わたしがここに住み続ける理由
私は今、三重県桑名市に住んでいます。転職を機に初めて訪れ、知人もいないし縁もない、そんな場所です。リモートワークのため、どこにいても仕事はできるのですが、この場所を気に入っています。なぜこの三重県桑名市に今も住み続けるのか、その魅力をお話しします。
「当たり前の日常」からの旅立ち
生まれ育ったのは、関東近郊の都市。私にとってそこは、すべてが与えられた環境で「学校があり、友人と遊び、家族と過ごす」変哲もない、当たり前の場所でした。
特に実家での文鳥との生活はより一層当たり前の場所の認識を深めました。
中学生・高校生と成長するにつれて行動範囲は広がり、やがて実家を離れ、見知らぬ土地で初めて一人暮らしを始めます。
新しい生活への「ドキドキと名残惜しさ」
初めて実家を離れたタイミングは大学院進学でした。新しい生活への不安と楽しみが同居していました。
その街はすこし地方ではありましたが、実家からそう遠くなく研究学園としての近代的な雰囲気もありました。その街での生活は、研究室の仲間と過ごす日々にも慣れ徐々に自分にとっての当たり前になっていきました。やがて卒業しその場所を去ることが決まった時、私は車で市内を何度も何度も走り回りました。
「こんなお店があったのか」「こんな建物があったのか」
初めて見る景色ではないのに、すべてが名残惜しく、その街の持つ魅力にようやく気付いたような気がしました。
極端な「未知」が教えてくれたこと
その後、仕事で地方の自然豊かな、ごく田舎の場所に住むことになりました。駅前にはコンビニもなく、見渡す限りの自然。地図で調べて想定(覚悟?)していたはずなのに、実際に駅に降りた時の不安は、今でも鮮明に覚えています。
しかし、そこで待っていたのは、職場の同僚や地域の人々の温かさでした。美味しいお店を教えてもらい、周辺の自然や文化に触れ、趣味を通じてコミュニティも広がりました。
「住めば都」とはまさにこのこと。親から経済的に離れ、これまでになかった未知の場所で自分の人生を楽しむという喜びを、この時初めて知ったのかもしれません。
そして、いくつかの土地を経て、縁もゆかりもない「三重県桑名市」に辿り着きました。前置きが長くなりましたが、私がこの場所に住み続ける理由をお話しします。
【理由1】人生を豊かにする「人との出会い」
私が桑名に住み続ける理由のひとつは、人との出会いに恵まれているからです。
桑名市の旧城下町には昔ながらの「下町」の雰囲気があります。その昔ながらの町には親しみやすいおじちゃんとおばちゃんがいらっしゃいます。夏に開催される石取祭を本気で楽しむ熱く優しい方々です。一度心を開くとみなさんお話が好きで、世間話や生活の知恵を教えてくださいます。それを相槌をうって聞いていると嬉しそうにまたお話ししてくださいます。お土産を渡すと「呼ばれます」といって喜んでくださり、そこからまたいろんな方々が集まって輪が広がっていくのです。
こうした「人との出会い」が日常に温かい彩りを与えてくれます。この温かさに、私は何度も救われています。
【理由2】人生を深める「歴史・文化との出会い」
桑名は、旧東海道の宿場「桑名宿」として栄えた交通の要衝です。西は養老山地に、東は木曽三川、南は伊勢湾に面しており自然に囲まれています。ここを拠点にすれば、東西南北に「豊かな自然と歴史・文化」を楽しむことができます。
南へ:伊勢神宮への玄関口。餅街道を辿り、松阪や志摩の豊かな自然と食を堪能する旅。
北へ:関ヶ原、郡上八幡、飛騨高山といった歴史的な要所や温泉地が広がる岐阜・滋賀方面。
特に心惹かれるのは、地元の人の生活に根付いた歴史と文化です。旧東海道の当時の道と現在の道を照らし合わせて想いを馳せてみることは毎回新しい発見があります。石取祭では参加者の想いが太鼓と鐘のエネルギーとなり、奉納する神社前での本楽にてそのエネルギーが放出される瞬間には毎回鳥肌が立ちます。
この土地の持つ壮大な歴史と、地元の人々の温かく力強いエネルギーに触れることで、私の人生観は深められています。
これからの生き方
この先、わたしが一生桑名に住み続けるのかは誰にも分かりません。人生のイベントに応じてまた新たな土地で新たな出会いや自然に触れることになるでしょう。
今の気持ちは、できるだけこの地で出来ることを味わい尽くす、です。
キャリアのことでいうと、三重県桑名市で仕事をすることになると仕事の選択肢が限られてしまうのが現実です。またキャリアアドバイザーから私の特徴について、現場に出てコミュニケーションをしたほうが活躍しそうとも評価いただいているのでフルリモートが適切なのかは怪しいと私も思っています。
人生で何を優先すべきか、何を捨てないといけないのか、とても難しい決断です。
でもこれだけはいえます。
わたしは、人との出会いに恵まれ豊かな自然と歴史文化にふれるこの生き方を大切にしたいです。