メディアは何を売っていたのだろう ― JADEニュースレターvol.98を読んで考えたこと
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「AIで稼ぐのって疲れる」
と感じているのは私だけじゃないと思う。
疲れたついでに愚痴ってしまうと、こんなことを考える時間が増えた。
効率化は楽しいけれど、それが売り上げにつながらないなら商売じゃない。
全員が効率化した結果、今までと同じ売り上げを作るために3倍のお客様を必要とするなら、それは効率化と言えるのか。
使っているAIがおバカになったら、詰むそれを「自分の商売」と言ってしまっていいものなのか。
増えたついでに少し前、「AIで効率化できたことに喜んでいるだけでは足りない」という内容の記事も書いた。
そこに、私の頭のぶんぶん揺さぶるニュースレターが届いてしまった。
AI時代のビジネスモデル考【JADEニュースレターvol.98】。JADE伊東さんのニュースレターである。
どうやら伊東さんも似たようなことを考えていらっしゃったご様子。
私の問題意識はこうです。最近ようやく落ち着いて語られるようになった「AIとの向き合い方」は、その多くが生産性を爆発的に上げる機能としての側面に光を当てています。それ自体は素晴らしい。けれど残念ながら、それはトップラインを伸ばす話ではありません。むしろ逆で、これまでの製品やサービスの提供価値がAIによってインフレを起こし、同じ売上を維持するためにより多くの顧客が必要になる。つまり「より多くをこなせ」の暗示でもあるのです。だからAIそのものはビジネスモデルではない。本当に必要なのは、トップラインを上げるアイデアの方ではないか。
ちょっとうれしくてニヤニヤ読んで、10秒。
「あ、違うわ。私の視座が低いわ。似たようなお話と考えたら失礼なやつだわ」
と気づかされてしまった。
伊東さんのお話、AIで既存の商売をどう改善するかという話では全然なくって、商売の土俵そのものが変わる可能性についてのお話だったのです。
ニュースレターの中で伊東さんは、AIをビジネスモデルではなく「イネーブラー」と捉えたとき、その先にあるエージェント経済について考察している。
もしそうなら、と私は考え始めたのです。エージェントが経済の主役の一部になる世界で、ビル・グロスが見つけたような「値段のつくもの」は、いったい何になるのだろう。検索の時代、彼はキーワードに宿る購買意図を発見しました。では、エージェントの時代に、キーワードの代わりに値段がつくものは何なのか。
AIエージェントが他のエージェントと取引をし、条件を交渉し、自律的にタスクを実行する世界。そして、検索連動型広告が「キーワードに宿る購買意図」を収益化したように、エージェント時代には何に値段が付くのか、という問いを立ててらっしゃる。
そして、伊東さんは、検索時代のキーワードに相当するものとして「マンデート」という概念を持ち出し思考実験を始める。マンデートはユーザーがエージェントに与える委任状であり、検索クエリよりもはるかに豊かな意図を含むものだ。
「たしかに…」とは思ったものの、「人間は、自分の欲望をそれほど正確に言語化できる生き物だったろうか」とも考えてしまった。
欲しいと言っていたものを買わない。
興味がないと思っていたものに突然夢中になる。
映画を観て価値観が変わる。
本を読んで新しい関心が生まれる。
「私は、これが欲しいのである」という欲求をはっきり自覚している人ってそんなにいないんじゃないかなぁ…。マンデートは確かに検索クエリより豊かな情報を含んでいる。でも、それは人の欲望そのものなのだろうか。
むしろ「エージェントに何をしてほしいか」を記述したものであって、その奥にある欲望までは表現しきれないような気もする。だとすると、意図の完全体とは何なのだろう。
エージェント経済の売り先は…?
「何に売るのかは結局変わらないんじゃないかなぁ」ということも妄想。
エージェント同士が取引して、情報の届け先はAIに。購買の窓口もAIに。
その先の商品やサービスを必要としているのは変わらず人間かもしれないし、AIを使いこなす犬や猫、馬や牛かもしれないし、そうであっていい。
たぶん、欲望を持つ何かが最終地点にいるはず。
ではその欲望はどこからくるんだろう。
そんな脱線をしていたら、伊東さんはニュースレターの後半で話題をメディアへ移した。
そして、後半の文章が今の私の「欲望はどこからくるのか」をメディアにつなげていってしまった。
伊東さんはこう書いている。
ECのほうは、エージェントがとにかく買い物行動を最適化していくでしょうから、そこに無駄がありません。人間の非合理な購買行動、たとえば松竹梅と並べられるとつい真ん中の竹を選んでしまう、といった揺らぎの影響を受けない。売り手の側から見れば、その非合理性が消えてしまうことが、マイナスに働く場面もあるような気がします。
メディアのほうは、どうでしょうか。こちらは基本的に、攻めではなく守りのモデルに見えます。
おっしゃる通り、ECの話は、きっと最適化されていってしまう。最適化の結果が面白みのある購買体験になるかも不明。
ではメディアは。
そもそもメディアは、人間の何を満たすために存在していたのか。
情報が欲しいから読む。
答えが欲しいから読む。
刺激を受けるために読む。
今、私が、AI時代のビジネスモデルについて妄想を膨らませてしまったように。
メディアは人間を刺激し欲望を発生させる役割があるんじゃないだろうか。
人の中にまだ存在していなかった関心や欲望や疑問を生み出すというか。
メディアのそういった役割にフォーカスするとき、AIはどちら側に立つのだろうか。問いを受け取る側なのか。問いを生み出す側なのか。どちらもありそうで、今は答えが出ない。
ただまぁ…。
メディアがAIや人間の欲望を刺激するなら、私は刺激する側として書き続けていたいですね。
どうでしょう。この記事を読んで、あなたも何かしら刺激を受けてもらえたでしょうか。
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