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家も工場も津波で大規模被災。負けてられっか精神での事業立て直しストーリー 〜被災した経営者たち 第三弾〜

 自然災害だけでなく、家族の事情や思わぬ環境の変化によって、事業を続けていくかどうかの岐路に立たされるという局面には、大きさに差こそあれ、どんな経営者も一度は体験するのではないでしょうか。

 いわき市で代々石材屋を営む森さんの、どんな時でも諦めず進み続ける強い精神は、スモールビジネスの経営者然とした素敵な信念に基づくものでした。東日本大震災で工場も自宅も甚大な被害を受けながらも、新しい事業にチャレンジし続ける森さんのストーリーをお届けします。



家業として継いだ石材屋

森さんは石材屋を代々営まれているとのことですが、具体的にどのようなご事業になるのでしょうか

 親父の代は石材の卸問屋だったんです。一時期は、青森から埼玉までここいわきから卸していました。ただ、今は中国から加工済みの石材が入ってくるので、ほぼ卸はやっていません。現在は顧客販売に切り替えています。工場の機械の台数も当時に比べるとだいぶ減りました。事業内容は時代に合わせて変化していますね。

代々継がれているとはいえ、事業内容は時代によって変化しているんですね。そもそも、事業を継承されることに対して、抵抗ってありませんでしたか?

 実は、子供の頃はシェフになりたかったんですよね。高校卒業したら、フランスに行こうと思っていました。ただ、そのことを打ち明けた時、親父に現実を見せられました。「料理人で1ヶ月いくら稼げるんだ」と言われ、懐から札束を積まれたんです。「こんなに金になるんだ」と思い、急遽料理の修行をするつもりが、石屋の修行に方向転換(笑)何だかんだ目の前にお金には弱かった。人間だもの。(笑)


工場の一角には、森石材の歴史を感じる写真が飾られていました


当時の被災状況について

ご自身が中心となって事業を回していた最中の災害だったと思いますが、東日本大震災当時の状況はどのようなものでしたか?

 震災後すぐに、二人の子供が通っていた小学校に向かったのですが、学校もパニック状態で、皆何をやったらいいのかわからないという状況。すぐに「手貸してくれ」と知り合いから声をかけられたので、乾パンを配ったり、当時はとにかく体を動かしていましたね。

事業やご自宅の被害はどれくらいだったんでしょうか。

 築2年だった自宅も、工場も津波と地震の被害で、全て建て直し。工場内の機械も、津波で全てパーになりました。頭に来たので、残っていた自宅のローンは一括で返済して、ローンを組み直して建て直しました。

一括返済!それは思い切った決断ですね。助成金とかも利用したんですか?

助成金も申請しましたが、降りるまでに1年半くらい時間がかかりましたね。なので借金に借金を重ねました。借金をしても命は取られないですから。


現在の工場の様子。震災後、機材は新たに揃えたそう。


事業立て直しの決断

さらっとお話になっていますが、自宅と工場をほぼ全て立て直しってものすごい被害だったと思います。そのような被害の状況で、すぐに事業を再開しようというモチベーションに持っていけたのは何故でしょうか。

 とにかくそれは「負けてられっか」精神ですね。被災直後から「これからどう復興していくか」を考えていました。もうこうなったら、どうにか頑張ってやるしかないですよね。生かされているんだから。ただ正直、親父は弱気にはなっていました。震災のひと月前にお袋も亡くなっていたので。

 ただ、家がなくなったら建てればいい。借金なんぼしたって、稼げばいい。人間死ぬ気になれば何でもできると思うんです。

 ほとんどの人はやる前に諦めてしまうことが多いですが、やってできないことはないと思います。「やってもいないのにできないと言うな」というのは、いつも言っている言葉ですね。やってできなかったら、また別のことをやってみれば良いんです。

ただ、諦めたらそこで終わり。諦めないことが大事ですね。


「負けてられっか精神」は、予想外のピンチに直面した全ての経営者に通じる術かもしれませんね。震災などの予期せぬ自然災害に遭った場合、まずどのような行動を取るべきだと思いますか。

 情報を掴みにいくことは大事ですね。役所に行ったららいろんな助成金の情報があるはずです。聞くだけで全然違うので、まずはアクションを起こしてみることですね。滝の下で餌が落っこちてくるのを待っているだけじゃダメです。


今後の展望と被災された方へのメッセージ

どんな時もポジティブに進み続ける森さんの、これからの事業の展望や、家業への想いを聞かせてください。

 石屋はあくまで「家業」です。今考えれば、石屋は利幅も昔ほどはないですし。なので今は、石屋とは別に、知り合いの大学教授と一緒に、蓄電池とバイオマスをやってます。その前は、脱原発をきっかけに、メガソーラーやLEDのレンタルを始めたこともありました。今はそっち(メガソーラやLEDのレンタル事業)の経営は人に任せてしまってますが。(笑)

 スモールビジネス=「職種を変えられる」ということでもあると思ってます。沢山の従業員を抱えている企業に比べて身軽だからこそ、誰よりも早くアクション起こすことは重要だと思いますね。

 石屋は石屋で家業ですから続けていきます。理想としては「あそこの石屋さん仕事やってる様子ないのに、どうやって食ってんのかな、何で潰れないんだ?」って言われたいね。(笑)


当時の状況を語る森さんと、弊社社員。


最後に、被災された経営者の方にメッセージをお願いします。

 「負けてられっか精神」を持てということですね。どんな時も「負けないぞ」という気持ちが大事。ピンチな時こそ発想の転換でチャンスに持っていける。やる前に諦めるのではなく、スモールビジネスの身軽さを生かして、まずはやってみる、という姿勢がとにかく大事だね。今は大変だろうけど、頑張ってください。


編集後記

 インタビュー中何度も出てきた「負けてられっか精神」というワードは、大規模な被害を被りながらも立ち直った森さんだからこその強力な説得力がありました。積極的に新しい事業に挑んできる姿勢は、人生の先輩として非常に見習うことが多かったです。

 どんな時も強い精神で前に進んでいこうという勇気をいただきました。

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