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ノーベル賞受賞者の「創造性」論/相山武靖

若い研究者を育てるには、個性を尊重することが大切です。

創造とは画期的なコンセプトを得ることで、研究者自身も、これまでのルールを破る勇気を持つことが必要です。

創造性を発揮する教育方法

創造性の発揮には、教育方法がカギを握ると言われています。

ノーベル物理学賞シュリーファー氏

1972年にノーベル物理学賞を受賞したジョン・ロバート・シュリーファー博士は米カリフォルニア大学サンタバーバラ校で物理学を教えていました。

シュリーファー博士が最も力を入れていたのは1年生の授業でした。

仙台市で開かれた高校の物理の教師と大学の若い教官約40人との教育セミナーでは、学生の創造性を引き出す授業の例を示しました。

その中で、以下のように語りました。

「物理学の授業とは、何をどう考えるべきか、どのような筋道で考えるかを教えることだ。途中の計算でプラス・マイナスや数字が多少間違っていても気にすることはない」

教師も挑戦を続けるべき

またシュリーファー博士は、自分の体験から「優れた教師に巡り合うことによって、創造性も引き出されていく。優れた教え方をするためには、教師の方も教える方法(の開発)に挑戦しなければならない」と教育する側の努力を促しました。

また、シュリーファー博士は「必死に考えるときと気分転換して休むことの繰り返し」が、創造性発揮の重要な背景になっていると指摘していました。

カンやひらめきではなく考え続ける

創造性と「カンやひらめき」を関連づけて考えがちですが、ノベール賞の受賞者たちの話を聞いていると、創造性は一瞬の思考の中から出てくるものではないことが分かります。

ノーベル化学賞ピーター・ミッチェル氏

1978年にノーベル化学賞を受賞ピーター・ミッチェル博士もそうです。

ミッチェル博士は眠れぬ夜に突然、アイデアがひらめき、2年半考え続けた問題が解決したといいます。

「考え、苦しみ、中止し、頭を切り替える。そうしたバランスからアイデアは出てくる」と語っていました。

強烈な個性と工夫された研究態度

ノーベル賞受賞者は「天性のひらめき」から生まれるわけではありません。

科学的な信念を成果へ結びつける過程で、大いなる努力がはらわれているのです。

創造性の発揮とは、頑固者という表現に代表される強烈な個性と工夫された研究態度によって作られるように感じます。

相山武靖