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ホルト氏の「脱一斉授業」論(牛田貴志男)

20世紀後半、1960年代から1980年代にかけて、世界の教育改革に大きな影響を与えた米国の思想家ジョン・ホルト氏。彼の意見は、日本の教育問題として考えるうえで、重要な指針となります。

実は、固定したカリキュラムに基づき、「一斉授業」で教え込む、従来型の「学校」は、日本だけのものではありません。米国にも長年存在していました。

ホルト氏は、そうした「学校」で教えた体験をもとに、「学校」をきびしく批判しました。そして、世界的なベストセラーとなった「How Children Fail(子どもたちは、どう失敗するか)」(改訂新版の邦訳は、『教育の戦略』のタイトルで一光社から)をはじめとする著作で、あらたな学び場の創造を訴えたのです。

ホルト氏の考えのポイントは、「学校」とは結局「アンサー・ランド」、つまり「答えの場」だということです。

そこでは、答え、正解だけが重視されます。正解は、答えなくてはならないことだし、答えられないのはだめなこと、いけないことなのです。正解すれば「できる子」、しなければ「できない子」。正しい答えをしたら「頭がいい」、しなければ「悪い」子だと。正解の数は点数化され、その子の「評価」につながっていきます。

その繰り返しのなかで、いったい何が起きるか?

それは、「分からない」からの反射的な逃避です。正しい答えを返すことが、そのままイコール分ることとされ、評価される「答えの場」では、「分からない」状態はいけないこと、あってはならないことなのです。

まごまごせず、他の子より速分かりして、一瞬でも先に「答えの場」へ逃げ込まなければなりません。

「学び」が知識の詰め込みでないとしたら、その出発点には「好奇心」や「興味・関心」、「疑問」や「問い」があるはずです。そして、それらはすべて「分からない」の中から生まれてくる。ということは、つまり「分からない」ことこそ、「学び」にとって大事なことなのです。好奇心が深ければ深いほど、分からない度合いも強まり、それだけ学びの可能性が広がる、といってもいいでしょう。

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