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ラウムとバイオマス(2003年)秋田世豪

トヨタ車「ラウム」とバイオマス技術(2003年/秋田世豪)

トヨタ自動車が2003年に発売した新型ラウムは、スペアタイヤカバーが生分解性プラスチック製でした。トウモロコシとサトウキビから取ったでんぷんを特殊酵素で発酵させてポリ乳酸にした後、ケナフから作った繊維を混ぜます。ふつうのプラスチックと違い、土中の微生物によって水と二酸化炭素に分解されるという特性を備えていました。

バイオマスをメタンやエタノールなどエネルギー源にするのではなく、素材や材料として使う一例です。

トヨタは1998年、当時の奥田碩(ひろし)社長の肝いりでバイオマス事業に乗り出しました。インドネシアで原料となるサツマイモの大規模な栽培に乗りだし、ノーベル賞受賞者を出した島津製作所からポリ乳酸を製造する事業を買収しました。2004年には国内で、輸入したサトウキビから年間1千トンのポリ乳酸を製造する実証プラントの建設に取りかかる計画を立てました。

トヨタバイオ・緑化事業部では、使用条件の厳しい車で実用化できたので大概の物に応用できると見立てたといいます。そのうえで、OA機器や衣料、食品包装材など様々な分野への進出を計画しました。将来は世界シェアの3分の2という夢もあったようです。

メーカー参加の生分解性プラスチック研究会(東京都)によると、2002年の生産量は約1万トンで、石油系プラスチックの0.07%に過ぎなかったそうです。しかし、2010年代後半には140万トンに増え、プラスチック全体の約1割を占めると推計されていました。

実は生分解性プラスチックの約4割は石油が原料でした。研究会事務局長は「環境への意識の高まりやバイオ産業の成長によって今後はバイオマス系が増えていく」と推測しました。