そもそも訪問されなければ、価値を伝える機会すらありません!」
デザイナー「見た目が大事です!」
SEO担当「数字が大事です!」
社長は二人の間で、ただうなずいていた。
「なるほど……どっちも大事なんですねぇ」
その横で、構造設計プロデューサーは黙ってメモを取っていた。
そして、ふと顔を上げた。
構造設計P「……ところで、問い合わせが来たら誰が対応するん?」
一瞬、会議室が静まり返った。
第二ラウンド|突然現れた業務フロー
社長「え? それは……私ですけど」
構造設計P「今も社長が全部対応してるん?」
社長「そうですね。問い合わせフォームからメールが届くので」
構造設計P「返信はどれくらいで?」
社長「忙しいと、二、三日かかることもありますね」
構造設計P「商談は?」
社長「私です」
構造設計P「見積書は?」
社長「私ですね」
構造設計P「受注後の担当振り分けは?」
社長「……私です」
構造設計プロデューサーは、メモに一本の線を引いた。
問い合わせ → 返信 → 商談 → 見積 → 受注 → 担当振り分け
そして、その下に大きく書いた。
全部、社長。
構造設計P「なるほど。ほな、問い合わせが今の倍になったらどうなる?」
社長「……もっと忙しくなりますね」
構造設計P「返信が遅れて、せっかく来た問い合わせを取りこぼすかもしれんね」
SEO担当「でも、問い合わせが増えるのはいいことですよね?」
構造設計P「もちろん。対応できるならね」
デザイナー「では、問い合わせフォームをもっと使いやすくすれば……」
構造設計P「それも大事。でもフォームの先にいる人が対応できなかったら、どうなる?」
再び、沈黙。
社長「……ホームページをよくしても、私がボトルネックになるってことですか?」
構造設計P「そういう可能性があるってことやね」
第三ラウンド|そもそも誰に売りたい?
構造設計プロデューサーは、さらに質問を続けた。
構造設計P「ちなみに社長、どんなお客さんから問い合わせが欲しいん?」
社長「えっ? うちの商品に興味がある人なら、誰でも……」
構造設計P「じゃあ、利益が出やすい案件と、手間ばかりかかる案件は?」
社長「それはありますね。できれば法人のお客様を増やしたいです」
構造設計P「法人の中でも、どんな課題を持っている会社?」
社長は少し考え込んだ。
「そう言われると、ちゃんと整理できてないですね」
すると、デザイナーが口を開いた。
デザイナー「それがわかれば、誰に何を伝えるデザインなのか、もっと明確になりますね」
SEO担当者も続いた。
SEO担当「検索キーワードも変わります。単純にアクセス数を増やすより、見込み客が何を調べているかを考えた方がいいですね」
構造設計P「そうそう。誰に来てほしいかが決まれば、問い合わせの受け方も変わる。必要な情報をフォームで聞いておけば、商談前の確認も減らせるかもしれん」
社長「あれ? なんか話がつながってきましたね」
最終ラウンド|三者、共闘する
ここで、三人はホワイトボードの前に集まった。
デザイナー「まず、企業の強みとターゲットを整理しましょう。それを伝えるためのページ構成とデザインを考えます」
SEO担当「私は、そのターゲットがどんな言葉で検索しているかを調べます。流入だけでなく、問い合わせにつながる導線も検討します」
構造設計P「私は問い合わせの後を整理する。誰が受けて、誰が判断して、誰が商談するのか。社長しかできない仕事と、ほかの人に任せられる仕事も分けよう」
社長はホワイトボードを見つめた。
そこには、一本の流れができていた。
認知 → 検索 → 閲覧 → 問い合わせ → 商談 → 受注 → 業務遂行
社長「なるほど。ホームページって、つくって終わりじゃないんですね」
デザイナー「そうです。見た人に価値が伝わることが大切です」
SEO担当「そして、必要としている人に見つけてもらうことです」
構造設計P「で、来てくれたお客さんを、ちゃんと受け止められることやね」
社長は満足そうにうなずいた。
そして、最後にこう言った。
社長「ところで、結局うちのホームページ、いつ完成するんですか?」
三人は顔を見合わせた。
「…………」
会議は、もう少し続きそうだった。
ホームページは、事業の一部分である
ここまでのお話は架空のものです。
実際には、ブランディングから集客、問い合わせ導線まで考えるWEBデザイナーもいれば、サイトの使いやすさや顧客体験まで踏み込むSEO担当者もいます。
専門領域は、きれいに分かれているわけではありません。
そして、どの専門家が正しいかを競うことにも、あまり意味はないと思っています。
大切なのは、その会社が今、どこに課題を抱えているか。
認知されていないなら、見つけてもらう仕組みが必要です。
商品の魅力が伝わっていないなら、見せ方や言葉を整える必要があります。
問い合わせを取りこぼしているなら、対応する人や業務フローを見直す必要があります。
場合によっては、ホームページのリニューアルより先に取り組むべきことがあるかもしれません。
私は構造設計プロデューサーとして、個々の施策だけでなく、その前後にある仕事の流れを見ています。
とはいえ、自分自身の事業のブランディングも、まだまだ試行錯誤の途中です。
自分の強みを理解していることと、それを初めて会う人に伝えられることは、別の難しさがあります。
だからこそ、デザインもSEOも、事業全体の構造も、どれか一つで完結するものではないと感じています。
ホームページは、完成させることが目的ではありません。
見つけてもらい、価値を伝え、問い合わせを受け、仕事につなげる。
その一連の流れの中で、きちんと役割を果たしてこそ意味がある。
さて。
あなたの会社のホームページに問い合わせが届いたら、
その後、誰がどう動くことになっていますか?
ちなみに、途中から会議に乱入して「んで、誰が対応するん?」と聞いていた構造設計プロデューサー。
あれ、私です。
※なお、この会議はフィクションです。笑