強みには、案外あとから気づくのかもしれない
僕は昔から、決して目立つタイプではありません。けれど振り返ってみると、ありがたいことに、まあまあ人に囲まれて過ごしてきました。
周囲からよく言われていたのは、「一緒にいて和む」「なんかホッとする」という言葉です。会社員時代にも、上司や同僚から「人を構えさせないよね」と言われていました。
まあ、ここまでは良い話のように聞こえるかもしれませんが、これが恋愛となると話は別でした。僕は「ドキドキする相手」にはなれなかったのです(笑)
恋愛をするには、ちょっと物足りない。それが僕のポジションでした。
でも、その「物足りなさ」が、人生の最大の転機で役立ちました。
妻と出会ったとき、僕は諸事情あって無職でした。収入の見込みもなく、お世辞にも、いや確実に魅力的な結婚相手とは言えなかった。
それなのに、妻は僕を結婚相手に選びました。理由を尋ねると、彼女はこう言ってくれたのです。
「あなたといると、自然体でいられるし、そのときの自分が、すごく心地よかった」
なんですって!?
それがまさか、人生を共にする相手が結婚を決める理由になるなんて、当時の僕は思ってもいませんでした。
現在、僕はライターという仕事をしています。
日々、多くの人とコミュニケーションを取り、初対面の方にインタビューをしています。
これまでに立ったインタビューの現場は、おそらく800回を超えています。
ライターを続けるうちに、僕はもうひとつ気づいたことがありました。
かつての僕が「物足りない」と思っていた性質が、実は仕事において大きな強みになっていたのです。
インタビューの現場では、多くの場合がお相手と初対面です。
そこで1時間、長いときには3時間お話を伺う。ブックライティングでは、2時間の取材を何度も重ねることもあります。
真剣なコミュニケーションが求められる仕事です。
このとき、相手を緊張させたり、「なんだか話しづらい人だな」と思われてしまうと、心を開いてもらうことは難しくなります。
また、聞き手が「良い話を聞かなければ」と肩に力を入れすぎると、その空気は意外と相手にも伝わります。
相手は本音を話すよりも、どこかよそいきの、取り繕った言葉を返してきます。
でも、人は安心したときに、本音を話します。
僕の「人を構えさせない」という性質は、相手に自然と力を抜いてもらい、「ちゃんと答えなきゃ」という気負いを少しだけ和らげてくれるようです。
実際、取材の最後に、
「たくさん話してしまいました」
「話してみて、自分でも考えが整理できました」
そんな言葉をいただくことがあります。
そのたびに、僕が長年ぼんやりと持っていた性質にも意味があったのだと思えるのです。
若い頃の僕は、強みというものはもっと分かりやすいものだと思っていました。
人より優れていること。
数字で示せること。
胸を張ってアピールできること。
そんなものばかりが強みだと思っていたのです。
でも、今は少し違う考えになりました。
話しやすい雰囲気をつくるといった静かな性質も、誰かにとっては価値になる。
自分では当たり前すぎて気づいていないものほど、案外大きな強みだったりするのかもしれません。
だから、強みは探して見つけるものばかりではないのだと思います。
誰かとの関わりの中で気づいたり、長く続けた仕事の中で見えてきたりする。
ドキドキさせることは今でも苦手ですが、この「構えさせない」という性質と一緒に、これからも誰かのお話をじっくり伺っていけたらな、と思っています。